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1.幼き日の約束

 僕が五歳の頃。

 村に煌びやかな馬車が停まっていた。

 中から派手な格好をした人たちが降りてきて、大人たちが慌てて持て成している。

 遠くから見ていた僕は、おじいちゃんに尋ねた。


「あの人たちだーれ?」

「この国の王様と、ご家族様じゃよ」

「王様?」

「一番偉い人じゃ」

「えらいひとー!」


 当時の僕は幼くて、まだ王様という身分を理解できていなかった。

 とりわけ興味もなかったからだろう。

 ただ、そんな中で鮮明に覚えていることがある。


 先に馬車から降りた男女二人。

 その後に続いて少女が姿を見せる。

 彼女を見た瞬間、全身に衝撃が走ったように感じた。


 金色の髪と青い瞳。

 ヒラヒラのドレスを着こなす姿は、まるでお人形のようだった。

 一目見て、もう目が離せない。

 足の裏に接着剤でもついたようだ。


 しばらくして、おじいちゃんも国王様の所へ行ってしまった。

 元々小さな村だったから、住んでいる人も少ない。

 皆が王様の所に集まっているから、村がシーンと静かになる。


 そんな中僕は一人、木陰でちょこんと座っていた。

 ぼーっと目を瞑りながら、さっきの女の子のことを思い浮かべる。

 すると――


「こんな所で何をしているの?」


 ふいに声をかけられた。

 透き通るようにきれいな声。

 目を開けると、思い浮かべていた女の子が立っていた。


「こんにちは!」


 驚いた僕は、とっさにあいさつを口にした。

 女の子はちょっぴり驚いたように反応して、ニッコリとほほ笑む。


「こんにちは」


 彼女はあいさつを返してくれた。

 たったそれだけのことが嬉して、ついつい口が動く。


「ぼ、僕の名前はね! フランっていうんだよ!」

「私はレミリアよ」

「よろしくね!」

「ええ」


 後から思い返すと、全然会話になっていなかった。

 主に僕が原因で。

 訳も分からず興奮していた僕は、思いついた言葉を口に出していたんだ。

 彼女はそれに合わせてくれていた。


「フランはお昼寝してたのかしら?」

「ううん」

「じゃあ何をしていたの?」

「う~ん……わかんない。何してたんだろ」

「ふふっ、何それ。フランは面白いわね」


 彼女が笑うと、なぜだか胸がギュッとなる。

 初めての感覚に戸惑いながら、悪くないとも思った。


「レミリアちゃんは何してるの?」

「私はお散歩よ。お父さまとお母さまがお話してるから、ちょっと退屈なの」

「じゃあ僕が一緒に遊んであげるよ!」

「本当? 嬉しいわ」


 彼女は王族の娘で、僕は一介の村人。

 普通に考えたら、なんて無礼な行為だとなる。

 子供の僕にはそれがわからなくて、大人びていた彼女は、そんな僕に合わせてくれた。


 それから一時間くらいだろう。

 一緒にお散歩して、色々な話をした。

 僕と同い年で、もうすぐ誕生日が来るらしい。


「何を作っているの?」

「誕生日のプレゼントだよ」


 だから僕は、お花の冠を手作りして、彼女にプレゼントした。


「これを私に?」

「うん!」

「ありがとう」

 

 レミリアはとっても嬉しそうに微笑んだ。

 その笑顔を見て、また胸がギュッとなる。

 さっきよりも強くて、心臓がドキドキと音を鳴らす。

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎる。

 王様たちが馬車の近くに戻っていて、キョロキョロと周りを見渡している。

 レミリアを探しているようだ。


「ごめんなさい。もう行かないと」

「えぇ……もっと遊びたいのに……」

「私も……フランと遊びたいわ。でも帰らないといけないわ」


 レミリアが寂しそうにうつむく。

 僕も悲しくなって、彼女に尋ねる。


「ねぇ、また会える?」

「わからないわ」

「そんなぁ……会えないなんて嫌だよ」

 

 僕は彼女の手を握る。

 離したらもう会えないと思って、ぎゅっと精いっぱいに力を込める。


「私も……もっとお話がしたいわ。フランといると楽しいもの」

「僕もレミリアちゃんと遊びたい! ねぇ、どうしたらまた会えるの?」


 必死に訴える僕を見て、彼女はニコリとほほ笑む。

 そうして僕の手を握り返し、まっすぐ見つめながら言う。


「だったら、私の王子さまになって」

「王子さま?」

「ええ、王子さまよ。けっこんして、ずっと一緒にいられるわ」

「本当?」

「本当よ。なってくれる?」

「うん!」


 特に考えもなく、一言で返事をした。


「フラン、少しだけ待っていて。大きくなったら迎えにくるから」

「うん! 待ってるよ!」

 

 それは約束だった。

 幼い日に出会い、もう一度会いたいと願った少女との――

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[一言] フランとレミリアって東方かなw
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