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ゾンビの恋人  作者: 鳥原 麻生
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親切の押し売り

 翌朝、美人の前でまともにしゃべるという目的を達成した優介は、晴れやかな笑

顔で教室に入った。しかし殺気を帯びた沙織の視線を感じ、顔をこわばらせた。

「よう! 昨日は大成功だったな」

 佳治は上機嫌で優介の肩をたたいたが、沙織は意地の悪い笑みを浮かべ、近づい

てきた。

「何が大成功よ。お客である私に向かって『帰れ』なんて、芸人失格よ」


 優介は半眼で沙織を見つめ、

「お客じゃない、タコだ」

 完全に相手を敵に回すセリフを吐いた。

「なんですって」

 沙織は優介を血走った目で睨み、優介も負けじと睨み返した。


「おい、やめろよ、二人とも」

 内心次の展開にワクワクしながら、佳治がいちおう止めた。

 優介は目をそらしたら飛び掛かってこられるような危機感を覚え、相手を睨み続

けた。やがて沙織は苦笑いを浮かべると、自分の席に帰っていった。


 優介はホッとして、つぶやく。

「勝った……」

「何言ってんだ」

「沙織を完全に撃退したってことさ」


 しかし、これで二度と自分には付きまとわないだろうという優介の思惑は外れた。

 以前にも増して、沙織は彼にしつこくなった。

 親切の押し売りをするようになったのだ。


 漫才の練習で忙しく、忘れていた宿題を必死でやっていると、「優君、見ていい

よ」と言って、沙織がノートを渡してくれた。


 優介は礼を言って書き写したが、全部間違っていた。教師に当てられて答えたと

ころも当然間違っていた。しかもひどい間違え方だったので、クラス中に笑われた。

「お笑いだけあって、間違え方も面白いね」という沙織の言葉に、もう一度みんな

が笑った。


 授業の後、優介は沙織の席に行き、

「わざとか」

 険しい顔で聞いた。

「何が」


 沙織はしらばっくれた。優介は壁ドンならぬ机をドンとたたき、

「お前はサイテーだな! 俺は笑われればうれしいと思っているのか?」

「お笑いって、そういうもんでしょ?」

「芸人にもプライドってもんがあるんだ!」

「そういうケチなプライドは捨てなきゃやってけないよ。恥をかいても笑いを取れ

たら喜ぶぐらいじゃないとね」


 正論に思えたので、優介はますますムカつき、机に載っていた沙織のノートを床

にたたきつけた。

「何するの!」

「二度とこんなもん見せるな!」


「太内君、そういうのイジメだよ!」

「やめなよ!」

 沙織の友人達が騒ぎ出したので、優介は「ごめん」と言ってノートを机の上に載

せると、すごすごと自分の席に戻った。

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