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シン世界-日本最強の九二歳が全てを斬り伏せる-  作者: のっぽ童子


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スピードスター

(俺を思い出せ)


怪物殺し(ジャイアントキリング)』ルウェット・ハサウェ......それが彼だ。


「相手がよぉ、自分より強ぇなら......尚更、燃えんだよ!」


たちまち、ルウェットが筋肉を隆起させてナイフの刃を食い止めると、左肩を突き出して、前に突撃した。


「なっ」


想定外の事態だったが、すぐにエスは片方のナイフを突き技に斬り替える。


そうすれば、必然的に左肩と突きが噛み合うことになる!


血しぶきを上げるも、突きの凶刃は根元まで刺さり斬るに至らない。


それに活路を見出したルウェットがあまりある力の右腕で腹全体にラリアットを繰り出した。


先の姿勢で左腕の防御が辛うじて入るが、転がり末に雪に埋もれた。

しかし、すぐに立ち上がるも、鼻からは血が蛇口を捻った水道のように飛び出てくる。


「あんた、俺が武器だけしか使わないって思い込んだろ? 俺ぁ、縛られるのが嫌いなんでね、フリースタイルだぜ」


「ええ、そうね。ただ、それ以上に筋肉量が予想外だったわ」


「着痩せタイプなんだよ......っ!」


瞬間、ルウェットはダガーを投げつけざまにエスへ突進する。


(二段階攻撃ってわけね......でも、私の方が上手(うわて)かしら)


すると、エスからは軍用ナイフが二本飛んできた。


「ねちっけぇなぁ!」


ルウェットはそれらを槍でフルスイングして、防ぐ。

流石、『雹鬼』と言うべきか、一瞬の間を使って、もう彼女が眼前にまで迫っていた。


(間に合わねぇ......ならよ。間に合うようにすれば良い!)


ルウェットが振った方向に体を三六〇度回転かつ跳ばせながら、エスの長剣の攻撃をパルチザンで弾いた。


(回転運動......っ!? 一筋縄じゃ行かないわね)


エスは長剣を真下へ捨て、ナイフを両方に装着させる。


「そうだな......ちょっと、落とし物を取りに行こうか」


ルウェットまでも生命線と言える槍を捨て、素手のみになった。

そして、一気に体全体を前方へ加速させる。


その速度は先ほどの速度を越えるものだった。


(速いっ!)


エスはすぐにナイフを振り下ろすが、霞を斬った感覚に包まれる。


しかし、ルウェットはそんな彼女に目もくれず、雪の上にあるなにかを取ると、今度はエスに向かって、再度、走り出した。


(なにをしようとしているの......? まぁいいわ。迎え撃つだけ!)


ルウェットが鞘走ったのは......投げていたダガーだ。

それを見たエスは弾きにかかるが、その時、ルウェットの前腕が沸き起こり、そのナイフの邪魔をする。


「いや、体を温めておきたくてね。寒いからさ」


ルウェットは軽口を叩く。


(なぜ、槍を捨ててまで短刀を回収したの? 彼の脚ならば、持っている状態でも私に捕まることはなかったでしょうに)


エスは不思議な感覚を覚え、攻めから護りに徹する。


「そんな防御で大丈夫かぁ?」


ルウェットが途端にダガーを落として、防御を打ち砕こうとする。


「くっ......!」


それでも崩れないのを見て、ルウェットは左の前蹴りを繰り出した。


両手の塞がった状態では防ごうにも難しく、エスはただ虚しく吹き飛びながら、鼻から凍りきっていない血が雪を赤に染める。


エスが体勢を立て直すと、足元にパルチザンが転がっているのに気付く。

そして、意図的なのか、反射的なのか、エスはそれを握らざるを得なかった。


「ありゃ、取られちったか」


ルウェットは飄々とした態度のまま、相手を舐め回すように見て、ニヤついた。


「その態度、いつまで持つのかな?」

(調子が狂うわね......)



審判二人がその状況を眺める中、デンマークの審判の眉が上がる。


(ルウェットさん、前よりも生き生きしてる......! これなら......!)


ルウェットはどのようにして心境を変えたのだろうか。


数日前、道場にて......


「ミスター轟道、一つ相談したいことがあるんだが」


「どうした、そんな畏まって」


「あんたみたいに必殺技を作りたいと思ってな!」


ルウェットは元気良く言った。


「ほう、面白いことを言うじゃないか」


「今、俺の手札にあるのは槍を回転させるだけの螺旋攻撃のみだ。それをどう増やしていくかが悩ましい」


「なるほど、一つアドバイスするとすれば......長所を伸ばせ」


「脚をいつも以上に鍛えろと言うことか!?」


「違う。お前になんのために技術を教えたと思っている。今までを振り返るんだ」


轟道は頭を掻く。


「今まで......っは。そういうことかよ!」


ルウェットは張り詰めた表情から一転、喜びに満ち満ちた表情で先を見据える。


「ミスター轟道、あんたが技術を磨くなら、俺はフィジカルを活かすぜ! もちろん、技術は頂くけどな!」


「その言葉が聞きたかった。じゃあ、俺はここでおいとましようかな」


轟道は嬉しげな足取りで道場を出ていった。


「神橋先輩! アレックス! 稽古に付き合ってくんねぇか?」


「力になれるかは分からないけど、存分にかかって来なよ!」


「ルウェットさん、俺も同じ気持ちだ」


「胸を借りるぜぇ!」


そこから、激しい戦闘が始まり、数時間した後......


「これなら......この技なら......行ける!」


ルウェットの手には轟道とはまた違う、術が握られていた。


二人はというと、


「技なぐでも、めぢゃづよいじゃん」

「ルヴェットざん、これで勝ぢまじょうね!」


容赦なく痛めつけられて、呂律さえ回っていない。


「ああ」


この時、ルウェットの顔は爽やかだった......



というわけでデンマークの審判アレックスはワクワクしていた。


(自信があるのかな......でも、こっちだって、まだ切り札がある......はず......この気候なら......!)


カナダの審判はダウンのフードを深く被る。



その頃、『最強』二人は向き合っていた。


エスがパルチザンを振りかぶりながら、突撃する。

反応し、ルウェットは食い気味に前へ出て、ダガーを柄に押しつけた。


(初速を止めるか......まぁ、あの速度だ。当然、範疇内)


先程のお返しと言わんばかりにエスの右脚が跳ね上がる。

体勢の崩れたエスを見て、ルウェットは咄嗟に右腕を挟み込み、衝撃を和らげる。


こうなれば、ルウェットの意識は脚に集中するだろう。

そこを狙い、エスはパルチザンを引いて、高速の突きにかかる。


しかし、ルウェットが右足を地面にぶつけ、物凄い勢いで後退すると、槍の穂先は胸を掠めた。


「俺の武器は、俺が一番分かってんだよ! 威力も射程もなにもかも!」


ルウェットは負傷覚悟で刃部を掴むと、思いきりに引っ張る。

当然、エスの体は言うことを聞かない。

少しして、手を離すも、三テンポ遅れた。


「ぐぅっ!」


刹那、ルウェットが光速の脚と人ならぬ力を乗せた短き突きを右肩に突き刺す。


(右腕の出力は半減ね......でも、隙だらけよ)


エスは近距離からみぞおちへ煌めくナイフを投げつけ、それと同時、もう一本小刀を持って、相手が突きに使っている手に斬りかかった。


「おっと?」


すると、その手から親指を除いた四本の指の感覚が消え、なにかが地面に落ちた音がした。


判断衰えることなく、ルウェットは瞬時に重心を右へ置き、右拳で相手を殴りつける。


その威力でエスは吹き飛ぶが、意識までは飛ばなかった。


(このままだったら、私は負けていたでしょうね。でも、ようやく来たわ。私の奥の手)


エスを守らんとばかりに風が強くなる。


(なっ、雪が!)


辺りが一面銀世界......なんてどころではない、一空間が丸ごと白に染まったのだ。


「ホワイトアウト」


その言葉とともにエスの影は跡形もなく、消失した。





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