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Guardian's2  作者: Radical
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No.28-神器の力(後編)-

長っ・・・

泡沫紗衣は水の槍を纏った状態で、廊下の突き当りまで下がる。

その後、ゆったりと水の槍を前方に定める。


この水の槍、大きさもかなりの物で、廊下で放ったら床と天井の一部が剥がれるのではないか、と思われるくらいだ。

しかも、槍は一本ではない。廊下はL字型になっており、その双方に放てるように二本用意されていた。

どちらかの軌道が少しでも逸れれば、トレーニングルームに大打撃を与えてしまうだろう。

故障どころか、大破する可能性がある。そうなると修理費は故障時の比ではない。


紗衣はそれは避けるべく、なるべくまっすぐ飛ぶように水の槍の軌道を修正する。


「んじャァ、逃げ回れよォ?」


そう言うと紗衣は満を持して水の槍を二方向に飛ばす。

とんでもない速度で槍は飛び、ドドドドッ!と豪快な音を響かせ、長い廊下を水浸しにする。

紗衣の思惑通り、一部の床と天井が剥がれ、また双方の廊下の突き当たりは粉々に吹き飛び、紅い空が見えていた。


紗衣は辺りを見渡す。

すると紗衣の真正面に西の仮面が落ちていた。


紗衣が仮面を拾い上げると


『キヒャヒャヒャヒャヒャ!!遅ぇよバーカ!!仮面は置いてってやるぜぇ!キヒヒヒヒヒッ!!!

あ、でも、このメッセージを読み終わると、爆発しまぁす。キヒヒヒヒッ!!んじゃ、死ね。ボンッ!』


メッセージのボンと同時に仮面が大爆発を起こす。

しかし紗衣は咄嗟に能力を解放、爆発に干渉することで打ち消した。


「にャろう……次会ッたらぶッ殺す。」


紗衣はそう呟くと、神槍を自分の魔力と同化させる。

紗衣は同時に廊下の穴から紅く煌く空に飛び立った。




戦いは壮絶だった。

純哉とカシスは仙寿の魔の手により大きなダメージを受けていた。


焼けるような痛みを、彼らの自分らの頬に感じた。

普通の冷めた「鍋」ならば、こんなことにはならない。


これは「闇鍋」だった。

しかしスープは紫色、箸を入れたら融解したなど、最早鍋というレベルではない物だった。


殺人兵器の名が相応しい。


それを承知で、望月仙寿は紗衣純哉とカシス・フランバースの頭を掴み、

冷えた毒の沼に掴んだ物を突っ込んだのだ。


呻き声をあげながらも憎しみのこもる目で仙寿を睥睨し続ける二人。


「ヒューヒュヒュ!馬鹿どもが!油断するからこうなるんだ!ヒュヒュヒューヒュ!!」


仙寿は勝ち誇り、倒れた二人を煽った。

二人は「殺ス……殺ス」と呻きながらも、地に屈した。


仙寿はさて、と呟き勝手に純哉宅の冷蔵庫を漁る。


闇黒鍋が夕食だったので、一口も食べられていない。

少し遅い夕食を、しかも勝手に漁った人の家の食料を食べようとしていた。


冷蔵庫に手軽な物がないと判断し、仙寿は棚をあさる。

すると、カップラーメンが出てきた。


早速蓋を開け、自身のウェポンで湯を沸かす。

沸いた湯をカップに注ぎ、待つこと三分、やっとちゃんとした夕食ができた。


仙寿が蓋を全部剥がし、箸を麺の中に入れた、


まさにその時。


「「貴様ダケ……何ヲ喰ッテルンジャァアアアア!!!」」


そこには渇いた大地から再び立ち上がったカシスと純哉がいた。

二人は息の合った連係で、仙寿を拘束し、そして、


自分らがやられたように、仙寿の顔も鍋に突っ込んだ。


「アンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


叫び声を上げ、地に屈する仙寿。

それと同時に、二人の半死人も、哀れな大地に屈した。




機械の音が聞こえる街に、黒い帽子をかぶり、黒いマントで身体を包み込んだ青年がいた。

名は『和民六葉かずたみりくは』。彼もまた、Guardianの一人で、そして純哉や紗衣と並ぶ、ランクSSSの一人でもある。


彼は重そうなケースを手で持ち、ゆっくりゆっくり機械の道を闊歩していた。

コツコツと、音を響かせ彼がやってきたのはこの街の中心部である、『ゲル・フレック』。


「さぁて、楽しい楽しいパーティの始まりです。」


そう呟くと彼は自動ドアをくぐり、エントランスを突き進む。

当然、警備ロボットに止められる。

しかし彼は気に留めることなく、前へ進む。


警備ロボットはこの行動を襲撃と見なし、銃を乱射し襲いかかる。

それも、かなりの数で。


だが、その銃弾が彼に当たることは無かった。

彼に当たる直前で、全ての弾が床に落ちた。


警備ロボットも馬鹿ではない。

搭載されたAIを駆使し、弾丸の発射を止め、装備されていたレーザー状の剣を一気に振りかざす。


しかし、どのロボットのどの剣も、彼に当たる直前で勢いが止まる。


何度も何度もロボットは剣を振るうが、そのどれもが虚しく空振る。

ロボットのAIには一連の現象を理解することができなかった。


六葉は表情を変えず、ロボットを無視してエレベータに突き進む。


「後は、最上階を乗っ取るだけです。」


ゆったりゆったりと青年は天界の裏側へと足を踏み入れた。




ゆったりとした服装の小柄な青年は森の中、攻撃動作を止めずに、ただひたすら湧き出る魔物と戦っていた。

彼は自分よりも大きな魔物をいとも簡単に死に至らせた。


彼の名は『仁良彼方にらかなた』。彼もまた、純哉や紗衣、先の青年と同じくSSSランクの一人だった。


彼は、巨大化した異常種の魔物達を、蹴り、殴りというシンプルな攻撃で仕留めていた。

しかし、他の者と違うのは、それを絶対に一撃で行っているという事だ。


どんな部位だろうと、どんな攻撃だろうと、必ず一撃で仕留める。

哀れに倒れる魔物は既に数百を超えていた。


その中に、瀕死の状態の魔物は一体もいなかった。


「ふぅ、どうやら、もうそろそろで終わり……なのかな?」


彼はかれこれ十分以上、異常型上級種と戦い続けていた。

普通の天使ならば、五分が限界だ。その五分でも、十匹に至るか至らないか程度。


彼の強さは常軌を逸していた。

強いというレベルでは、説明できない力があった。


「清々しいですねぇ……秋の風は。」


呑気にもそんなことを呟いていた。

そう言っていると、遠方の空より雄々しい鳴き声が聞こえた。


龍である。しかも、上級種だろう。凄まじい速度でこちら目がけてやってくる。

恐らくは血の臭いを嗅ぎつけてきたのだろう。

龍は絶好の餌がある穴場を見つけたかの様に鳴き声を上げていた。


仁良彼方も同じことを考えていた。餌が、強くなるための餌がやってきたのだ。

しかも、今までの様な低知能な魔物ではなく、高度な知能を持つ気高き龍だ。


仁良彼方は舞い降りた龍目がけ、今まで以上に強烈な蹴りを腹に加える。


ドゴォッ!!と強烈な地響きも巻き起こし、周りの樹木ごと、龍を吹き飛ばした。


「さぁ、餌よ。もっと蠢いてくれ。」


仁良彼方は凶悪な笑みを浮かべながら、拳を構え、龍の腹へ飛び込んだ。




細目の優しい微笑を浮かべる青年が、農業にいそしんでいた。

彼は『天都弥勒あまつみろく』、彼もSSSランクの一人。


しかし、他の四人とは違い、Guardianではない。

三大陸でハンターをしてきた天使だ。


ランクという物は一般的に全て統一されている。

ハンターでSSSのランクを持っていれば、Guardianだろうが何だろうが、SSSとして認められる。


SS以下だと、魔法の力が足りないからS、というのがあるが、SSSにそれは無い。

彼も紛う事なき、SSSの実力を持つ一人だという事だ。


「さて、爺ちゃんに野菜、届けようかな。」


微笑みながら、こんなことを呟く。

彼は三大陸より移住してきた政府の重鎮に自分が育てた野菜を時折届けに行っている。

その人にはいろいろとお世話になったらしい。


しかし彼がお金をもらったりすることは一切無い。

曰く「こっちがお節介でやっていることなのにお金なんてもらえない」だそうだ。


「んー、今日のリンゴは結構美味しい。ウェポンで作っても、意外と美味しい物ができるんだねぇ。」


一人呟く天都弥勒。

そんな時、予期せぬ来訪者が現れた。


魔物だ。

天界に魔物が出ることなんて、転送ゲートの故障か、誰かが意図的に放したかのどちらかだ。


魔物は天都弥勒の持つリンゴ目がけて襲いかかってきた。

しかし彼は動じない。

冷静に魔物の攻撃をかわし、反撃の機会を窺っている。


魔物はその後、かなり暴れ回ったが、ついに疲れが出たのかあまり動かなくなった。

彼はそれを見逃さず、自らの能力で魔物を攻撃する。


彼が手を天に向けると、掌にピンク色の大きなパネルの様な物が出現する。

しかも一枚ではない。六枚ほど出現した。


彼は手を魔物に向け、その六枚のパネルを一気に放った。

そのパネルは数回切り裂いたのち、合体し大きな立方体を作った。


そしてその立方体で相手の魔物を包み込んだ。


「さぁ、反省しなさい。人の物勝手に取ろうとしちゃ、いけませんよ。」


そう言った瞬間、立方体の中は青い煙に満たされた。

魔物はその煙を吸うと、パタンと倒れこみ、そのまま眠ってしまった。


一見落着、と彼が後ろを向くと、


「おやおや。こんなに釣られてきちゃいましたか。まぁ、良いや。」


彼は再び、魔力の立方体を作り出す。しかしその数は、先ほどとは比にならないほど多く、

またどれもがピンクの様な優しい色ではなく、漆黒の闇の色をしていた。


「恨みは無いんだけど、君たち全員BADENDかな?」




五人の強き天才天使達。この五人が出会う日はそう遠くない未来の話。

しかし、時を同じくして、最強の堕天使も動き出す。


「今日は気分がいいんだ。久しぶりに、天界に行こうかなぁ………」


黄金と白のローブを羽織り、黄金の翼を羽ばたかせた堕天使。

その瞳は美しく、どこからどう見ても天使その物だった。


だが、それでも微笑だけは、邪悪に満ちていた。


その者はかつて、望月仙寿や紗衣純哉と共に行動し、そして二人を裏切った堕天使。

絶対級天使、泡沫紗衣を作り出した張本人。


キュウがまた、動き出す。


「仙寿や、純哉。それと紗衣。元気にしてるかなぁ。フフフフ、今度こそ殺しておかないとね。」



迎えなくてはならない決着をつける為に。



この世に終わりを齎す為に。


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