karma1
いよいよゲームが始まった。
皆緊張の面持ちである。
「……だれからはじめます?」
隣の家族連れの母親らしき人物が言う。
「じ、じゃあ俺からで…良いですか?」
翔がさっと手を上げた。
翔の問い掛けに皆が頷いた。
「よし、じゃあ千里…引かせてくれ」
翔が千里のカードに手を伸ばすと千里自らも差し出す。
翔が引いた。
揃ったカードは……無い。
自動的に次は千里が引く番である。
翔はさっとこのグループの人間の顔を見回してみた。ジョーカーを持っているのは誰か…絶対に千里には生きてほしい。
だから俺がジョーカーを持っておかなければ。
次々と順番が回っていき、再び翔の番だ。
これまでに数人がカードを揃えており、翔は少し焦ったが、上がるものはいなかったので、まだ大丈夫だ。
手に汗がジワリと滲む。
相手はハートのkをもっていった。
次は翔が引く番。千里の手札を選んで引く。
スペードの3。
今になって気付いたが、ゲーム中誰も喋る気配がない。
それほどに緊張しているのか、心の内を読みあっているのか、どちらにしても危機的状況に変わりはない。
また一人、手札を揃えた男。顔は喜んでいない。
また自分の番。
千里から引くにしても緊張はする。
真ん中のを選ぼう。
翔は真ん中のカードを引いた。
そして驚愕した。
そのカードはジョーカーであった。