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依代

遅くなってすみません。


 ――〈クリエイト〉!


 俺の念じるキーワードにより、目の前の土塊(つちくれ)の山がその姿を変えていく。

 しーちゃんとのドタバタがあった後、その封印を解いた【ゴーレムマスター】の初使用だ。 材料の土塊は、「DP交換」で用意した。


 ―〈熟練度が規定値に到達――スキル【ゴーレムマスター】より【組成変換】が派生しました〉―


 形を変えつつあった土塊が、微かに光を放ったかと思うと、粘土状の物体へと変化する。

 粘土は次第に形を変え、樽のような身体にお椀を伏せたような頭、大きな腕と短い脚を持つ人型へと姿を変え――。


 ―〈熟練度が規定値に到達――スキル【ゴーレムマスター】が【ドールマスター】に進化しました〉―


 ――人型が崩れ落ちる。

 俺はイメージを乗せて、再びキーワードを念じる――〈メイク〉!

 粘土の塊が再びその姿を人型――先ほどの半分ほどの大きさだ――へと変えていく。 同じ量の粘土なのに随分と小さくなった。


 ―〈熟練度が規定値に到達――スキル【組成変換】が【素材錬成】に進化しました〉―


 完成した人型――いや、人形か――が再び光を放つと、その表面が陶器を思わせるやや硬質なものへと変化した。

 目の前にあるのは、高さ120cmぐらいの球体関節人形だ。 すぐに崩れ落ちそうなものだが、ちゃんと自立している。


 ―〈相変わらず、告知神(ボク)使いが荒いですぅ〉―

〈はは……、ごめんごめん。 でもお陰でいい「依代」になりそうじゃないか〉


 そう、この人形(ドール)は俺の身体ではなく、しーちゃんと「お話し」する為の「依代」とするつもりで作ったゴーレム――の成れの果て――だ。

 スキル【降臨】で用いる「依代」は人型に近いほど少ないエネルギーで顕現出来るらしい。


〈じゃあ、さっそくやってみるけど、そっちの準備はいいかい?〉

 ―〈ばっちこーいですぅ!〉―

 ――〈降臨〉!


 目の前の人形がまばゆい光を放ち、三度その形を変える。 大きさがやや大きくなり、人間らしい膨らみを帯びてくる――って、ちょ!

 俺は慌てて目を逸らす。


 程なく光が止んだ。


『見たですぅ?』

〈い、いや、見てない! 見てないよ!〉

『もう大丈夫ですから、こっち見るですぅ』


 顔を上げた俺の眼に映ったのは、プラチナブロンド(・・・・・・・・)の癖っ毛をボブショートにし、やや垂れ気味の碧い(・・)眼に少し厚い唇を尖らせた整った顔立ち、身に纏っているのはギリシャ彫刻で見たような一枚布を巻き付けたような薄紫(・・)の衣装で、風もないのにドレープが揺らめいている。


 ――なぜ色が?

『“神気”が意識に直接投影してるですぅ』


 言われて見れば、色付いているのはしーちゃんの姿だけだ。


〈まあ、取り敢えず座ってよ、立ってられるとなんとなく落ち着かなくてさ〉

『それ、なん……で、すけども、ね……、う、動けないんですぅ~』


 なんですと? ――そういえば、顕現してから微動だにしてなかったな……まてよ?

 俺はしーちゃんに〈ソファに座れ〉と念じてみる。


『うわ! わわわ! なんですぅ!?』


 しーちゃんがソファに座る。

〈右手を上げろ〉で右手が上がる。


〈……しーちゃん?〉

『はいですぅ?』


 右手を上げたままのしーちゃんが答える。


〈神様ならサクッとスキルの制御を奪うとか出来ないんですか?〉

『そのはずだったのに動けないから困ってるんですぅ!!』


 ――むう、神様とは言え、女性を操り人形にしちゃってる時点で色々とヤバイ! なんとか…………あ!!

 俺は人形(しーちゃん)の制御を操作から自律に変更する。


『うひゃっ!』


 人形(しーちゃん)がスクっと立ち、直立不動の姿勢を取る。

 俺は人形に〈しーちゃんの意思に従え〉と念じてみた。


『あ!』


 とたんに、しーちゃんが床にへたり込んだ。


〈だ、大丈夫!?〉

「あ、大丈夫ですぅ。 やっと動けるようになったですぅ」

〈ごめん、まさかこんな事になるとは思わなかった〉

「いいんですぅ。 むしろ今は凄く動きやすくて驚いてるですぅ!」


 ――色々あったが、これでやっと「お話し」が出来そうだ。


〈取り敢えず、飲み物と――うっ、“シュークリーム”かな?〉

「はいですぅ」


 俺はしーちゃんの目力に押された。 これが神の威光というやつか……


     ̄l ̄(__∞__)


 ――まずは、先の「告白騒ぎ」の件だな。 えーと、


「ボクの事だったら気にしなくていいですぅ」

〈え?〉

「むしろ、勘違いした上に色々酷い事言ったボクにこうやって接してくれる事に感謝してるですぅ」

〈で、でも……〉


 しーちゃんはテーブルの上のシュークリームを一つ口に入れる。


「あー! これこれ、これですぅ!! 至福の味ですぅ!」

〈…………〉

「『親友みたいな気安さでつい』って言ってたですぅ。 つまり神だとかそんなの意識しないで、ボクを身近に感じてくれていたってことですぅ」

〈…………〉

「それにですねぇ、勘違いとはいえ、君の「告白」に対してボクは「答え」を出しちゃってますぅ」

〈それって……〉

「つまり君の事が好きになってるのは間違いないんですぅ。 だから君が嫌でなければ、このままでいいとボクは思ってるですぅ。 いずれ本当に『愛してる』って言わせてやるですぅ」

〈しーちゃんが大人だ……〉

「やっと気付いたですぅ?」

〈あはは〉

「ということで、「お供え」もよろしくですぅ!」

〈はいはい〉


 ――それから俺の前世の話や、しーちゃんの仕事の愚痴など、いろいろと話をした――


   ̄l ̄(__∞__)

       ̄l ̄(__∞__)


「そろそろ限界のようですぅ」

〈そっか、また呼ぶよ〉

「待ってるですぅ いーくん(・・・・)


 しーちゃんが眩い光を放ち、光が止むと後に残った人形(ドール)が砂のように崩れてしまった。


 ―〈スキル【光感知】を獲得しました〉―


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