同じ毎日
二人はいつもそばにいる
彩る音色を奏でるために…
「あなたはなぜピアノを弾いているんですか?」
四本の腕が一斉に鍵盤から離れる
タイミングは完璧だ
客席からおこるあの拍手は聞き慣れた
隣にいる彩音に目を向ける
泣いていた。
+++++
定期演奏会は終わった
私達の演奏が一番うまかったことはすぐにわかる
私と彩音の連弾は完璧だ
私達に向けられたスタンディングオベーションだってなんども見てきた
中学校最後の今日の演奏会だって
二人の息はぴったりだった
いつもと同じだ。
いつもと同じ風景。
いつもと同じ場所。
隣にはいつもあやねがいる。
それが当たり前の私の毎日だ。
「奏ちゃん?かーなーでっ?」
「彩音?」
「もうなにしてんの?楽屋の片付け早く手伝ってよ!!」
これもいつもと同じ
演奏会が終わると私は今日をふりかえる
でもその間に彩音は後片付けをしているんだ
まるでこれだと私がズボラでだらしないやつに思えるかもしれないが、そんなことはないんだぞ。
ひとつ大きなのびをして、私も片付けに入るとするか
「ねえ奏ちゃん?」
「なに?」
「奏ちゃんはなんでピアノを弾いてるの?」
彩音がくりくりした大きな瞳で私を見つめてくる
彩音は力の無さそうな細い腕、細い指、いつも心配そうな顔。
そんなやつなんだ
「聞いてる?」
「うん」
「だからなんで弾いてるの?」
「彩音と一緒にピアノが弾きたいから」
一瞬彩音の瞳のおくがこわばった
「そっか…ありがとう」
「なに?急に変なこと聞いてきて」
私はふっと鼻で笑った
私のクセだ
このクセは治したいと思っているがなかなか治らない
彩音とピアノが弾きたい
これは心からそう思ってるんだ
「これからもずっと私と連弾してようね」
なんて照れくさいことを言ってみたりして。
鼻がひくつくよまったく
でも、その鼻で笑う余裕があるのはあやねが口を開くときまでだった
彩音がゆっくりと口を開く。
「私、もう奏ちゃんと連弾できないんだ」
え?
「卒業したら、東京の音高に行くの」
だからえ?
彩音はよくわからないが一言私にこういった。
「ごめんね。」




