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優しい朝

 朝。

 僕は寝室のベッドで目を覚ました。

 隣には僕の探偵業の助手であり、恋人でもある雪女のサユキが眠っていた。彼女は以前ショッピングモールで購入したパジャマを着ている。普段身につけている白い着物では眠りにくそうだった為、僕がショッピングモールで普段着を購入することを提案したのだ。

 しかし、なんて可愛らしい寝顔なのだろう。

 正式に恋人となってから二年が経つ。既に初夜も体験し、何度も接吻する仲になっている。寝室も別だったが、今では同じベッドで一緒に寝ている。探偵事務所の二階には僕と彼女の部屋は別々に完備されており、一人の時間もしっかり過ごせるようになっている。

 しかし、恋人がこのような無防備な姿を晒していると、思わず襲いたくなってしまう。

 僕はグッと理性を抑え、彼女の氷色の髪に触れるだけにした。

 途端、「ん……んぅ」と彼女は唸り声を上げた。

 そして氷色の瞳が開き、その中に僕の姿が映る。

 起こしてしまったか。

 申し訳ないことをしてしまった。

 だが、彼女は僕のことを見るや否や、ふにゃっと微笑んだ。

「悠斗さん、おはようございます」

 彼女からはそう挨拶してきた。

「うん、おはよう。サユキ。ごめん。起こしちゃったかな?」

「いえ、大丈夫です。悠斗さんに触れられるのは嬉しいので」

「そんなこと言われると、もっと触りたくなるのですが?」

 僕は内心揶揄からかったつもりでそう言ってみた。

 しかし彼女は頬を赤くして「どうぞ?」と両手を広げてきた。

 これは応えるべきだろうか?

 いや、僕は二十一歳の立派な男だ。女性から求められているのだから、応えなければ。

「それじゃあ、失礼します」

 僕は彼女の胸に顔を埋めた。

「あらら、可愛いですねえ」

 サユキは赤子をあやすような声色で僕を抱きしめた。そして僕の白髪を優しく撫でてくれた。彼女の柔らかい乳房の感触がより鮮明に伝わってくる。ひんやりとした体温もこちら側が恥ずかしくなるぐらいにはっきりと分かる。

 朝からなんて幸せなのだろう。

「僕、サユキの前じゃ甘えちゃうな……情けない」

「情けなくなんかないですよ? 悠斗さんはかっこいいです。この白髪も青い瞳も、大好きです。それに、私達は恋人なんですから、これぐらいのスキンシップは普通ですよ?」

「確かに、それもそうだね」

 僕は彼女の胸に顔を擦り付けた後、ベッドから上体を起こした。

「よし、そろそろ起きようか」

「えー、もっとイチャイチャしましょうよ……」

「依頼人がいつ来るか分からないからね。続きは夜にでも……ね?」

 僕は彼女の頭を撫でてそう言った。

「──分かりました」

 彼女は言葉の真意を察したのか、渋々了承してくれた。

 僕達は洗面台で顔を洗い、歯を磨いて一階に降りた。

 僕はキッチンに立った。

 熱したフライパンに卵を二つ落として目玉焼きを作る。

 その間、サユキは僕の背後から抱擁ほうようしてくれた。

「ふふ、サユキ。甘えたですか?」

「はい。甘えたです。しばらくこのままでいさせて下さい」

「全然良いよ。ご飯食べたら着替えようね」

「──一緒にですか?」

「──別々でかなあ……」

「一緒に着替えても良いのに……」

 彼女は不満そうにぼそっと呟いた。

「流石に気恥ずかしいよ」

「一緒にお風呂も入ってるのに?」

「それは確かにそうですけど……」

「ふふ、冗談ですよ。ちょっと意地悪してみました」

 彼女は舌をちょろっと出して笑う。

 その無邪気な笑顔がとても愛おしい。

「この……意地悪をする悪い子にはこうだ!」

 僕は彼女の脇を突っついた。

「あははっ、くすぐったいですよ!」

「僕を困らせた罰です。甘んじて受け入れて下さい」

「はーい。すみませんでしたー」

 彼女は笑ってそう返す。

 僕は再びフライパンに視線を落とす。

 目玉焼きは既に良い具合に完成していた。

「サユキ、お皿取ってくれる?」

「わかりました」

 サユキは僕から離れ、棚から皿を取り出した。

 そしてリビングのテーブルに二枚の皿を置く。

 僕はフライパンを持って、フライ返しで目玉焼きを皿に盛り付ける。

「よし、食べようか」

「はーい」

 僕達は席につく。

 そして両手を合わせた。

「いただきます」

「いただきます!」

 食卓を囲み、朝食を口にする。

「美味しいです!」

 彼女は満面の笑みでそう言ってくれた。

「そう? それは何より」

「お片付けは私がやりますね。悠斗さんは着替えてきて下さい。コーヒー、淹れて待ってますね」

「お、ありがとう。流石サユキ。気がきくね」

「悠斗さんのことは何でもお見通しですからね!」

 彼女は得意げに笑うのだった。

 僕達は朝食を食べ終えた後、各々の身支度を済ませるのだった。

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