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よく朝、寝坊した。それも俺だけ。アルルはどうしたかって?俺を起こさずに学校に行きあがった。なんてやつだ。そんで今職員室にいる。
「いいかマルクス。俺はな遅刻したことについてなにか言ったりはしない。なにせめんどくさいからな。」
お、これは説教無しか?教師としてはダメなんだろうが、今日だけは許す。
「だからな3発ほどゲンコツな。」
「え!?それはどうゆう。」
「よーし、歯食いしばれ!」
いち、に、さん・・・。痛い。痛すぎる。なに、説教がめんどくさいから、体罰だ?ふざけるな!暴力反対!
「暴力反対なんて思われてもこれが俺のやり方だから諦めろ。」
そうですか。って、遅刻した俺が悪いんだけどね。でもアルルだけは許さん。
「それと罰として、今日の実技の授業は属性魔法系の説明頼んだぞ。」
それはお前がやりたくないだけだろ!ま、反省文書けとかよりはましか。
「はーい。」
「よし、なら教室上がっとけ。今は魔道具精製の授業のはずだ。早くいけよ。」
魔道具精製か・・・。あれ説明ばっかで面白くないんだよな。ま、忠告通り早く行きますか。
☆
魔道具。魔法が発展している分この世界では科学が圧倒的に劣化している。その不足分を補うため、人々は道具に魔法を付与することにした。例えば電気。これは透明な箱に火属性魔法を封じ込めたものを使う。光属性のものもあるが、その貴重性によりそれは高値で取引される。これだと魔法世界は科学世界よりも圧倒的に不便に感じるかもしれないが実はそうでもない。特質すべきものは鞄だろう。革で作られた鞄に、生活系魔法の収納を付与することで、その容量は格段に拡がる。また、生活系魔法は魔法を少しでもかじった者ならば誰にでもできる。そのために値段も手ごろだ。他にもミイナに見せたクリーンなどを付与した服は効果がある限り絶対に汚れることは無い。この技術のおかげであまり不便無く生活ができている。ただ、移動は馬車というロマンチックというか古典的というか・・・。とにかく遠出にはかなり時間を要する。てことで、
「移動手段を開発しますか!」
どうせ長い講義かと思っていたが、今日は簡単な魔法を使った魔道具精製だった。理科とかでいうところの実験みたいなものだ。
「移動手段ってどうゆう意味?」
こちらの授業でもペアはノースだった。
「いや、この学園、つまり王都に来る時に思ったことなんだけどさ、馬車の乗り心地が最低だった。」
「確かにね。そもそも道が舗装されてないからね。」
「そこで、どんな悪路でも乗り心地のいい乗り物を造ろうと思う。」
「それは素敵な発案だと思うけど、そんなことできるの?」
「とりあえず設計図はできてるよ。『無系統オリジナル魔法思想代用紙』」
この魔法は頭で考えたことをいちいち紙に書くのがめんどくさかったから作った魔法。紙に手をかざせばあら不思議、頭の中で出来てた構想が紙の上に浮かび上がる。この世界、イメージさえあれば基本何でもできる。ちなみにクルーナ先生に教えたところ、魔力がほとんど持っていかれたらしいから多用できるのは俺ぐらいだろう。
「す、すごい。魔法もすごいけど、この設計図。」
ノースに見せたのはバイクの様な形をしたものだ。ただ、普通のバイクと違い車輪が無い。車輪があるべきところには魔力を流すことで発動する風属性を付与した自作の魔道具。これにより魔力を流せば20cmほど浮かび上がる。浮かび上がるだけでは動かないのでバイクの後ろには火属性魔法のバーストという魔法を使って火の力で車体を走らせる。これはエンジンみたいなもので、ハンドルを回すと稼働する。それをブレーキと連動させて加減速を行う。
「多分ボディーさえ作れればあとは魔道具をくっつけるだけだから簡単に出来ると思う。」
「ホントにすごいよこれ。これなら馬車よりも速く、その上最高の乗り心地で移動ができるよ!」
「それは俺ならな。」
「どうゆうこと?」
「いや、こいつを浮かせるために魔力を流さないといけないから、無尽蔵に魔力がある俺ならともかく、魔力が限られてる人には使えないよ。それから魔力流す時はどうすると思う?」
「えっと、それは魔力操作で・・・あ、普通の人にはできないのか。私も昨日できるようになったばかりだし。」
「そ、つまり俺の、俺による、俺のための魔道具ってわけだ。ただよく見てくれ。そいつは二人乗り使用になってる。」
「てことは」
「やろうと思えば俺以外もう1人これに乗れるわけだ。で、ノースに頼みがあるんだがいいか?」
「頼み?なに?」
「この乗り物は夜でも走れるようにしたいんだ。馬車の夜道走行は危険だから出来ないが、これに光を付けたら夜道も走れるようになる。」
つまりはヘッドライトだ。
「光?でも私そんなこと。」
「大丈夫。昨日のステータスでノースは光属性が使えるってわかっただろ?俺も光属性を使えるが、車体を作ってる間にノースにライトを作ってて欲しいんだ。そしたらペアでの共同制作にもなるし、時間の短縮にもなる。もちろん魔法の使い方は俺が教えるし、できた時に試運転は一緒に乗って欲しい。ダメか?」
「そんなの、断る理由がないよ。私に出来ることがあるならやりたいし、そのバイク?ってゆうやつに初めて乗れるなんて、正直私からお願いしたいほどだよ。」
「良かった。じゃ、今から教えていくからちゃんと聞いててくれよ。」
「うん!」
「リオル君、どうしたの?」
と、盛り上がってるところにミレイが来た。女子の制服を着ている。その後にアルル。
「お、ミレイか。ちょっとした魔道具を作ろうと思ってな。」
「へえ、どんなの?」
「これが設計図。見たいか?」
「うん、見たい。」
「わかった。ただ、条件がある。アルルには見せるなよ。」
「えぇ!どうしてだよリオル。」
「ほう、身に覚えがないと?」
「そ、それは・・・。」
「アルル様、一体何をしたんですか?」
「今日遅刻しそうだったから急いで学校に来たんだ。」
「そうだろうな。ただ、昨日の夜約束したよな?」
「先に起きた方がまだ寝てる方を起こす・・・。」
「正解。でも今日、お前は早速その約束を破った。そのお陰でゲンコツを3発ほど貰ったぞ、俺は。」
「遅刻する時間まで寝てるリオル君にも咎がありそうですけど、さすがに約束は破ったらいけませんよ。」
「反省してます。」
「ま、もういいんだけどね。ノース、設計図コイツらにも見せていいか?」
「うん、そもそも私が決めれる立場にないし。」
「いや、もう共同制作ってことになったんだから、ノースの許可もいるだろ。まあいいや。ほら移動手段の乗り物だ。」
「「・・・。これはリオル(君)が?」」
「そうだよ。ま、作り出すのは今からなんだけどね。」
「これは画期的すぎるよ。」
「そうだね。でも気になることが。これ、普通の魔力量じゃ使えなくない?そもそも魔法を知らない人は絶対にできないよね。」
さすがミレイだ。ちゃんと気付くところには気づくな。
「リオル君にしか乗れないね。あ!これでも二人乗りだ。」
「ミレイの観察眼は流石だな。これは俺にしか運転できないが、俺とならもう一人乗れるんだ。できたら乗せてやるけど、一番はノースだからな。」
「ホントに?最初っから乗れるなんて考えて無かったから、何番でもいいよ!」
「リオル、僕も乗っていいのか?」
「ちゃんと反省してるか?」
「もう、ホントに反省してる。」
「なら次から気をつけてくれよ。最初っから乗せるつもりだったけどな。」
「やった!」
「ま、さすがにこの授業だけじゃ無理だろうから出来次第ってことで。」
「うん、楽しみに待ってるよ。」
「そうしてくれ。それじゃ、ノース、作り出すか。」
「はーい!」
にしても、
「やっぱり、ホークの視線気になるな。」
「マルクス君も?ホント、何なんだろうね。」
「酷くなってきたら文句言うか?」
「大丈夫だよ。それより早く教えて欲しいな。」
「大丈夫ならいいんだけど。じゃ、教えるぞ。まず光属性ってのはな・・・。」
ホーク・ウィン。あの視線は嫉妬?妬み?でもそれよりももっと酷い感じがする。ノースはああいったけど、気をつけとくに越したことはないな。