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学校の最寄り駅に続く道を一人で歩く。
大林くんは結局あれから一言もないまま、授業が終わると帰ってしまった。
久しぶりに一人で駅前を歩いている。
私の背の高さに目をやる人はたまにいるけれど、やっぱり大林くんといる時ほどじゃない。
(あれ、でも私、最近は大林くんといる時にそういうのあんまり気にしていなかったかも…。)
むしろ今の方が、なんだか。
私は痛む胸を押さえながら、ただひたすら考えないように駅まで歩いた。
次の日、学校につくと廊下の向こうに生徒に囲まれた大林くんがいるのを見た。
私は声をかけようとしたけど、何て言っていいか分からなくて話し掛けられなかった。
だから「おはよう」とだけ言うと、大林くんは欠伸をしながら「はよ。」と返した。
「え、たいちゃんそんだけ?」
「眠い。」
大林くん達は教室に入って行った。
私達は多分別れたのだろう。
呆気ない気もするけど、私は大林くんを傷つけた上弁解の言葉も出てこなかったんだから当然かもしれない。
でも、これで目立たない穏やかな日常に戻れるんだ。
私は最初にそう望んでいたはずだ。
「小野田さん、たいちゃんと別れたって本当?」
教室に入ると昨日の女子達が私の机に集まってきた。
「わ、わからないけど多分そうだと思う…。」
「…ごめんね、昨日愛美がきついこと言っちゃって。小野田さんのおかけで、今までたいちゃんに対して消極的だった里美も頑張るようになっててさ、結局感謝してるんだ。」
「そ、そっか…それはよかった!」
顔に笑顔をはりつける。
大林くんの方を見ると、眠たそうにしている大林くんに園田さんが缶コーヒーを渡しているのが見えた。
二人はとても可愛くて、やっぱりお似合いだ。
本当にそう思ってる?
私にとって可愛くて背の低い大林くんはコンプレックスを刺激されて、身長が高いことを余計に意識してしまう、付き合うなんて絶対変、たぶんそういう存在。
そう、周りだって思ってる。
今まで私がそういう言葉に晒されてきた。
私と歩いたら、大林くんまで傷ついて可哀相だ。
昼休みになり、私は弁当箱片手に廊下を歩いていた。
大林くんはもちろんいない。
お昼になって早々こちらには目もくれないで教室を出て行ってしまった。
私はクラスメイトの視線が何だか痛いので教室でごはんを食べるのはあきらめた。
(でも、どこで食べようかな…。裏庭…は、なんだか気分じゃないし…。)
私は足を止めた。
(やっぱり、これを機にクラスの女子と友達になるべきだよね。大林くんといたときはなんだかんだ遠巻きにされてたし……よし。)
ぐるぐる考えた私は、やっぱり教室に引き返すべく来た道を戻ろうとした。
その時、すぐ側の空き教室から声が聞こえてきた。
「ーーー鷲尾、最近小野田とちょくちょく喋ってるよな。」
「あぁ。めいこちゃんね。」
「めいこちゃんだって!」
(わ、私のこと話してる…。)
空き教室にいたのは鷲尾くんと吉岡くんと数人の男子達だった。
鷲尾くんは机の上に腰をかけて、みんなと談笑している。
「鷲尾、もしかして小野田のこと好きなんじゃねーの?」
吉岡くんが面白半分に鷲尾くんの肩を叩いた。
鷲尾くんは笑った。
その顔は私がよく知っている、嫌な笑い方だった。
「いやぁ、ないでしょ。デカすぎ。」
「まぁなー。やっぱ小野田はないよな。」
「俺とめいこちゃん一緒に歩いてたら巨人族じゃん。だいぶ恥ずかしいわ。」
「ははっ!鷲尾ひっでぇ!」
私はいたたまれなくなって少し離れた階段付近に移動して、手すりに寄り掛かった。
男子達が私をそういう対象に見ないことはもう十分知っている。
いつものことだから平気だ。
私が鈍臭いのも。
身長をからかわれるのも。
小さいときからそうだったから、私の心はもうかなり鈍くなってて傷つく隙間もないはずなのだ。
それなのに。
「…ふ…ぅっ…。」
今日は見えるものも聞こえるものも全てが悲しくて、とても我慢できそうにない。
私はそのまま消えてしまいたくてその場を離れようとした。
「…。」
でも、ふと、大林くんに背中を叩かれた気がした。
こういうとき、最近はいつも大林くんが側にいたんだ。
そして、なんて言ったんだっけーーーー。
その瞬間、自分でも驚くくらい体が熱くなった。
私は立ち去ろうとした体を翻し、まだ笑い声のする空き教室に向かって走った。
私は教室のドアをバンッと音がするほど強く開け、目を見開く鷲尾くんの元に向かってズカズカと歩いた。
そして、私は思いっきり鷲尾くんに向かって脚を蹴り上げた。
「えっ!!!??」
男子の驚愕する声が聞こえる。
私の脚は鷲尾くんの首あたりでピタリととまった。
鷲尾くんも他の男子も固まっている。
私は大きく息を吸い込んで、こう言った。
「"正当防衛"ですっ!!!!」
鷲尾くんが持っていたコーヒー牛乳の紙パックが床に落ちる。
私はそのまま逃げるように教室を出た。
「うっ…うぅっ…ふ」
走りながら目を擦る、涙が後から後から伝って止まらない。
こんな時になって、どうして私は私の気持ちに気づくんだろう。




