サプライズ?
連休中
農繁期なんですね
……すみません。
(かぽーん)
――うむ、良い響きだ。
「ちょっと? なんだか愉快な効果音が聞こえるんだけど? いつの間に仕込んだのよ?」
隣の脱衣場からキリンの声がする。
「ついさっきな。 風情あるだろ?」
「そりゃ雰囲気は出てるけどね? 冷静に考えたら、誰もいない風呂場から風呂桶の音がしてたらホラーじゃなかしら?」
「その発想はなかったな。 なんならモブ生やそうか?」
「余計な事しなくていいから」
――まあ、本当の仕込みはこれからだけどな。 そーっと、そーっと……
「先入ってるぞー」
「「「『『はーい』』」」」
――んん? なんか違和感が…… ま、いいか。
……
 ̄l ̄
「えっと……」
この状況は一体何なんだろうか?
岩にもたれてお湯に浸かってると、扉の音とともにキャッキャと入って来る気配が。 なるべくそっちを見ないようにしてたんだけど……
「おにーちゃん」
キリンに呼ばれてそっちを見ると……お尻が並んでた。 何を言ってるのかわからねー……って訳でもないか、そのまんまの意味だしな。 洗い場に立ってこっちにお尻を向けた4人+ふわふわ飛んでる1妖精。
――お尻を見せたいって訳じゃなさそうだよな。 しーちゃんなんかは恥ずかしそうに押さえてるし? えーと、背中?
「どう?」
「いや、どう? って言われてもなあ。 俺にどうしろと?」
「なんかこう……グッとくるとか、ムラムラしちゃうとか」
「キリンは俺をどんな目で見てるんだ?」
「だって、わざわざしーちゃんひん剥いて背中を見たがるぐらいだから、その……背中フェチ?」
「人聞きの悪い言い方するんじゃないぞ? 俺は純粋にしーちゃんの……」
――あれ?
俺はキリンの話し振りを聞いて、みんながしーちゃんの背中の文字を完全にスルーしてる事に気が付いた。 見てないって事は考えられないし、見てたなら俺がどうして背中を見せてくれと言ったか、すぐに分かるはずだ。
――見えてない……のか? これも権限絡みみたいだ。
「しーちゃんの?」
――う、この流れだと……文字の事は言えないし……
「せ、背中が見たかっただけだ。 それより、いつまでそうしてるんだ?」
既にクルやぷーちゃんは飽きてきたのかそわそわしてるし、しーちゃんも訴えるような眼でキリンを見ている。
「だから特殊な性癖を――って線は無さそうね。 みんな、付き合わせちゃってごめんなさいね。 お風呂にしましょ」
 ̄l ̄
 ̄l ̄
――見られてる。 めっちゃ見られてる。
「あうぅ……2人きりの時より恥ずかしいですぅ」
目の前にはしーちゃんの背中。 首筋から上は耳まで真っ赤になってるけど。
「「『じ~~~~~っ』」」
「いや、そこは気を遣って見ないふりするところでしょ? 緊張を煽ってどうするよ?」
――てか、時間かける程しーちゃんが縮こまってしまうな。
「しーちゃん、頭から洗っちゃうから。 無理かもしれないけど気を楽にね」
「は、はいですぅ」
ざばー
お湯を掛け、シャンプーを泡立てて髪に指を通す。 軽く頭皮マッサージ――もちろん気分だけだが――しながら髪を洗っていると、こわばっていたしーちゃんの身体から力が抜け、解れていくのが分かる。
「はわ~。 気持ちいいですぅ」
「どういたしまして。 よっ」
ざばー
「はふぅ」
「んじゃ、長らくお待たせしたけど、ようやくメインイベントかな」
「お願いするですぅ」
「はいよ」
このあと滅茶苦茶ゴシゴシした――
――って滅茶苦茶はしないよ? 丁寧に流したからね。
例の文字、擦ったら落ちるんじゃないかとドキドキしたけど、そんな事もなく――
「しーちゃん――」
洗い終わったからお湯を流すよ――と声を掛けようとしたら……
「ん~」
なぜか両腕を上げてバンザイをするしーちゃん。
――え? 何? 腋の下や脇腹まで洗うの?
鏡に映る顔は……なんだかボ~っとしてるように見える。 最初は胸を隠すようにしてた両手が、途中から脱力してお腹の辺りに下がっちゃってたしな。
「 」
いつの間にか近くに来たしーしーちゃんが教えてくれるんだけど――それって「全部洗ってー」ってこと!?
「そのまま洗っちゃえー」
『むー、あたしもあらってほしーのー!』
――キミたちは何を言っているのかね?
「…………」
つーーーーっと―― 。
「うひひゃう!」
効果はばつぐんだ。
「しーちゃん、しーちゃん。 流し終わったからお湯掛けるよ」
「はれ? え? あ……はいですぅ」
――取り敢えず見なかった事にしよう、そうしよう。
「 」
 ̄l ̄
「んー、なんだかすっごくすっきりしたですぅ」
「そいつはよかった」
湯に浸かり、岩にもたれながらそんな話をする。 右側にはクルが――さっきまで遠慮してた分、思いっきり甘えんぼモードでベッタリくっ付いてくる。 左側はしーちゃん――こっちはみんな一緒だから昨晩のようにはくっ付けないようで、少し離れている。 代わりと言ってはなんだけど、しっかりと手は握って来てたりする。
膝の上にはぷーちゃん――いや、ぷるが収まっている。
『えへー。 ととさまー』
ちゃんと声を出して話せるようになったぷる。 話を聞くと「女神の残滓」の供給が無くとも、神気を吸収して自己増殖出来るようになったらしい。
しーちゃんの強力な神気で核が活性化したのが要因らしいが、種としてより確立されたということだろう。
そして、しーちゃんがきちんと伝えてくれたようで、晴れて俺の娘となった。 「ととさま」呼びは、誰かの入れ知恵かと思ったが、いままで「ごしゅじん」だったからと、ぷるが自分で考えたらしい。
――それにしても……
「クル、ちょっとくっ付き過ぎだから離れなさい」
『えー、だって怒られると思ってたのに、おとーさん優しかったんだもん。 もう少しいいでしょ?』
「わかったから、せめて胸を腕に押し付けるのは止めなさい。 前ほどじゃないけど、まだまだ大きいんだから」
『うれしいくせにー、えへへー』
――まったく……
少し離れたところで、ニヨニヨしながらこっちを見てるキリンを睨む。 「私じゃないわよ」と言いたげに手を左右に振ってるけど。
キリンはキリンで目のやり場に困る状況だ。 以前より大きくなった胸を揺らして見せつけてくる。 本気になった吸魔の色気を甘く見てた。
――ん?
「あ~ん」
キリンの身体が光ったかと思うとみるみる縮んでいく。 どうやら時間切れのようだ。
――それにしても……
周りに広がる海の景色を眺めながらしみじみ思った。
――こいつらを驚かそうとするのはもう止めよう。
脇も→腋の下や脇腹まで に修正。




