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Guardian's2  作者: Radical
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No.29-運命の五人(中編)-

泡沫紗衣は遥か彼方の天空城の最上階近くからジャンプし、数キロメートル離れた路地に着地した。

自身の干渉能力を使う事で、空中を滑走したのだ。

と言っても、飛行ができているわけではないので、本来向かうべき目的地まで行くことはできなかった。


彼は今、天界古代学問研究局に向かおうとしていた。

この場所は通称「古研フルケン」と呼ばれている場所で、主に三大陸や天界に残された、

古代の学問や武具、食生活など、様々な物を研究している。


この古研の一階には図書館があり、さらにそこに「一般に公開してもいい」研究結果やレポートなども置いてある。

もちろんすべて複製だ。本物は四階の保管室にあり、更にそのデータは五階の重要記録保管室に保存されている。


そして紗衣の知り合いがこの古研で研究員をやっている。

その研究員は主に古代の武具についての研究を行っているため、

「神器についても何か知ってるのではないか」と思い立ち、紗衣は古研に向かったのだ。


案の定、知り合いの研究員は神器についても研究しているようで、

「飯を奢る」という約束の元、快く情報を提供してくれた。


当初、興味がないような素振りを見せていた紗衣だが、いざ手に入れると急に愛着がわいたようだ。


「ふゥ。んじャァ、そろそろ帰るかねェ。飯もねェし、帰りにガーディアンネットにでも寄るか。」


古研を出た時には、既に空が深い青に包まれていた。

やがて星が姿を現し始める。

紗衣は「すッかり、冷え込むようになッたなァ」と、心の中で呟く。


そろそろ、季節は冬になろうとしている。


「冬ッて言えば、やッぱ鍋だよなァ……」


そんなことを呟いた瞬間、紗衣は急に身に覚えのない寒気を感じた。

何か、身に刺さる様な感じだった。

その寒気の直後、純哉、仙寿、カシスの三人の顔が紗衣の頭の中を過った。


しかしそれ以上考え込むこともなく、紗衣は前に向かって歩き出した。

そして、何を思ったか甘いものが食べたくなり、行きつけの喫茶店に向かった。




仁良彼方にらかなたは天界に戻り、簡素な喫茶店で暖をとっていた。

彼方の前には冬近くに食べる物なのか?と疑いたくなるほどアイスてんこ盛りのフルーツパフェが置かれた。

先ほどまで悪魔に、とはいえ虐殺を繰り返していた男とは思えない、非常にギャップのある姿だった。


「んん~……毎度のことながら、此処のパフェは美味しいなぁ……あ、これもう一つとあともう一つ特大抹茶下さい。白玉付きで」


追加注文をする彼方。一般人が見ようと、パフェ大好きな人が見ようと、異様な光景だった。

特大フルーツパフェを二つと、特大抹茶パフェだ。幾ら天使に糖尿病は無くても、これは食べすぎだ。


しかしそんな事はお構いなしに、パフェを一気に平らげる彼方。

彼は決して太っていない。寧ろ小柄で標準より痩せている。

それを踏まえると、何処にそんな物が入るのだ、と更に異様な光景に思えてくる。


「うぇっぷ……いっぱい食べたなぁ……でもまだ食べたいなぁ……お金どうしようかなぁ……」


あれだけの量を食べておいて、まだ食べる気でいる彼方。

大抵このように迷った時は食べてしまうのが人の悲しい性。生前でも死後でも、変わらないのだ。


どうするか、と決めかねて周りを見ると、一人の客と目が合う。


その客は、目が透き通る蒼と紅に染まり、髪の毛は黒色に先端だけ白という、何とも不思議な客だった。

こちらが見ているのを気にも留めず、客は紅茶を飲みながら、アップルパイを食べ始めた。


(あのアップルパイ……おいしそうだなぁ………)


そう考えていると身体が、フラリフラリと不思議な客に近づき、そして



「パクリ。モグモグモグモグ。ゴクリ。」



食べた。


「ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!???」


その客は唖然、驚愕もせず、ただ怒りだけをぶちまけた。

これには彼方も悪いと思ったのか、謝ろうとしたのだが



「………食ベテナイッスヨ。」



と、片言の、しかも極端な誤魔化しを口にしてしまった。

客も紅蓮の怒りを露わにし、金を置き、彼方の首を掴んで店の外に出た。


そして、紅蓮の怒りを一層燃え上がらせる。


「あァ!?貴様ァ……俺のアップルパイを食うとは、どォゆゥ事だァ!?人の物勝手に食ッてんじャねェぞコラァァァァ!!!」


「スイマセンデシタ。」


客の怒りに対し、やはり片言で謝る彼方。

それがふざけた態度ととられたか、客は紅蓮を通り越して地獄を体現したような怒りを纏わせる。

その巨大すぎる魔力は少なからず彼方を刺激した。


彼方は数歩ほど後ろに下がり、そして自身も身構える。


「あァ?やる気かよ。んまァいい、貴様の件でイライラしてるとこだ。ぶッ潰してやるよ。粉骨砕身を体現させてやらァ!」


客は彼方との距離を一気に詰め、握り拳を彼方の腹部に叩きつける。

流石の彼方もこの衝撃には耐えられず吹き飛ぶ。

すかさず客は追撃を何十発も叩きこむ。

最後は踵落としで彼方を地面に叩きつけた。


「もォ良いかね。スッキリはしねェが、モヤモヤは消えたぜ。病院のVIPか集中治療室でオネンネしてな。」


そう言うと、客は背を向け歩き出す。

その直後彼方は何事もなかったかのように起き上がり、そしていまさっき客が見せたような跳躍をして見せた。

そして、同じように握り拳を客に叩きこもうとする。


その音に客は気づいたのか、咄嗟に防御態勢をとる。

しかしその防御は遅く、客の腕にクリティカルヒットした。


更にその拳は辺りを破壊するほどの衝撃波を生み出し、その衝撃波によって瓦礫の塊が幾度となく彼方達に向かってきた。

その光景に目も留めず、衝撃波を引き起こしつつも殴り続ける彼方。


「あんだァ!?この威力は!?」


客の叫びも掻き消してしまうような轟風が巻き起こる。

それは彼方の腕の動きにによって創られている物だった。


彼方は肉体強化系の能力を持つ。しかも、レベルが低いものではなく、かなり高水準の物だ。

身体をダイヤモンドレベルまで硬質化させることも、腕に影響を与えず超高速で拳を振るう事も容易く行える。


実際に彼方は今、腕に何の影響も与えずに拳を振るい、その副産物の様な形で轟風を引き起こしていた。


「この野郎ォ……!」


そう言うと客は何処からともなく双剣を出現させ、また客も荒れ狂うように乱舞した。




カシス・フランバースは自身の喫茶店で暖をとり、日課の情報漁りに励んでいた。

彼の営む喫茶店『セルフィッシュ』は、いつもと同じようにガラガラで、カシス一人しかいない。


孤独かと言えばそんなことは無く、カシス自身も優雅な時を満喫していた。

落ち着いた音楽を流し、美味いコーヒーを啜る、モダンな空間での一時。


彼が趣味のプログラミングをし始め、パソコンにパチパチと文字列や記号を打っていると、

珍しく喫茶店のドアを開閉を告げる鐘の音がした。

一瞬、何処から音が鳴っているのか戸惑ったカシスだが、すぐにドアの方に目を向ける。

そして、マニュアル通りの様に客を歓迎する。


「いらっしゃいませ。御客様御一人ですか?何処でもいいですのでお座りください。」


満面の営業スマイルも組み合わせ。

目の前に居るのは、女性の様にスラリと線が細く、そして目も細い少年だった。

背は中学三年生の平均くらいだろうか。カシスから見れば大きいとも小さいとも感じないような身長だった。


その姿を見た直後、カシスの頭の中を誰かが過った。

以前に、仕事を一緒にしたような……自分とも仲が良かったような……


そして、すぐにこの記憶の中にある人物が思い出される。


「お前……弥勒か……?」


「お久しぶりですね。先輩。」


天都弥勒あまつみろくと呼ばれる、細目でおかっぱの少年がそこにいた。

最後のほうにでてきた弥勒君ですが、

完全におかっぱ頭なわけではなく、リボーンでいう幻騎士、

テニプリでいうジュニア時期の柳君みたいな感じです。

細目ですが、同じ例ですが、柳君ほどではなくもう少し開いてます。


別に意識したつもりはないんですけどね……笑

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