第51話 反攻作戦
教室を出た俺達は昇降口で上履きから靴に履き替えて家に帰り始める。しばらくは普通に雑談をしていた俺だったが、先程のことが頭から離れそうになかった。だから頭の中に思い浮かんだことを天音に質問してみる。
「……なあ、あいつって何か犯罪的なことに加担してたりはしないのかな?」
「急にどうしたのよ?」
「いや、何というかちょっと話しただけでも真っ当な人間とは思えないような感じのやつだったから」
少なくとも前世では刃物を持ち歩いていた挙句、人を一人殺めた実績があった。
まともな人間であれば刃物なんて絶対に持ち歩かないし、百歩譲って何かの間違いで持ち歩いていたとしてもそれを取り出して他人に向けるなんてことは絶対にしないはずだ。
普通の人間なら絶対にそういう発想にはならないはずなので、やはりあいつには何かしらの黒い部分や繋がりがあるとしか思えない。
「……私も詳しいことは知らないけど、柄が悪い大人と一緒にいる姿を見たって噂は聞いたことがあるわ」
「柄の悪い大人?」
「ええ、一緒にキョロキョロしながら路地裏に入って行く姿を見た子がいるんだとか」
柄の悪い大人とキョロキョロしながら路地裏に入っていくって、明らかに何かやましいことがあるはずだ。
他人に見られると何かまずい何かをしていた可能性が極めて高い。そこを調べると何かしらが出て来そうだが、問題は具体的にどうやって調べるかだ。
尾行して現場を押さえるなんてことは現実的では無いし、そもそもそんな危険なことは天音が許してくれるとは思えない。
そうなると、調べる方法としてはSNSなどの活用になるが、その場合まずはアカウントの特定からになりそうだ。これは俺一人では難しそうなため、天音に頼ることにする。
「なあ、あいつのSNSアカウントを知りたいんだけど、知ってそうな知り合いとかいたりしないか?」
「ああ、アカウントなら私知ってるわよ」
何と天音は既に知っているらしい。なぜアカウントを知っているのか気になったが、そんな俺の表情を見てすぐにその理由を教えてくれる。
「ゲームセンターで会った時に聞いてもないのに一方的に教えてきたのよ」
「なるほど、そういうことか」
「でも何でSNSのアカウントなんか知りたいのかしら?」
「あいつに何か弱みが無いか調べたいんだよ、それを天音に近づかないようにするための牽制の材料に使うつもりでさ」
そう言葉を口にした俺は多分ちょっと悪そうな表情を浮かべているはずだ。そんな俺の発言の意図を天音は即座に理解してくれたらしい。
「確かに何かしらの悪事の証拠は見つかりそうね」
「SNSを調べるくらいなら直接尾行とかをして嗅ぎ回るよりもリスクは少ないし、悪くない作戦なんじゃないかと思ってさ」
「いいわ、その作戦なら私も協力する。ただし、瑛人が危ない橋を渡ろうとしたらその時は全力で止めるから」
「ああ、もちろんそれで構わない」
前回あいつには刺されて殺されているので、もし俺が前に出過ぎるようなことがあれば、むしろ天音には止めて欲しいくらいだ。せっかく二回目の人生という奇跡が起きたのに、前回よりも早く死にたくはない。
「じゃあ善は急げってことで、この後早速調べてみましょうか」
「そうだな、場所は俺の家で大丈夫か?」
「ええ、公共の場所だとあいつのアカウントを私達が調べてることが誰かに知られる可能性もあるし、その心配がなさそうな瑛人の家は理想的な場所ね」
天音も特に問題なさそうだったため、俺の家で調べることに決めた。後の問題としては入手した情報を使ってどんなふうに牽制するかだ。
頭に血が上ると何をしでかすか分からないタイプであることはこの身をもって知っているため、本当にそこについては慎重に動かなければならない。




