番外編④ 公爵令嬢は密かに待たれていた
『家庭教師になった公爵令嬢は、我儘をつき通す』の第10話の裏話です。
第10話を読んでからの方がお楽しみいただけるというか、話が分かるかと。本編を楽しんでくださっている方は、絶対に絶対に本編から読んで欲しいです。いやいや、面倒ですの方は、そのままお進みください!
親愛なるアリスさん
先日は大変失礼いたしました。
わたくし、アリスさんともっとお話がしたくて、でも、アリスさんは全然気にされていないのが、とっても、とっても悔しくて、つい頭に血が上って、目の前のタルトを気づいたらアリスさんの口の中に入れていました。
アリスさんに怒られても仕方がありません。
とても反省しています。
淑女のすることではありませんでした。
絶対に、次はそんなことしません。淑女らしさを忘れずに、きちんとしますので、どうか、どうか、次も会って下さい。
本当に申し訳ありませんでした。
クラリッサ・ブランデルウッド
手紙を読み終えたアリステアは、考え込んでいた。
(これにどうやって……返事をすべきなのか)
まさか公爵邸へと手紙を出すわけにはいかない、そうなると手紙が届けられた逆ルート、つまりソフィアを介して渡すというのが一番早くて……
(厄介ではないと言いたいが、ソフィに渡す時点で厄介だ)
アリステアは悩んだ。
こうなると運を天に任せるしかない。
彼女は図書館に来る。それも頻繁に。
アリステアが遭遇できる可能性は、そこまで低くはないはずだ。
渡す方法は決まった。
次に考えるべきなのは。
アリステアは机の引き出しから、白い便箋を取り出す。
万年筆を手にし。
(……なんて返せばいいんだ?)
そもそも書き出しから悩まされる。
親愛なる、という書き出しをアリステアはできそうにない。
それに彼女の行動原理について、こちらが何か言えることはないし、どう思ったかなど書きたくもない。
――泣きそうなお顔でしたわ
ソフィアは先ほどそう言った。
本当に泣いているわけではないだろうが、それくらい反省をしているということだろう。
(気にしなくていい、と書けばいいのか?)
アリステアはとりあえず、白い紙の上にその文字を書いてみた。
(あとは……)
――次も会って下さい
と彼女は願っている。
(次も会う……)
なんだか胸がざわついてアリステアはそれを書けそうにない。
(サロンに行く。約束の日に行く、でいいか)
そこまで書き上げて、白い便箋にかなりの余白が生まれていることに気づいた。
(……不格好だが)
良しとしようと思ったが、どうしても気になった。
アリステアはもう一度、机の引き出しを開けた。
奥の方にまっさらなカードを見つけた。
(これなら、ちょうどいいだろう)
カードなら名前が無くても、変ではないような気がした。
短い文章をカードの真ん中に書き、机の上でインクが渇くのを待つ。
(あとは……これを持ち歩くのか)
とてもじゃないが落としたりはできない。
名前が書いてなくても、アリステアの筆跡だと分かる者がいるかもしれない。
(めんどくさいな)
アリステアは小さくため息を吐いた。
* * *
それから、数日。
アリステアは、図書館の制服の内ポケットにカードを忍ばせ、公爵令嬢と遭遇する瞬間を待ち続けた。
そして時は来た。
ようやくアリステアは、彼女に遭遇することができた。
ポケットの中に手を入れて、本を真剣に探している彼女のもとへと静かに向かった。
番外編④ 公爵令嬢は密かに待たれていた 【完】
本編を書いてた時に、この裏でアリステアは?と考えたら、楽しかったのと本編に入れるとなんかこうサプライズ感?が薄れるとで、入れれなかったので、番外編に詰めました。




