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―聖教国―

どこに挟もうか迷った話。 超短いです。

こんなタイミングですみません。

併せて37部分を少し改稿してます。


「――まだか?」

 昼間だというのに窓を分厚いカーテンで閉め切り、薄暗くなった部屋の中で、無駄に装飾された豪奢な聖衣を身に纏った男が呟く。


「た、大陸中から闇魔法の遣い手を集めて手を尽くしておりますが……その……」

 その声に応えるのは肥え太った男。 意識してではないが、早口で捲し立てるような話し方と、忙しなく動かされる手が、相手に不快感を与えていることに気付いていない。


「隷属させようと意識を繋いだ途端、術者も同じ状態に陥ったそうだな」

「そ、そのようで……」


「まさかとは思うが、この期に及んで、素奴の正気を戻そうしている訳ではあるまいな?」

「は?」

「事の顛末――聖女の生死さえ判明すれば、素奴など用済みに決まっておろう!」

「し、しかしあの者は影の中でも随一の穏形の使い手で……代わりはおりませぬ。 今後の活動にも支障が――」


 ドン!

 先の男がテーブルを叩く。


「支障などとっくに出ておるわ! 魔王の仕業として送り付けられるはずの「聖女」の首はどうなった?」

「そ、それは……」

「手ぶらで戻って来たばかりか、傷を癒し、いざ報告を訊こうかという段になって発狂するなど、偶然で済ませられるとは思っておるまい!」

「わ……分かりました。 では薬と……『箱』の使用を――」

「む!? そこまでの状態なのか? まあいい。 好きにしろ!」


「で、肝心の奴の方は変わりないか?」

「は、耗弱状態を維持しております」


「奴の精神はあと少しで陥落するはず。 まさか隷属の首輪の力を撥ね退ける者がいようとは……だからこそ、13人もの巫女の命を犠牲に召喚した聖女をも使い捨てにしたというのに……」


「…………」


「わざわざ「聖女」を『英雄物語に憧れる少女』に仕立てて引き合わせたのだ。 その「聖女」の変わり果てた姿を見れば、いかな奴でも魔王に対する疑念が生じるはず。 そうなれば奴の精神を掌握する事も容易くなる。 前聖女の死さえ、魔王の仕業にすり替わる事だろう」


「…………」


「まさか本当に魔王を封じていたとは思わなかったがな……」


「…………」


「奴の力さえ我が国のモノに出来れば、この大陸全てを人族の、いや我が国の版図に塗り替えられる。 そうする事が、この策を授けて下さったあのお方に唯一報いる方法なのだ!」


「…………」


「……何をしておる? さっさと魔の山の迷宮で何が起こったのか訊き出してこい!」

「は、はいい!」

 慌てて飛び出していく太った男。 その背中を見送った聖衣の男が深いため息を吐く。


「あのお方の顕現さえ果たせれば、神の権能でこの世界などどうとでも改変出来よう。 こちらで満足に【降臨】して差し上げられぬのなら、あのお方に更なる力を付けて頂くしかない。 奴にはその為の礎になって働いてもらわねばならん。 この大陸が死の大陸(神の見捨てた地)のようになるなどという戯けた事を触れ回るような奴など、この世界には不要なのだよ」

 誰も居ない部屋で取りつかれたように話し続ける男。


「この世界を救うのは、あのお方に選ばれた私なのだ!」

 その眼は狂気に彩られていた。


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