開始
「皆さん、まずは、落ち着いて下さい」
翔は大声でプラットホームにいる人間に話しかけた。
人々は何事か、とこちらを見据える。
「このまま脱出するための方法を考えてても意味がありません! 皆さんの命が危険に曝されるだけです! ここは、相手の話に応じましょう。そうすれば、一時は命を守ることが出来る! 何か方法が生まれるかも……相手から何か条件付きなら助けてもらえるようになるかもしれません。
焦らないで…少しでも生き残る確率を上げる為に!」
翔は、人々をじっと見詰める。返答は無くとも、何かしらの応対はあるはずだ。
すると、一人の男が口を開いた。
「じゃあ、聞くぞ。俺達がゲームを行って、助かる証拠なんてあるのか? どう考えても死にに行く様なもんだ! 答えてみろよ…」
確かに……自分の言っていることに根拠は無い…
「確かに……僕の言ってることには、根拠も無いし、もしかしたらゲームをしないで逃げ出せるかもしれない。でも、そんな曖昧な確信や憶測だけで行動するんですか? 子供も、お年寄りもいます…。貴方達の作戦や考えに、その想定が入っていますか? 自分たちだけ逃げれれば良いと思っていませんか? この世界は、子供も大人も、お年寄りもいてこそです。社会人だけの世界じゃない!」
翔の力説に、一先ず人々は納得したようであった。
しかし、ここからだ…死者が出た後、人はどうなるのだろう。
翔の力説で場が落ち着いてしばらく経ったとき、係員がトランプを持ってやってきた。
この真ん中のプラットホームには、三組のカップルと四人家族が二組。合計で14名だ。
他のプラットホームの人数は分からない…というより気にしている暇は無かった。
係員が14名にカードを配っていく。14名は、ただひたすらそれを眺める他無かった。
全員にカードが配られると、係員は速やかに立ち去った。襲われるのを想定してだろう。
皆、重なったカードを場へ棄てていく。翔は不正がないか見張ってみたが、そういう行為をする者は現時点では、いなっかった。
千里は、先程よりは落ち着き払っている。
「チサ、大丈夫か?」翔は心配そうに千里に話しかける。
「うん。ありがとう、翔ちゃん。ちょっとは落ち着いたし大丈夫」
千里は温かな笑顔を見せた。
「あのさ、翔ちゃん…」
「うん?」
「凄いよね・・・翔ちゃんは」
「何で?」
「だって、たった一人でこれだけの人の気持ちを動かしたんだよ? 本当に格好いい」
千里は、そっと翔の頬にキスをした。
「………」
翔は顔をぐらっと赤く豹変させた。
「あははは! 翔ちゃん可愛いー!」
千里が馬鹿にする。
束の間の安堵感と休息。この極限状態では、こんな些細なことでさえ幸せに感じる。
やはり、幸せは日常の中にあるというのは本当のようだ。
周りの人間も、二人のやりとりを見て、どこか安らいでいるようだった。
だが、束の間の休息というのは、その言葉通りほんの一瞬だ。
数分後に、戦いは始まっていた。
◆◆◆◆◆
ジリリリリリリリ!!!
プラットホームにけたたましいベル音が響く。
「皆さま、充分に準備頂けましたか? これよりゲームを開始します。尚、不正行為をしたものをこちらで確認致しましたので、その方には死んで頂きます」
不正? 誰だ? 俺達の中にそんなやつはいなかった筈だ…となると、左右のどちらかのホーム…
「確認致しましたのは、最右列ホームの方。大城清様で御座います」
すると、どこからともなくガードマンが現れた。
徐に銃をとりだす。形容からしてショットガンであろう。
「お許しを」
ガードマンは、その決まり文句を言ってから発砲した。
先程のマシンガンとは比べものにならないくらいの大音量で、大城の脳が突き破られた。
「不正行為を確認致した場合は射殺となります。それでは皆さんゲームスタートです」




