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第4話 挑戦状

特訓開始からちょうど2ヶ月後。

放課後の校庭の隅。

夕陽が校舎を赤く染め、多くの生徒が遠巻きに見守る中、茜は猛田の前に立った。

心臓が激しく鳴っていたが、足はしっかり地面を捉えていた。

2ヶ月間の特訓で鍛えた脚が、今は心の支えになっていた。

猛田は腕を組み、面倒くさそうな顔で茜を見下ろした。

「なんだよ、お前、まだ文句でもあるのか? いじめが気に入らないなら、桃子に直接謝れって言えばいいだろ」

茜は深く息を吸い、はっきりとした声で言った。

「猛田くん。桃子へのいじめ、もうやめて」

「……は?」

猛田の表情が一瞬、呆けたようになった。

周囲の生徒たちがざわつき始め、好奇心の視線が二人に集中した。

茜は一歩も引かず、猛田の目を真正面から見つめた。

「本気でボクシングが強いなら……私と試合をしなさい。

学校のボクシング部同士の特別試合で。負けたら、二度と桃子に近づかないで」

周囲が一瞬、静まり返った。

猛田は目を細め、鼻で笑った。

「はあ? お前みたいな女子が俺に試合を申し込む? ふざけんなよ」

彼は周りの生徒たちを見回しながら、嘲るような笑みを浮かべ、声を大きくした。

「女子ごときが俺に勝つつもりか? リングの上でボコボコにして、泣き叫ぶ姿が目に見えている。

女と試合なんてくだらん。2ヶ月練習しただけで何ができるってんだよ!」

周囲の男子生徒たちから笑い声が漏れた。

「マジかよ」「女子が部長に挑戦状か?」「笑わせるな」という声があちこちから聞こえる。

茜は怯まなかった。

「逃げてるの? 本気で強いなら、受けてみせなさいよ。

桃子をいじめたことを、後悔させてやるから」

猛田の顔が一瞬、歪んだ。

周囲の視線が集中している中で断るわけにもいかず、彼は苛立った様子で吐き捨てた。

「……いいぜ。受けてやるよ。

二日後に体育館でな。覚悟しとけよ、女子。

俺がリングの上で、どんな目に遭わせてやるか、楽しみにしてろ。

女が男に勝てるわけないだろ?」

猛田はそう言い残して、取り巻きを引き連れて去っていった。

残された生徒たちの間で、ざわめきが一気に広がった。

「マジで試合すんのか……」

「女子が男子ボクシング部部長に勝てるわけないだろ」

「でも、なんか熱いな……」

「茜ちゃん、意外と度胸あるじゃん……」

遠くで猛田のいじめを嫌っていた女子たちが、小さく声を交わしていた。

「茜ちゃん……頑張って……」

「見に行こう……絶対に見に行こう……」

茜は深く息を吐き、拳を強く握りしめた。

心臓の鼓動がまだ速い。

でも、後悔はない。

(絶対にあいつをやっつけてやる。

桃子を守るために……私はここまで来たんだ)

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