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悪霊の助言
彼らがプロになって、世の中の人々を笑わせたら、どれだけ素晴らしいだろう。
きっと今の私みたいに、嫌なことを全て忘れさせてくれるお笑い芸人になるだろう。
優介も、ただの出世欲だけではなく、そういう理想を持ってやっているのだ。だ
から、あれだけ頑張れるのだ。
〈おいおいおいおい、何を考えているんだ! そういう青春ドラマみたいな美しい
ことを考えるんじゃない。お前は留奈を殺して、優介の命を断つんだ! それをや
らなければ嫉妬に苦しみながら一生優介を想い続けるはめになるぞ〉
(分かってる。でも、私はいま感動したの)
〈愚か者め、そんなものは一過性のものだ。家に帰れば、また一人で苦しむんじゃ
ないか。そんな状態にいつまで耐えられると思っているんだ。留奈が外へ出たら、
さっさと殺るんだ。自分を救うためにな〉
沙織は感動が消え、不安がよみがえった。
悪霊の言う通り、また独りで苦しむ日々が始まるのだ。
〈お前のことを分かっているのは俺だけだ。それだからこそ、親身な助言をしてい
るのだぞ〉
(分かった……)
漫才の後の演劇が終わると、沙織は生徒達と外に出た。その陰湿な視線の先には
留奈がいる。
沙織は人混みをかき分けて留奈に近づいていった。




