第121話 これより最後の反逆を
するとアルカが、
「なら世界樹の件と組み合わせて考えてみたらいいんじゃない?
例えば……【記憶】を敵に回してでも止めなければならないほど大きな不都合がある……それが世界樹に関係しているって考える事もできるじゃない?」
「なるほど、それなら確かに考えられる可能性は高くなりそうだ」
セイはアルカのヒントを参考に少し考えたが、疲労からかあまり頭が回らなかった。レイ以外は皆疲れているようだったので、一旦休む事になった。テヌドットからの連絡、もしくはリベルが動きを見せるのを待ちながら。
しかし全く進展がない状態で一週間が経過した。
「これでリベルが最後の行動を見せてから九日か……」
セイは携帯を見ながら呟いた。レイが武器の手入れをしながら、
「定期連絡によると、まだ各地で雑魚が叫んでいるらしい。
サイアンは数日の内に決着が着くと言っていた。そろそろ行動を見せると思うが……」
すると、船の門が激しく叩かれ、ドンドンという鈍い音が乗り降り口に響いた。かすかにそれが聞こえたセイとレイが武器を構え、少しずつ門を開いた。するとそこには、ネモフィラが息を切らして立っていた。
「ね、ねえ! 助けて!
ポラ・メモリアが……ポラ・メモリアが襲われてるの!!」
「分かった。すぐに向かおう。
……この船ならすぐに離陸できる。この船でポラ・メモリアに接近しても大丈夫かい?」
セイはローナに緊急離陸の連絡を行った。
「うん! 大丈夫!」
セイは移動中にアリス、アルカ、ラレム、透を呼び、戦闘の準備を始める。そして見えてきたのは、赤く燃え上がるポラ・メモリアだった。その炎はすぐに世界樹に到達しようとしている。
「流石にこれはまずいね……
ローナ! 着陸はしなくていい! 私たちはこのまま飛び降りる!
君は急いで神話会の【舞水の支配者】ユナに支援要請を!」
「お任せくださいですわ!」
こうして六人は船から飛び降りた。
「[圧縮]」
セイは自身の足元の空気を圧縮し、空気のクッションを作り着地した。他の皆も無事に着地できたようだった。そして目の前に広がったのは、一週間前の緑と木の香りのする町とは全く異なっている、赤と泣き声に満ちた地獄だった。
「なんだよ……これ……」
「時間がない。急ごう!
各自、異名持ちと接触次第できるだけ町の中心部から離れた場所へ誘導し、処刑を!」
「ああ!」
「おーけー!」
「はい!」
「……」
「任せろ!」
六人は散らばって走った。
セイは魔術で水を発射し、炎を勢いを抑制しようと試みるが、町を燃やし尽くすほどの炎には無力だった。
(ついに動きを見せたな……! しかしまさかこの木の町に火を放つとは……絶対に許さない……!)
一方透は、既に魔力を拡散させていた。それはどんどんポラ・メモリア全体を包み込んでいく。
「これで……消火する……!!」
その瞬間、炎は途端に消え去った。そこに残ったのは少しの熱と炭になった木の家、そして煙だけだった。
「これは……!
透さん?! 流石ですね……これなら異名持ちを探しやすい!」
アリスは行動しやすくなったことで、[龍神化]を用いた飛行での異名持ち捜索がスムーズになった。
一方ラレムは、リベルメンバーが多くいる場所へ来ていた。しかしどれも下っ端ばかりで、異名持ちの姿は見当たらない。ラレムは大鎌で敵を切り裂きながら、どんどん突き進んでいた。
「きっと透のおかげだろうな。一気に探しやすくなった……!
けど一体奴らはどこに……」
すると、少し聞きなれた声が聞こえた。
「闇鴉かい?」
「……ここに強き者はおらん。気配がしないのは小僧も感じているだろう」
「それはそうだけど……
!」
セイはある事に気付いた。
(そうか……! 奴らの目的が世界樹とどう関わっているかは分からない……つまり、奴らの計画の内、この世界樹の件はあまり重要ではない!?
となると重要なのは……)
その時、凄まじい爆発音と共に、地面から次々と鋭い棘が無数に生えてきた。それらはセイやアリス、透の動きまでもを一時的に止めた。
「これは……」
すると、上空から空中を階段のように降りながら拍手をする男が現れた。サイアンだ。
「素晴らしい……素晴らしい!!
一瞬であの炎を消し去り、私たちを探すその愚かさ……
非常に楽しませていただきました……しかしこれ以上は、私達の計画を邪魔しないでいただきたい!!!
これより私達セイクリッド・リベルが行うのは新世界への扉を創り、それを妨げる全ての障害を取り除く事……例えそれが十五億人の頂点、【記憶】だったとしても!」
そう言い終わるその時、サイアンの目前にはセイの[神葬]とアリスの[妖刀:夜虚]、透の拳が迫っていた。しかし、
「カキン!!」
その全てを、一本の短剣が弾いた。
「まさか……こいつが【月光】か!?」
透は初めて見たメーノルのその姿に、少し驚きを隠せなかった。なぜならその顔の半分は、黒い結晶に覆われていたからだ。
「これは……まさか、古代の異名?」
アリスは一度だけ見たあのメーノルの姿を思い出した。しかし【古代の異名:月影】の力を掌握したメーノルは、そのアリスの返答に答える代わりに、
「[一縷の月光‐殲滅型‐]」




