死んでる時間
校庭の片隅に来ると、優介は怒りをあらわに振り向いた。
沙織の後ろに数名の女子達が立っていた。
「おい! 何なんだ、お前ら! 帰ってくれ」
「告白聞きたいもーん」
美奈子が細い目を三倍に見開いて言った。他の女子達は笑いながら拍手した。
「俺のしゃべることは全てがお笑いだと思っているのか」
「そういうつもりで訓練したほうがいいよ」
美奈子が偉そうにアドバイスするのを聞いて、沙織が眉を寄せた。
「ねえ、私達とても大事な二人だけの話があるの。悪いけど帰ってくれない?」
「大事な話……って、まさかプロポーズ!?」
「そんなんじゃねえ! けえれ! けえってくれ!」
なぜかなまりながら優介は女子達に向かって叫んだ。
「分かったよ、ケチ」
美奈子は他の女子と一緒に去っていった。
彼女達が校舎に入るのを見届けると、優介は怒りに燃える腐りかけた魚のような
目を沙織に向けた。
「おい、沙織」
「な、なによ」
「昨日の話……マジでマジなのか」
「そうよ。マジでマジ」
「ちょっと待ってくれ。お前の想いで俺の心臓が動いているってことは、お前の想
いが途切れたら俺は完全に死ぬってことか」
「そーゆーこと。だから私、一日中優君のこと想っているの。大変だろうって?
ううん、そんなことない。優君の命が私の愛に懸かっていると思うと、とっても幸
せ」
「寝ている時はどうしてるんだ!」
「もちろん忘れてる」
「なにいィィィっ!?」
「でも、私夜ふかしじゃない。二時頃までブログ書いてネットサーフィンして、六
時には起きるから、優君が死んでるのは四時間ていど」
「四時間、俺は死体なのかっ!」
「そう。でも、六時には生き返るから大丈夫」
「何が大丈夫だ! 死んでる俺の身にもなれ!」




