ノース視点(続き)
前回の続きです!
翌朝、私は部屋の台所から出る美味しそうな匂いにつられて目を覚ました。同室のメルシャ・ホールさんはとても家庭的なセンスがある。たまに大人の話をするけど、私はそういう話に疎いし、興味が無いわけじゃないけど、メルシャさんの話し方に色気があって、なんだか見ているこっちが恥ずかしくなる。でも掃除も洗濯もちゃんとしてくれるし、お料理の腕はとても凄いから尊敬の念を込めてさん付けさせて貰ってる。とゆうか私は寮で何もしてないんだよなぁ〜。家事の手伝いは昔から苦手だってメルシャさんに話したら、
「大丈夫よぉ〜。ぜ〜んぶ、私に任せてちょうだい☆-(ゝω・)v」
とウィンク付きで言われてしまい、そのまま一切手伝いは出来なかった。
「今日も美味しそうな朝ご飯だね。」
「いえいえ〜。趣味でやってるから、気にしないでいいわよぉ〜。」
なんて言うメルシャさん。謙虚な姿勢が改めて尊敬できるな。
朝食を食べ終わったあとは、外に出て食後の散歩をした。本当は少しだけのつもりだったけど、今日は予定も無いし、街に行く。この街の屋台はとてもいい仕事をしている。ちょっと定価より高いのを除けば文句なしだね。
結局甘い誘惑に負け、屋台の美味しいスイーツを沢山食べてしまった。食後の散歩のつもりが…。その頃にはもう外は日が沈みだしていて、早足で学校に戻った。
学校につき寮に戻ろうとして、ふと私を刺すような視線を感じて立ち止まった。視線を感じた方を向くと、そこにはホーク・ウィン君がいた。この時私は心の底から嫌悪感に包まれた。彼の顔は気味の悪い笑みが張り付いていて、この世のものとは思えないような禍々しい気を放っていた。
「やっと見つけたよノースちゃん。これから君は僕のものだ。汚らわしいリオル・マルクスとの茶番はもうしなくてもいいんだよ。」
なにを言ってるんだろう?本当に訳が分からない。マルクス君が汚らわしい?マルクス君との茶番?
「何を言ってるの?誰が汚らわしいですって?自分に言ってるんですか?そうですよね。私はマルクス君のことが好きなんです。間違ってもあなたのものになんかなりたくありません。」
私はついカッとなり、反論してしまった。今思えば、これが全ての間違えだった。
「ふは!ははは、はははははっ!想像通りだ。マルクスを罵倒すれば、乗っかってくれると思っていたよ。これで条件は満たした。」
急に笑いだしたウィンに私は1歩後ずさった。
「我は邪神に力を与えられし者。彼の者の名はユルダス。この世界を破壊する最強にして、最凶の存在。我はその力と、この詠唱を持って自らの力を改変する!『従順隷属』の発動条件を改変。対象はハーフエルフの少女、ノース・ランウェイなり。『超特殊能力・強制隷属』」
この時、私は自分がしてはいけない過ちを犯したと、本能が理解していた。しかしそう思った時には既に遅かったのだ。
「今からお前は俺の物だ。分かったかノース。」
「はい、ご主人様。」
言いたくもない言葉が、自分の意志とは関係なく紡がれた。
「完璧だ!でもこれは時間が限られている。これから完全に君を俺の物にしてあげる。もう少しの辛抱だから我慢してね。」
私は、「嫌だ。誰か、リオル君助けて!!」と、声にならない言葉を紡ぐしかなかった。
☆
あたりは暗くなり、おそらく日も変わっただろう。私はウィンの言葉に従わされ、闘技室に来ていた。ウィンはずっと私の手を握っていた。抵抗したいのに、身体が言う事を聞かない。
「さぁ、儀式を始めようか。君を永遠に俺の物にする儀式を!」
そう言いながら、目の前の悪魔は自分の首筋に細い針を刺した。首からは血が流れている。さらに、私にも同じことをしてきた。多分、強制隷属というのは従順隷属の発動条件を簡易化したものだろう。ただし、時間制限があるためウィンは出来るだけ早く私を従順隷属にかけようとしているのだろう。そしてこれはその前準備だ。
「さぁ、俺の血を飲むんだ!」
今の状態の私にこれを拒む力はない。私は彼の首筋に噛み付き、流れる血を飲む。ウィンも同じように私の首筋に噛み付いてきた。魔力が彼と同化していくのを感じ、意識が薄れていく。その時、
「ホーク・ウィン!!!テメェー、ノースに何しやがったぁ!」
私の王子様の叫び声が聞こえた。あぁ、リオル君、本当に、助けに、来て、くれ、たんだ。うれ、しいな…。
私は意識を手放した。
ノースが操られてしまったぁ!一体ホーク・ウィンは彼女に何をしたのか。リオルは彼女を救い出せるのか。気になる続きは次話です!!