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『転生したら、魔法の世界で全裸だった件』  作者: 最強の素人


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第一話 まず服をくれ

目が覚めた。


青い空。


白い雲。


見渡す限りの草原。


「……どこや、ここ?」


俺はゆっくり身体を起こした。


最後の記憶は、仕事帰りにコンビニへ寄ったところまでだった。


弁当を買い、店を出て、横断歩道を渡ろうとした。


そこから先が思い出せない。


「……夢か?」


頬をつねった。


痛い。


どうやら夢ではないらしい。


とりあえず立ち上がろうとして、異変に気づいた。


「……ん?」


足元を見た。


裸足だった。


靴がない。


靴下もない。


さらに視線を上げた。


「……は?」


ズボンがない。


パンツもない。


シャツもない。


何もない。


「全裸やないか!!」


俺の叫び声が草原に響き渡った。


慌ててしゃがみ込む。


周囲を見回した。


誰もいない。


それだけは救いだった。


「待て待て待て。どういうことや?」


知らない場所。


知らない草原。


そして全裸。


「誰が脱がしたんや!」


当然、返事はない。


俺は田中。


三十二歳。


独身。


会社員。


どこにでもいる普通の男だ。


少なくとも昨日までは、服を着て生活していた。


「……いや、何でこんなことになっとるんや。」


その時だった。


遠くから馬の蹄の音が聞こえてきた。


顔を上げると、三人の騎士がこちらへ向かっていた。


銀色の鎧。


腰には剣。


背中には大きな盾。


どう見ても、現代日本の警察官ではない。


「……え?」


騎士の一人がこちらを指さした。


「おい! あそこに人がいるぞ!」


助かった。


誰か分からんが、助かった。


俺は立ち上がり、大きく手を振った。


「すみませーん!」


騎士たちが一斉に馬を止めた。


そして、三人とも固まった。


「……何者だ、貴様。」


「いや、それはこっちが聞きたいんですけど。」


「なぜ裸なのだ!」


「それが分からんから困っとるんです!」


騎士たちは顔を見合わせた。


一人が小声で言った。


「隊長。変質者でしょうか。」


「可能性は高い。」


「いや、聞こえとるぞ!」


隊長と呼ばれた男が剣を抜いた。


「動くな!」


「動きません! だから服を貸してください!」


「名前を言え!」


「田中です!」


「タナカ?」


「はい!」


「所属は?」


「株式会社山田商事です!」


三人の騎士が再び顔を見合わせた。


「隊長、聞いたことのない国です。」


「俺もだ。」


「会社や! 国ちゃう!」


隊長が剣を構え直した。


「怪しい奴め。魔法使いか?」


「魔法?」


俺は周囲を見回した。


鎧を着た騎士。


見たことのない景色。


そして、魔法。


まさか。


「……異世界?」


その瞬間、騎士の一人が手をかざした。


「拘束魔法!」


地面から光る縄が飛び出し、俺の身体に巻きついた。


「うわあああ!」


あっという間に身動きが取れなくなった。


「すげえ! 本当に魔法や!」


「おとなしくしろ!」


「ちょっと待って! 俺にも魔法を教えてくれ!」


隊長が眉をひそめた。


「何のために?」


「服を作りたい!」


沈黙。


三人の騎士が、今度は気の毒そうな顔をした。


「……隊長。」


「何だ。」


「この男、相当困っているようです。」


「見れば分かる。」


俺は叫んだ。


「分かっとるなら何か着せてくれ!」


隊長はため息をついた。


「仕方ない。連行するぞ。」


「え? どこに?」


「王都の衛兵詰所だ。」


「服は?」


「そこで考える。」


「せめて布一枚!」


「黙って歩け!」


こうして俺は、異世界に来て最初の五分で逮捕された。


しかも全裸で。


魔王を倒すどころか、パンツすら手に入っていない。


俺の異世界生活は、最悪のスタートを切った。

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