涙の意味
ケモ耳大好き!
もう、なんかいろいろな意味で終わった気がする。もういいよ、愚王になったほうがいっそ楽できるような気がするよ。
「それで、なんでミウがここにいるんだ?」
「それは王様に尻尾を触られたので私を夜の相手にした、と思ったので…」
ですよね〜。ミウがここに来るとしたらそれしかないよね〜。いろいろと計画が狂った。こんなの想定外だ。ま、それでそんな刺激的な格好をしてたのはわかるが…。ちょっと刺激的過ぎませんかね、イアもそうだったけどさ…。俺にはちょっと荷が重すぎるよ。しかも、ミウに関してはイアよりも年齢的に上なのか扇情的に見える。表情は相変わらず無表情だけど、胸だってあるほうだ、体だって色白でとても綺麗だった。それなのに、そんな格好されると理性が持たんのだよこっちは。俺はなるべくミウを見ないようにして話を進める。
「イアはどうした?」
「イアさんにはしばらく家に帰ってもらったとイグニスさんが言っていました」
「イグニスって、大臣か…」
「はい、なんでも落ち着かせるために一度家に帰らせると」
しまったな、これも想定外だ。つまり、イアは今この城にはいないのだろう。ということは策が立てれない。いや、あるにはある。ただし、それができる確率は非常に低いだろう。一つはミウの説得。もう一つは邪道だがイアを強制的にここに連れ戻すこと。現状今の俺の考えをほぼ理解してくれてるのはイアだけだ。ウルナに頼むという手もあったが恐らくまだ無理だろう。なにせ、あの状態だからな。どうする、ミウを説得するにしても事後だから説得力に欠ける。だからといってイアを呼び戻したら後でまた悪い噂が広がってウルナの築き上げた信頼は地に落ちる。ウルナを頼るにしても本人がまだ曖昧なうえ、大臣たちの目から逃れながらなにかをするにしてもリスクが高すぎる。くそ!ほぼほぼ詰みじゃないか。ほとんど予定が崩されて半ば俺は狂乱状態だった。それをみてミウは俺に言葉をかけた。
「王様、大丈夫です。私も最初は驚きましたが王様が悪い人ではないとわかってます。ですから、安心して話してください。王様のこと」
言葉が出なかった。ミウは今なんて言ったんだ?俺が悪い人ではないとわかってるって…。もしかしてイアがミウに話してくれていたとかなのか?もしそれなら納得はいく。
「ミウ、ミウは俺が愚王でないとわかってるって、イアから俺のことを聞いたのか?」
ミウは首を横に振る。
「王様とあった時からわかってました。あなたは決して前の王様達とは違う人だと」
どうゆうことなんだ、確かに前の王と違って俺の纏ってる雰囲気は違うとは思うけど…。ただそれだけでは王様を信じることなんてできないはず。例え、感みたいなものが獣人族にあったとしても。それこそウルナのように殺しにくるはずだ。それをこうもすんなりと受け入れるのはおかしい。ミウの様子を伺うが無表情で何考えているのかわからない。
「なんでそんなにすんなりと受け入れられる?過去の惨劇をミウは知らないわけじゃないだろ?」
「もちろん知っております」
「過去の人族の王様は獣人族に非人道的なことばかりしてきた。それも、五百年以上もだ。それなのにミウは俺のこと信じるというのか?」
「はい」
これは罠なのだろうか、それとも本当にそう言っているのだろうか。ミウの表情が読み取れない以上なにもわからない。でもまぁ、これは罠だとしても乗った方がいいだろう。現状では完全に詰んでるのだから。リスクは高い、けどやるしかない。
「わかった、ミウがそこまでいうなら…」
「信用出来ないのであれば私を好きにしてください、それで信じていただけるのなら」
俺の言葉を遮ってミウは最後の薄着とはいえネグリジェを脱いだ。いろいろと丸見えである。ミウの双丘の桜色の蕾も綺麗な肌も何もかも。俺は危うく理性を失いかけるところだった。でも、わかってしまった。あぁ、これはクロだ。俺は羽織っていた学ランを脱いで俺のとこまで歩いてきていたミウに被せる。サイズが大きかったせいもありおかげでミウの大事な部分は全部隠せれた。
「ミウ、イグニスにそうしろと言われたな?」
「…いいえ、これは私の判断です」
いくらミウが無表情で不思議キャラだっとしてもこういう手は取らなかっただろう。これは完全に篭絡しに来てる。俺がミウのしっぽを触ったことで俺がミウを気に入ったとイグニスは思ったのだろう。そこからミウを使って篭絡してその後、俺をどうにかするつもりだったんだろう。確かにミウはほぼほぼ無表情だ、だからこそ適任だと思ったのだろう。けれど、残念だけどミウ。
「泣いてるのにそんな事言っても説得力がないよ」
「え…」
ミウは気づいてなかったのだろう。自分が泣いていることに。そう、泣いていた。さっきまで無表情だったのにミウは泣いていたのだ。だからこそ、改めてミウを認識できた。ミウは確かに感情には乏しいのだろう。けど、周りの女の子と変わりがない。それに、猫は本来そう簡単に他人に懐いたりしない。懐いたとしても気まぐれだ。街の獣人達を見てわかったことだが耳や尻尾は飾りじゃない本物だ。それはミウの尻尾を触って改めてわかった。問題そこじゃなかった。それぞれの耳や尻尾で大体がなんの動物の耳か尻尾かわかる。そして、それに伴ってみんな人らしいといえば人らしいがその動物の力も持っているし、性格も大体が酷似していた。ミウは間違いなく猫だ。幼い頃からいろんな動物も見てきたし図鑑も山ほど見てきた。だからわかる。例えば、カピバラの耳と尻尾持った獣人だとする。そんな彼等彼女達はほぼほぼ、ぼーっとしてることが多い。動物だって人と同じでそれぞれな感情があり性格がある。それでも大まかな範囲での性格は皆同じだ。特に猫やトラといったネコ科の動物は警戒心が高くそうそう他の人に懐かない。ミウも例外じゃないだろう。街を案内してもらった時にそれは多々出ていた。そして、今回はあまりの恥辱のためか涙をこらえきれなかったのだろう。猫は甘える時は甘える。それに、自分が本当に認めた人なら泣いたりなんかしないだろう。ミウが自分自身で決めたことなら。だけど、そうじゃないから泣いてるんだろう。俺は優しくミウを抱きしめる。ミウはビクッと震えるも抵抗はしなかった。無駄だと悟っているのか、はたまたまだ篭絡を続ける気かは知らないが。
「ミウ、ミウは俺のことどう思ってる?」
「…………」
ミウは何も答えなかった、ただただ沈黙を貫いた。
「ミウは本当に俺が悪い人ではないと思ったか、それだけ聞かせてくれないか?」
「………私達、獣人族には第六感という特殊な器官があります。それのおかげで近くに誰かいるのかなどの位置情報や相手の心理状態が読み取れます」
なるほど、心理状態を読み取れる第六感。つまり、イアもウルナも同じ反応だったのはそうゆうわけか。やっぱり、あったんだな人族にはない獣人族の特別な力。日記に書いてあったんだ。一人の愚王が残酷な実験をして出した結果の記しが。その中に我々にはない器官が獣人族には備わっていると。それが第六感だったのか。
「何度も第六感を使いましたが、王様から悪意は感じ取れませんでした…」
それがミウの答えなんだろう、曖昧で不明確な答えだ。だが、それで構わない。ウルナの涙を見た時にも思った。俺が変えなくちゃいけないと、俺がやらなければならないと。俺は地球で生きてて誰かを泣かしたことがあるのは一人の女の子だけだった。それはほんとに些細なことだった。よくある子供のおもちゃの取り合いだ。それで、俺はおもちゃを強引に取ってその女の子を泣かしてしまった。もちろんは俺は慌てた。どうすればいいのかわからなかった。俺はおもちゃを女の子に渡してなんとか泣き止ませようと必死に頑張った。変なダンスを踊ったり一人でばかやったりして。そしたら、その女の子は笑ってくれた。その時に思った、ほんとにこんな些細なことだけど誰かの涙なんて見たくないって。誰かの笑顔が見たいんだって。だから、それから俺は誰かを笑顔にさせれるようにいろんな事をした。そして、誰かを傷つけないようにいつも周りに気を配っていた。周りの笑顔が俺にとっての幸せだったから。だから、生きてて誰かの相談に乗ったり場を茶化したりなんかして友達の笑顔を見てきた。俺は地球で生きてて泣かしてしまったのは恐らくあの子が最初で最後だろう。その子とは子供の時に親の仕事の都合で離れ離れになった。別れる時に女の子は泣いていた。頑張って笑わかそうとした、そしたら女の子は笑ってくれた、涙を流しながら。あの子は今も笑って生きてるだろうか。俺にとってはそれが心残りだった。そして、死んだ。死んでこの世界に来て王様になった。けれど、俺はこの世界に来てもう二人の女の子を泣かしてしまった。いや、他にもたくさんの人を泣かしてしまったかもしれない。涙を見てしまった。それは、自分が犯されるかもしれない、殺されるかもしれないという恐怖からくる涙。それは、自分の周りの人達が酷い目にあうかもしれない。自分も同じ目に遭わされるかもしれないという怯えからくる涙。どれも、見たくなかった涙だ。だから、俺は決めた。ミウを優しく抱きしめていた手を離しす。ミウは俺を見つめている。その目の下は赤くなっている。
「もう終わりにしよう、この王の過去に終止符をうつ」
ケモ耳大好き!