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シン世界-日本最強の九二歳が全てを斬り伏せる-  作者: のっぽ童子


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アッ倒

万里の長城にて。


万祝とバブエが睨み合う。

そして、割って入るように審判の(ワン)が前に出る。


「では、これから『中国最強』載 万祝VS『インド最強』バブエ・カルダットの試合を始めたいと思います! よーい、スタート!」


開戦の合図が響く。

程なくして、バブエが一気に駆け出して大振りの右拳を飛ばす。


(大振りには......大振りだろ)


大きく脚を展開すると、その拳を捻って躱し、位置の威力を残したまま、腹に右拳を突き刺した。


(沖捶(チュウスイ)は痛いぞ)


「ウォォッ!」


バブエがあまりの衝撃で下がる。

それと同時、流れるように万祝が相手の首を左で蹴り込む。


「グッ......!」


バブエはそれに痛がり、首を巨大な手で包んだ。


(戦場(いくさば)で痛みに反応するなんぞ、愚の骨頂)


そして、またもバブエの領域を(また)ぐと、次に入れるのは右の......発勁!


「......ッ!」


言葉を出す余裕もなく、バブエは吹き飛び、石床に叩きつけられた。


(この発勁、前の俺とは一味違う......まず、ノックダウンと言ったところか)


ゆっくりとした足取りでバブエに寄っていくが、警戒は緩めない。


拾い上げた飛礫(つぶて)を手から離す。

そこは相変わらず、徹底的だ。


バブエはたまらず、掌を交差して防ぐ。


万祝はというと、その隙を突いて、弱ったボディへ左の前蹴りを繰り出していた。


しかし......


バブエの丸太とも言える右腕が行く手を阻んだ。

続けざまに腕を引き戻し、再度、バブエの右フックが放たれる。



(右を破壊する!)


万祝は容易に横っ飛びで回避し、筋が伸び斬ったところで崩拳を叩き込んだ。


しかし、筋肉の層が分厚すぎるあまり、壊すには至らない。


(ムウですらダメージのあった崩拳がほとんど意味を為さなかった......なんて、筋肉量と耐久力だ!)


驚愕しつつも万祝は慣れた手付きで奴の腕を蹴り、距離を作る。

今度は痛がる様子もなく、バブエが立ち上がった瞬間に前蹴りを出す。


距離があるとはいえ、リーチではバブエに軍配が上がるため、万祝は脚の間合いに入ってしまう。


それでも、万祝は冷静に腕を交差し、かつ、体を突き出して威力を低減しつつ、横にズレることで蹴りを受け流す。


そして、そのまま、発勁を撃ち込む。

反応し、バブエが右腕を前に脅威を防ごうとする......だが、途端、万祝の拳が消える。


(ここでフェイントとは中々.......!)


彼がそう思った時には、こめかみに縦拳が刺さっていた。


「若くして良よき拳だ! 素晴らしい!」


そう反撃するバブエの右拳が当たる寸前のところで万祝がカウンターとして顎へ打撃を乗せた。


バブエが痛みからか、後退する。


「お前が認識する地面は大地震に見舞われるだろう」


万祝が再び顎へ、弦のようにしなるフックを三発喰らわせる。


早速、バブエはよろめき始めた。

しかし、そんな状態でも右拳を振るうのは止めない。


「今までで一番隙が大きいぞ!」


拳の出し終わりを狙って、万祝が正中線上の人中じんちゅう・膻中だんちゅう・水月すいげつを一瞬にして撃ち抜く。

その音は一つの爆発のようだった。


バブエは膝を付くが、のっそりと立ち上がる。


(なんだ、こいつは......不死身か?)


万祝は気付いていた。

この手応えの無さに。


「中国武術の集大成。一度は体験してみたいとは思っていたが、予想以上だ」


バブエの表情には余裕がある。


(このままじゃ、スタミナ負けするな......だが、こういう相手は経験済みだ!)

「ここからは殺す気で行こう」


万祝の目は凍てついていた。

しかし、その奥の奥には燃えるような闘気が潜んでいた。


「では私は自分を守り抜こうか」


そういうバブエは右腕を構える。


最初に先陣を斬ったのは万祝!

ゆったりとした歩法で懐に潜り込む。

迎え撃とうとバブエが右腕を弧に振る。


腕を上へ跳んで躱すと同時に喉を右で蹴り上げ、頭を掴んで首に親指を突き刺した。


この試合で初めてバブエが赤を流す。

ただ、筋肉が致命傷寸前で喰い止める。

バブエが咄嗟に振り払うと、万祝が跳んで後ろへ下がり、避けの姿勢を取る。


「肉体、精神、判断、分析、そのどれを取っても一級品......」

(だが......)


バブエがここに来て、分析を始めた。


(この異様なタフさに加え、手応えの無さ。なんらかの技術か肉体的な能力が関係しているはずだ。それにあの巨体にしては吹き飛ばされやすい気がする......早く綻びを見つけるんだ!)


万祝も分析だ。


「そろそろ......収集は終わりだ」


途端、バブエの樹木らしき躰からだが大きくなったかのように感じた。


バブエ・カルダットはここからだ。


「今のが餌を喰いまくる幼虫の姿ってわけか」


万祝は自然と笑みが溢こぼれ落ちる。

それと同じく、額から冷や汗が垂れた。


「さぁ、それはどうかな?」


バブエが先ほどとは比べ物にもならない速度で右腕を振り抜く。


万祝がそれを受け流そうとするも、掠っただけで数メートルぐらいは飛ばされる。


(ムウの拳も重かったが、面積が巨大な分、こっちの方が厄介だ......!)

「だが、動き自体は大して変わらないな!」


万祝は状況をリセットするために飛礫つぶてを展開する。


「心頭滅却」


しかし......バブエは攻撃を顧みず、突進を仕掛けた。


(まじか......こうなれば、一か八か!)


その突撃を両腕の突き出した状態で受けながら、万祝がバブエの横腹を掴む。


一つ言う、これは攻撃ではない。

ただ、摘んだだけだ。


(なるほどな......今まで殴っていたから気付かなかったが、こいつの筋肉は柔らかすぎる! そのボディで衝撃を分散していたから、あの耐久度なんだ!)


体が柔らかい......インド......まさか。

万祝に一つの考えが電流のように全身を巡った。


「カラリパヤットか!」


万祝が叫ぶ。

カラリパヤット、世界最古の一つとして継承されている武術である。


「ほう。ものの数分で私の術を見破るか......将来有望で良きことだ」


それでも、バブエの顔は崩れることがない。


(力を一点集中させるんだ......!)


万祝が難なく懐へ入る。

そこへ来て、バブエが左回し蹴りだ。


ギリギリに万祝が脚の下へスラインディングで潜ると、右脚を引き、そのまま......脚での発勁で腹を穿つ!


「人を殺せる蹴りだ、しかし......火力不足か」


バブエが右で万祝の脚を掴み、岩肌の地面に叩きつける。

万祝に、受ける以外の選択はない。

その時、衝突音が木霊し、世界遺産にクレーターが完成する。


万祝は必死に両手を後頭部へ繋げるが、半端のない威力と衝撃から血塊を吐き出す。

自国のワンですら膝を付き、これは勝てないと諦めかけていた......確かに前の万祝ならば、この差に絶望していたかもしれない。

しかし、ムウという限りない強者と闘い、戦友となった万祝にはどんなものが来たって怖くなかった。


「あいつ以外には負けないって決めてんだよ!」


逆に万祝が死に物狂いの馬鹿力で腕を取ると、背負いのような形でバブエを投げた。

そして、天地がさかさまになったバブエに追撃として首へ命を絶つ蹴りを放つ。

もろに受けたバブエは飛ばされ、石の坂を転げ落ちた後、うつ伏せの状態で静止する。



「死んだんですかね......?」


ワンが体を震わせながら、アショクに問いかけた。


「いや、バブエさんの勝ちだ」


アショクはその問いを答えるでもなく、言葉を発する。


「悪く言うつもりはないんですけど、今は万祝さんの方が有利......ですよね」


ワンの意見は至極真っ当なものだった。


「確かに彼は素晴らしい戦士だ。だが......バブエさんは実力を遥かに越えている」


アショクの言い方は、まだ力を出し斬っていないと言っているようだった。




















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