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幼馴染がいろいろおかしい 【ファンタジックラブコメ】全編完結  作者: てんまる99
えくすとらラプソディ:番外編のお話。短いのでお手軽に読めます

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えくすとら ミツキDays3

まずは、本編にて「幼馴染⋯」の全編完結と成ります。

最後のエピソード、お楽しみ下さい。

暫くして地震は収まった。

仮想世界でわざわざ地震をシミュレートしているとは考えづらい。

何かのバグが原因だろうか?



「怪我はないか?」

美月とミツキに声をかけた。

「大丈夫」

「びっくりしたぁ」

二人も立ち上がる。


幸い怪我などは無い様だ。

「特に異常はないみたい」

「それより、プール行こ!」


二人に引かれて改めてプールへ。

いかにも避暑地に有りそうな、白いプールサイドの丸い形をしたプールだ。

運動の為ではなく、水に浸って寛ぐと言った目的なんだろう。


「だっしゅ!」

言うが早いか、美月は準備運動すらせずにプールに飛び込もうとする。


「こ、こら、準備運動!」

慌てて制止する。

「大丈夫!」

美月は構わず飛び込もうとする。


と、プールの際まで行った美月は、突然、足を止めた。


「そうそう、やっぱり準備運動を⋯」

俺は美月に声をかけた。

だが、美月はプールを凝視している。

「どうした?」

俺とミツキもプールサイドに立った。


「凍ってる?」

美月はプールの水面を指差す。

確かにプールの表面の波が全く動かない。

「この気温でそれは無いだろ」

「うーん」

ミツキが恐る恐ると指を伸ばす。


その指先は、まるで硬い氷に触れる様に、表面で止まった。


「確かに硬い⋯けど冷たくは無いよ」

「これもバグか?」

俺も水面に手を伸ばす。

確かに硬い。

湖が氷結した時のように、表面だけ凍っている雰囲気では無い。

水全体が固化しているようだ。


と、隣の美月が水面に足を伸ばした。

どうやら水面に立とうとしているらしい。


「お、おい危ない!」

慌てて静止しようとする俺の声を無視して、水面に立つ美月。


「おおっ、これはこれで面白いかも!」

水面でステップを踏み、はしゃぐ美月。

「え、本当?」

ミツキもつられて水面に立つ。

「なんか変な感じ⋯」


ミツキが数歩、歩いた瞬間。


“ガボッ”


突然、それまで静止していた水面が元の流体に戻り、二人はプールに沈み込んだ。


「きゃっ」

「あわっ、がはっ」


プールに沈み、慌てて手をバタバタさせる二人。

ただ、ここはもちろん、水遊び用のプールだ。

二人の背丈なら、余裕で足が届く。


筈だが。


「なっ、底が⋯無いっ」

美月が慌てて立ち泳ぎしながら言った。


見ると、プールの底は真っ暗な穴の様に成って、さっきまで見えていた底が見えない。


「上がれ、やばい!」

俺は慌ててプールサイドから美月に手を伸ばす。


が、美月は俺を見ずにプールの中央へ泳ごうとした。

「ミツキっ!」

美月が叫ぶ。


美月が手を伸ばす先、ほぼプールの中央に、バシャバシャと水飛沫を上げて溺れる寸前のミツキがいた。


俺は慌てて周囲を見渡し、プールサイドに置かれた浮き輪を見つけ、美月へと放り投げる。


それを美月が運び、ミツキに掴まらせる。

辛うじて浮き輪を掴んで、ミツキは水面に顔を出した。



「ゲホゲホッ、び、びっくりした〜」

一分ほどして荒い呼吸を吐きながら、ミツキはプールサイドに上がってきた。


「ミツキ、大丈夫?」

美月は気遣いながら続いて上がってくる。


「お前、泳げないのか?」

「お、泳げるよっ! ちょっと水が苦手なだけっ!」

ミツキは頬を膨らませて反論する。

⋯それを泳げないと言うのでは⋯。


しかし、結局、俺がミツキに突っ込みを入れる余裕は無かった。

周囲にじわじわと黒い霧が立ち込め、薄暗く成ってきたからだ。


「こ、これは本格的にヤバそうだ」

「逃げた方が良さそうだね」

俺と美月が頷きあった時、周囲に梅沢さんの声が響いた。


『美月さん、律斗さん、最先端AIの動作が不安定です⋯急いでそこから出てください!』

妙に歪んだ声。

まるで彼方からの通信を無理やり増幅しているみたいだ。


「で、出るって、どうやって??」

『スタート地点に緊急のゲートを用意します。それを通って⋯急いで!』

「い、行こう!」


俺は二人の手を取り、始めの森の小路へと走った。


走っている間にも黒い霧が周囲に立ち込め、視界が悪くなってゆく。


しかも、厄介なことにこの霧に触れると、感電したような痛みと痺れが走る。


視界が悪い中で霧を避けたり、飛び越したりしながら小路を戻るのに、少し時間が掛かった。


何とかスタート地点にたどり着くと、小路の突き当たりに直径2メートル程の光るリングが浮かんでいた。


リングの内側空間は光で満たされていて、向こう側は見えない。

どうやらあれがゲート、らしい。

『律斗さん、時間が有りません!』

梅沢さんの声が響く。


「急げっ!」

二人の手を引いてゲートを潜ろうとすると、ミツキが足を止めた。

ミツキは俺の手を振り祓い、その場に立ち尽くす。


「お、おい?」

「行けない」

ミツキは俯いて答えた。


「え、どうして?」

「だって私は⋯籠の鳥だから」

「!」


言われて気が付いた。

ミツキは現実世界には戻るべき身体がない。

この、霧に覆われた世界が居場所なのだ。


「そ、そんな⋯梅沢さん、どうにか成らないのか!」

モニターしている筈の梅沢さんに問い掛ける。


『今は時間がありません⋯ミツキちゃんはまた後日⋯』

絞り出す様な梅沢さんの声が途切れ途切れに響いた。

「そんな!」



ミツキは美月の手を取り、見つめた。

瞳が潤む。


「美月、お兄ちゃんの事、任せた」

「ミツキ、どうしても駄目なの? 行けないの?」

「⋯うん。一つ約束して。絶対にお兄ちゃんと幸せに成るって」

「そんなの⋯ミツキも居なきゃ無理だよ!」

「ありがとう。でも違うよ。分かるよね?これからも2人の世界は続くんだから」


ミツキは手を離し一歩後退った。

霧に遮られ、その姿が霞む。


「でも、でもっ!」

「もし⋯もしまた会えたらさ⋯」

「⋯激辛カレーの作り方、教えるよ。だから絶対に⋯また!」

美月は涙を流しながらも微笑んだ。


「ありがとう。約束だよ」

微笑み返すと同時にミツキの姿が黒い霧に覆われ、完全に見えなくなった。


「おいっ、ミツキっ!」

「あ兄ぃ、駄目っ」

ミツキを追って霧に飛び込もうとした俺を美月が抱きとめる。


「離してくれ、ミツキを探さないと」

「駄目、駄目!」


『律斗さん、もう時間が有りません! まさか美月さんを道連れにする気じゃ無いですよねっ!』

梅沢さんの叱咤の言葉が飛んだ。


「!」

思わず踏みとどまる。

そうだ。このまま俺が残るといえば、美月も絶対に⋯。

それだけは駄目だ。


「ち、ちくしょーーっ!」

俺は叫びながら美月とゲートに飛び込んだ。



どれほど時間が経ったのか分からなかった。

目を覚ました時には、ベッドの上に横になっていた。

白い天井。

頭上のライトが眩しい。


「ここは⋯」

「良かった。無事に戻って。研究所ですよ」

ベッド脇の梅沢さんが答えた。


言われて先程の状況が急速に頭に蘇った。


“ズキン!”


「痛たっ」

頭の芯から突き刺す様な痛みが走る。

「急速にVSDを切断した反動です。暫くすれば収まるはずです」


「美月、は?」

「先に目覚めて、今はモニタールームに」

「俺も行きます」



部屋を出て梅沢さんとモニタールームに入った。

壁にある大型のモニターを美月と蒼井さんが見つめていた。


「あ兄ぃ!」

俺に気付くと、美月は涙でぐしゃぐしゃの顔で抱きついて来た。

俺も強く抱きしめる。


そのまま蒼井さんに尋ねる。

「一体、何が起こったんですか?」

「まだ完全には⋯ただAIに想定外の過負荷が掛かり、縮退モードに入った事を確認しています」

「縮退モード?」

「過負荷による破損を防ぐため、最低限の機能を残して、データー整理や機能停止を行う、自己防衛の状態です」


あの時の黒い霧を思い出した。

あれもデータ整理の一部なんだろうか。


「どうしてそんな事に⋯」

「原因は我々もまだ調査中です。予備計算ではVSD2機の接続程度なら演算能力には余裕がある想定でした」

蒼井さんは淡々と答える。


これに関しては研究者である蒼井さんに分からない事を、これ以上あれこれ憶測しても仕方ない。


「⋯ミツキは?」

俺の声に美月の背中がピクリと震えた。


「残念ながら、分かりません」

「まさかあのまま消えて⋯」

「それも不明です」

「いい加減すぎるだろ!」

思わず叫んでしまった。


「ミツキを生み出したのはアンタ達だろ?

どうしてそんな平気な顔をして⋯」

「あ兄ぃ⋯」

俺の言葉に美月は不安そうに俺の手を握った。


違う。

この人達のせいではない。

俺は蒼井さんに頭を下げた。


「⋯すみません。感情的になってしまって。信じられないかも知れませんが、俺はミツキも家族だと思っています。でも俺達には何もできない⋯貴方達に頼るしか⋯」


感情的になった自分が恥ずかしかった。

何もできない自分が歯痒かった。


「分かっています。いえ、分かるつもりです。我々もミツキさんを見捨てるつもりは有りません。ただ、少し時間を下さい」

蒼井さんはそう言って俺の手を取った。


「分かりました。ミツキを頼みます」

そう言って再度頭を下げた。

俺にはそれしかできなかった。



数時間後、俺と美月、梅沢さん、蒼井さんは再び研究所のモニタールームに居た。


「何か分かりましたか?」

蒼井さんに尋ねる。


「はい、先程、AIの縮退モードが解除され、内部の調査が可能になりました。そこで⋯」


蒼井さんは手近な端末を操作し、画面に波形を表示した。

細かく波打つ様な波形。

それと合わせてノイズ混じりの音が⋯。


“♪貴方と⋯私の⋯ウェディング⋯”


聞いたことのある歌だ。

「これ?!」

「ミツキの?」


梅沢さんが蒼井さんに尋ねた。

「どこからこれを?」

「AIの学習ブロック、深層学習部です」

「そこにミツキが?」

居場所が分かれば、助けに行けるかもしれない。


しかし、蒼井さんはゆっくりと首を振った。

「本来、深層学習部はVAのデーターが存在する様な場所では有りません」

「だったら、なぜ?」

「恐らく、ミツキさんの構成データの殆どは縮退モード時のデータ整理で破棄されてしまい、思考処理の中心部分のみが重要データとして回収された物と思われます」


「思考処理の中心部分⋯?」

「心、と言っても良いでしょう」

「それを救い出せれば?」

「復活は可能な筈です。記憶などは完全に再現が難しいかも知れませんが⋯。ミツキさんの身体的構成データはバックアップが有りますし」

「でしたら!」

一刻も早く助けに行きたい。


「ですが⋯救い出すのは現状では困難なのです」

蒼井さんは苦しそうに言った。


「え、なぜ⋯」

「深層学習部はまさにAIの頭脳にあたる部分です。そこから正確にはミツキさんを取り出すには、AIの稼働を一旦停止する必要が有ります。それに、取り出したデータを受け入れる別のAIを用意しなくてはいけません」

「それは、そんなに難しいのですか?」

「AIの完全停止は最先端AIプロジェクトを最初からやり直す事を意味します。また現状、他に同レベルの移植先AIも有りません」

「それじゃ、絶望的⋯と言う訳ですか?」


モニターからはミツキの歌が流れ続けている。

確かにそこにミツキは居るはずなのに。


「あくまで現状は、です」

蒼井さんは慎重に言葉を続けた。

「AI開発は急速に発展しています。近い将来には今の最先端AI程度のシステムは汎用的に多数使われる様になる筈です」

「そうすれば、助け出せる?」


蒼井さんは頷いた。

「今できることは、少しでもAIの開発を進めて、その日を1日でも早くする事しか有りません」

「そんな⋯いつになるか分からない⋯それまで⋯?」


全身の力が抜けてゆく気がした。

俺はただ手を拱いて、いつか来るその日を待つことしかできないのか。



「あのっ!」

突然、美月は熊のぬいぐるみを取り出した。

あれは⋯海に行った時にミツキが使った⋯?

持ってきていたのか。



「これ、ずっとミツキが使っていたんです。何かの助けになりませんか?」

「これは⋯AI動作の人形ですか?少しお借りしても?」

蒼井さんは興味深げに人形を見る。

「はいっ」

美月は熊のぬいぐるみを渡した。


蒼井さんはぬいぐるみの外部端子を端末に接続してアクセスを開始する。

端末で幾つかのウインドウを開き、調査している様だ。


暫くして。

「どうやらこの熊とミツキさんの間には未だにコネクションが継続している様です」

蒼井さんはぬいぐるみを美月に返しながら言った。


「それじや?」

「あ、いえ、現在のミツキさんはいわぱ昏睡状態ですので、以前の様に会話したりは⋯ただ、呼びかければ何かの反応が有るかも知れません」


そう言われ、美月はぬいぐるみを優しく撫でながら囁いた。

「ミツキってば、眠り姫なの⋯?」

と、

「眠り姫じゃないよ、熊だよぉ」

突然、ぬいぐるみが答えた。

それは確かにミツキの声だった。


「えっ?」

「ミツキ?!」

だが、それ以上ぬいぐるみは応えない。

「どう言う事?」

「これは⋯?」

俺達は蒼井さんの顔を見た。


「人間で言うところの無意識の反応でしょう。ただ⋯」

「ただ?」

「意識レベルの回復に、親しい人の呼び掛けが効果あるとも言われています。AIに当てはまるのかは分かりませんが⋯」


「呼びかけます。ずっと」

美月は頷いて言った。

「こちらでもぬいぐるみを通じてミツキさんのモニタリングを継続します。⋯その日まで」

蒼井さんも頷いた。



半日ほどして、俺とぬいぐるみを抱いた美月は研究所を後にした。


街に出れば、そこには昨日と変わらない夕景の日常があった。

夕焼けに雲が茜に染まり、流れて行く。

ただミツキだけが居ない日常だった。


「私、全然、諦めないからね」

突然、美月は言った。

「美月⋯」

「ミツキに呼び掛けるし、AIやVAの事、もっと皆に応援して貰える様に頑張る」

「そうだな⋯俺も」


「お兄ちゃん⋯」

と、突然ミツキ熊は呟いた。

「えっ?」

「ミツキ?」

だが、それ以上何も言わない。


「ふふっ、なんかか赤ちゃんみたい」

美月はぬいぐるみを撫でながら言った。


「熊だけどな」

「熊じゃないよう」

再びミツキ熊が答える。


それは無意識なのかも知れない。

それでも確実に、俺達の言葉はミツキに届いている。


「やっぱり赤ちゃんだ!」

「やれやれ、俺達で育てるか。これから」

俺もぬいぐるみの頭を撫でた。


少しづつで良い。

またミツキと話せる様になるまで。

そう思って見上げれば、夕闇の空にも明星が見えた。

孤高に強く輝く星が。


「帰ろう、俺達の家に」

「うん」

美月は俺の腕を取り、身体を任せた。

その温もりを感じながら、俺は歩き出した。


ミツキの今後のお話は前編で書いたように、どちらかと言うと「えれくとろんあーく」の流れのお話になってきますので、本編は一旦完結と致します。

まぁ、七海も居ますし、何とかなる(してしまう)のが律斗君だと思いますので、心配は無いかと。


まだ書きたいお話も色々有りますので、宜しければ次回作でもお付き合い下さい。


作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)

ここまで読んだらもうひと手間、評価をポチっと!

宜しくお願いします。


ぜひぜひ御意見、お聞かせ下さいませ。

気に入った部分だけでは無く、ここが“読みにくかった”“分かりにくかった”も、とても参考に成ります。

感想書いて下さる人には本当に感謝です。


また、連載形式で数日ごとアップしますので、読み逃し無いようお気に入り登録も宜しくです。


他にも小説家になろうに色々作品アップしてますので、良かったら見てみて下さい。

ファンタジーからSFまで色々揃えてます。


ちょっと不思議なラブコメ「幼馴染がいろいろおかしい」

https://ncode.syosetu.com/n2628lw/


ドタバタ異世界転生「社畜リタイア求職中が異世界転生でお姫様と出会って結婚する話」

https://ncode.syosetu.com/n2774mh/


ミステリー探偵物語「ファインド・アイズ」

https://ncode.syosetu.com/n3869lm/


ファンタジーラブコメ「ウチの弟が弟じゃない」

https://ncode.syosetu.com/n4758lk/


近未来アイドル「えれくとろんあーく」

https://ncode.syosetu.com/n6524ld/


近未来アイドル第二弾「神崎涼花の逆襲 〜えれくとろんあーく2〜」

https://ncode.syosetu.com/n7959li/


ファンタジーバトル「リサイクルショップで手に入れた杖がとんでもない魔道具だったせいで魔導争奪戦に巻き込まれた(冥界送人改題)」

https://ncode.syosetu.com/n1995lg/

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