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第9話 レアルカルナシフォン

「ったく。とんだ娘に育ったもんだぜ……」


 ガドリクが不機嫌そうに言った。それから、親父の話なんかするんじゃなかったと、ぶつぶつ言いながら、席に戻っていく。椅子に、どかりと乱暴に座った。


「ふふ……!」


 その様子に気付き、レイセインが笑う。


「けど……。ビレイクお爺ちゃんの話は……、久しぶり……。聞けて良かったわ……」


 そう言われて、一瞬だけガドリクの動きが止まった。


「だったら、また聞かせてやる。ただし。それは、武器以外の話でだからな」

「ふふふ……!」


 怒ったようにぶすっと言ったそれを、嬉しそうに聞いて笑う。


「それから、レイ。さっきも言ったが、シビアナ様には絶対に迷惑かけんなよ?」

「分かってるわ……」


(迷惑はかけない。迷惑はね)


「でも――。今の話……。シビアナには……、聞かせてあげても……、良いんでしょ……?」


(親父さんの言う通り、言い触らす気は毛頭ない。だけど、シビアナは別。そうね、聞く権利があるってとこかしら? エラクツォーネ様は、彼女を引き取って母親になられたお方。今の指輪の話は、そのお方の話だもの。無関係じゃない。むしろ大有りだわ)


 シビアナは王の養女ではあるが、本来は王妃の養女である。結婚する前に引き取られてきた。


(それに、シビアナはエラクツォーネ様の事を、本当に大好きだったようだから。この手の話は、聞きたいはず)


 なら、聞かせてあげたい。


「ああ。そいつは、構わねえ」


(そのために話したってのもあるからな)


「まあ、もう既にご存知かもしれねえが……」

「そうね……」


 その可能性は、確かにあると頷く。


(ふふふ……。でも、それがどうであれ、言質は取ったわ。私は「今の話」と言ったもの。剣の事は、当然その中に含まれてる。


 これで、もし仮にお酒の席で、話題に上げたとしても問題はない。そのついでに酔っぱらって、冗談めかしく頼んでみたとしたら――。これなら、どうかしら? これが切っ掛けとなった場合は、迷惑となるのかしら? もちろん、そんな事はないわ、成り行きだもの。ね、親父さん? くふふふ……)


 迷惑かどうかは、結局のところ掛けられた側が判断するものだろう。だが、彼女は、都合よく詭弁を弄して解釈し、勝手に明日の計画を思い描いていた。


「さ……。イージャン……」


 それから、レイセインは少し腰を屈めた。自分たちの話を聞いていた彼を、引っ張り起こそうと手を差し出す。


「ああ。悪い――」


 その手を取ろうとしたが、自分の手に自由がない事に気付いた。


「すまない、ソティシャ。降りてくれるか?」


 両腕で胸に抱きかかえているのだ。そうしてくれないと、レイセインの手を上手く掴めない。

 

「…………」


 しかし、彼女からの返事はなかった。黙って目を瞑り、彼の胸に頭を当てたまま、うずくまっている。


「ソティシャ?」

「…………」

「お、おい。ソティシャ?」

「んー……。なあにー……」


 やっと返事が返ってきた。だが、その返事は気だるげな声だった。


「いや、すまないんだが、降りて――」

「ええー。やだあ……」

「やだ?」


 降りたくない理由が分からない。その答えに意表を突かれ、ぽかんとする。


「な、何故だ?」

「だって、居心地、超良いんだもん。私、このままここで、お昼寝したい……」

 

 ソティシャは、彼の胸の中に抱かれていると、とても落ち着く。安心できた。おかげで、心地よい眠気も感じるほどだ。


「お昼寝……」


(いや、そういう訳にはいかないんだが……。参ったな……)


 こうなると、イージャンにはどうしようもない。他に手立てが浮かばなかった。この男は、こういう男なのである。

 

「ふふ……!」


 レイセインが、微笑んで目を細める。


(やれやれ、甘えんぼさんだわね)


「いいわ……。取り敢えず……。椅子ごと……、持ち上げてあげる……」

「え? このままで持ち上げるのか?」

「ん……」

「いや、それは――」


 イージャンは、若干気恥ずかしくなった。椅子に座って転んだまま、それを人の手を借りて戻される。自分で立ち上がればいいだけなのに、それをわざわざ。だから、断ろうとするが、


「お願いしまあーす」


 自分を遮り、ソティシャがふざけた様子で答える。これで、選択肢は一つ。他に考えは浮かばなかった。そう。やはりこの男は、こういう男なのである。


 そして、レイセインに視線を向けると、彼女も諦めなさいと口許が緩む。彼は渋い顔をしたが、それに従うしかないと力を抜き、頭を背もたれへとくっ付け体を委ねた。


「じゃ、じゃあ、レイ。頼む……」

「ふふ……! 任されたわ……」


 その潔さに敬礼。レイセインは、そんな気持ちになりながら、彼の後ろに回り腰を下ろす。椅子の背もたれに両手を掛けた。


「わ、悪いな」

「いいのよ……。元は、私のせいだし……。――よっと……」


 イージャンに答ると、掛け声と共に彼の座った椅子を持ち上げた。徐々に戻っていくが、それは彼の思っていた以上にゆっくり。理由は、もちろん、ソティシャのため。彼女が堪能できる時間を、わざと増やすためだった。


「ふっ……」


(ソティシャの奴。甘えやがって……。しかし、妙に変な光景だぜ……)


 ガドリクは苦笑い。彼の方から見れば、イージャンがソティシャを抱え浮き上がってくる。それが、どこか可笑しかった。


 そんなガドリクに見守られる中。ソティシャは、その胸の中で昔の事を思い出していた。


「…………」


(あったかい……。いっつもこうやって、ジャン兄ちゃんに助けられてたなあ……)


 彼女は、穏やかな表情で目を瞑る。そして、その光景を浮かべていった。そう。あれは、自分が高い木に登って降りられなくなった時――。


「ごわ゛い゛よ゛お゛ー! ジャン兄ちゃあああん!」

「ソティシャー!」


 それから、馬車にひかれそうになった時――。


「ぎゃあああ!? 助けて、ジャン兄ちゃああああん!!」

「ソティシャ!!」


 そして、川で溺れて流された時――。


「あばばばば――! 溺れる! 溺れるよおお! ジャン兄ちゃあああん! ごばばば――!」

「ソティシャアアアア!!」


(私が危なくなると、すぐにその声が聞こえた。いつも必ずどこからか、さっそうと現れるの。そして、この胸に抱きしめて助けてくれたんだっけ……)


 ソティシャは、結構色々と危険な目に遭っていた。


(ふふっ。この胸の中が落ち着くは、きっとそのせいよ)


 彼女は、にこにこと微笑むと見上げて、バツの悪そうなその顔をじっと見詰める。


「…………」


(ありがとう、ジャン兄ちゃん……)


 そう思いながら、顔を戻し目を閉じて丸くなる。うずくまった。そして、浮いていた椅子の前脚が二本。音もなしに床に立った。


「はい、着いたわ……。これで、終わりよ……」


(恥ずかしい思いはね)


「うっ。すまない……」

「ふふ……」


 レイセインは、照れ臭そうなイージャンを見て、ソティシャが座っていた椅子へと向かう。転がっているその椅子を持って戻ってきた。そして、彼の隣へ置く。さて、これで準備完了。なのだが、


「…………」


(うーん。素直に降りてくれるだろうか)


 イージャンは、困ってしまう。しかし、それはすぐに杞憂で終わった。


「じゃ、降りるねー! ありがと、ジャン兄ちゃん!」

「え?」


 ソティシャがあっけらかんと言う。それにも意表を突かれ、ぽかんとする。


「ほら。立って、立って」

「あ、ああ」


 言われるがままに立ち上がり、体を傾けて彼女の足を床に着けた。すると、渋ってた割には簡単に離れた。彼からすれば、何だか拍子抜けだ。


 しかし、ソティシャはもう満足していた。そして、レイセインに椅子を戻してもらった礼を言うと、その隣の椅子に笑顔でぴょこんと座ったのだった。


「ふふふふ!」


 やはり、彼女は成長している。



**********



 ソティシャも席に戻り、レイセインも自分の席に戻った。改めて、イージャンの隣に座る。そして、ガドリクに顔を向けた。


「…………」


(さて――。皆が席に戻ったところで、話の続きを聞かせてもらいましょうか)


 ビレイクが、王妃の結婚指輪を作ったいう事実が、衝撃過ぎた。それから、剣のせいで興奮していたため、すっかり遅れてしまったが、彼女にはもう一つ聞きたい事がある。これは、ソティシャとイージャンにも言える事だろう。


「それで、親父さん……」

「ん? 何だよ?」

「指輪を作ったのは……。ビレイクお爺ちゃんって……、分かったけど……」


 そこまで言うと、レイセインの目は鋭くなった。


「宝石は……。どんなのだったの……?」


 ビレイクが作ったのは、あくまで結婚指輪、その本体。宝石は別だ。ただ、彼女は、その答えに見当はついている。しかし、それでも確証はないので尋ねた。


「あ。そっか。まだそれを聞いてなかったね」


 そうだ。確かに聞いていなかったな、とイージャンもソティシャと一緒に思い出す。そして、三人の興味津々の顔が、その答えをとガドリクに向けられた。


「そういやあ、そっちをまだ話してなかったな」


 自分もすっかり忘れていたと肩を掻く。


(まあ、その原因は、主にお前のせいなんだがな、レイ……)


 内心、そう付け足しながら、その顔を半目で睨む。


「…………」


(しかし、その顔――)


「そうだ。お前の考えている通りだぜ。女王の御髪だった」


 レイセインの表情で、勘付いていると気付いた。


「そ……」


(やっぱりね)


 女王の御髪と結婚指輪。ガドリクが、この二つの言葉を一緒に呟いていたのが、話の発端。これを思い出し、察しがついていた。


「女王の御髪!?」

「え!? そうなの、父さん!?」

「ああ、そうだぜ」


 彼女とは違い、意外だったかのように声を上げるイージャンとソティシャ。それに悠然と答えてから、ガドリクは自分の腕を胸の前で組む。何かを思い浮かべてか視線を上げ、困ったように顔を顰めた。


「はあ……。あん時もなあー。驚いたのなんのって……」


 疲れた様に呆れた様に、溜息を吐いてから言う。


「俺は丁度、店番しててよ。で、不意に暖簾掻き分けて入って来たのが、あの陛下だったんだからな……」

『――ん?』


 変な言葉が聞こえてきたと、ソティシャたち三人は同時にそう思った。


「まあ、イージャンは知ってるんだろうが……。とんでもねえよ。今でも、思い出しただけで冷や汗もんだ。手も汗ばんできやがる……」


 掌を見ながら、何度か握りしめる。それから、その手を膝の上に置いた。


「怒気のような畏れを纏い、胸の前で腕を組んだ、あの威風堂々とした立ち姿――。店が丸ごと吹き飛ばされそうな迫力があったぜ。体には重圧がのし掛かって、立つのも辛く感じたしよ。まさに、この国・・・を治めるに相応しい王者の風格って奴だったな。それをまざまざと見せつけられたぜ……」


(あと、顔がすっげえ怖かったよなあ……。ありゃあ、人を睨み殺せる。そうなっても不思議じゃねえ。ソティシャが間近で見たら、絶対に泣くな。間違いねえぜ……)


 ガドリクは、これも言いたかったが、結婚式で見る事になる。楽しみにしているのだから、余計な恐怖を与えないでおこうと控えた。


『…………』


 イージャンたち三人は、さっきから黙って話を聞いている。最初に何を言ったか分かり、恐ろしくなって黙るしかなかったのだ。おかげで、その後の話も耳に入って来ない。だが、


「と、父さん……。さっき、何て……?」


 それでも聞き間違いかもしれないと、ソティシャが二人より先に、おずおずとだが意を決して尋ねた。


「ん? どうした、お前ら――? って、ああ、そうか――」


 自分の思っていた反応を、全く示していない。これで、肝心なところ抜かしていたと気付く。


「だから、親父の剣とは逆だよ逆。こっちはな、陛下が直々に女王の御髪を持って来られたんだよ。このうちにな」

「っ!?」

「う!?」

「えええええええ!?」

 

 堰を切ったかのように、ソティシャの驚いた声が室内に響き、レイセインとイージャンの詰まった声はかき消された。


「ほ、本当に、陛下がお出でになった事があるんですか!?」


 イージャンが、反射的にすぐに聞き直す。ガドリクは、自分も未だに信じられないんだと、表情を渋くして答えた。


「まあな」

「なっ――!?」


 愕然と瞠目する。


「ホ、ホントに!? ホントにここへ!? こここの家に!?」


 ちゃんと確かめたいと気が急くあまり、ソティシャは早口になって舌足らずで捲し立てた。


「ああ。ホントだぜ」

「ええええ!?」


 そう言われても、なかなか納得できなかった。何せ、このトゥアール王国の王なのだ。そんな人が、シビアナやイージャンとの関係以前に、自分の祖父へ会いに来ていた。それが、どうしても信じられない。


「ホ、ホントに!? ホントにホント!?」


 もう一度聞き直す。


「ああ。ホントだ。さっき指輪を渡したとこ、見たって言ったろ? それがここだったんだよ……」


 重々しく呟くその態度に、これ以上聞いても答えは同じだと分かった。本当にこの国の王が、自分の家に来たのだ。


「は、はええええー……」


 最早、自分が信じられるかどうかなど関係ない。その事実を受け入れるしかなかった。ソティシャとそしてイージャンも一緒に、唖然と口を開いてそのまま静かになる。それから、そこにレイセインの溜息が聞こえてきた。


「ふー……」


(まあ、言われてみれば、そうなるのかしら。宝石を指輪に嵌めるのを、ここでやったんでしょうね……。でも、そのために陛下の足を運ばせるなんて……)


「…………」


(ビレイクお爺ちゃん、ホントに凄いわ。とんでもない人だったのね……)


 彼女は改めて、その事実の大きさを受け止めた。そして、もしかすると、腕を認められた以上の関係だったのかもしれない。そう思いながら、もう一度溜息を吐いた。


「それで、陛下が持って来られた女王の御髪なんだが――。おい、お前ら。話、聞けるか?」


 三人の気の抜けたような様子を見て、大丈夫かとガドリクが尋ねた。すると、イージャンがはっとして姿勢を正す。


「は、はい。大丈夫です……」


 これで、残りの二人も我に返った。


「う、うん。聞けるよ……」

「ん……」


 同じく姿勢を正す。そして、気持ちを整える様に、三人とも息を吐いた。


「じゃあ、話を続けるぜ。で、その女王の御髪なんだがよ――。流石は陛下。いや、マジで凄い代物だった」

「ん? 凄い代物?」


 ソティシャが首を傾げる。


(どういう事? 色の他に何かあるのかな?) 

 

 そう不思議がるのも当たり前。彼女は、幼いのもあり、あまり宝石について詳しくない。光る宝石というものを知らないのだ。しかし、それなのに、ガドリクが改めて凄い代物と言っている。だから、違和感があった。


「すっごい大きかったの?」


 よく分からないけどと、ソティシャが思い付くまま口に出す。


「いや、そうじゃねえ。大きさは――。俺の親指の爪くらいだったか」


 ガドリクは、自分のその親指を見ながら摩る。


「じゃあ、どういう意味?」


 その言葉の通りだと、イージャンも視線を向ける。彼もまた良く分からない。というより、まだ思い出せていない。ただし、レイセインは違った。


「…………」


(ま、あれの事よね)


 彼女は既に察しを付けれていた。そんな三人の視線を受けて、ガドリクがさっきの様に片肘をついて前のめりになる。それから、同じく声を抑えて言った。


「いいか? 女王の御髪ってのは色が変わる。だが、それは大抵二種類だ。三種類となると稀になる。四種類となると、俺は聞いた事ねえ。だから、三種類に色が変わるってのが最上となる」


 話は同じ。三人が頷く。


「だが、それはあくまで出回っている物の話だ。それだけに過ぎねえ」

「出回っている物の話?」


 ソティシャが聞き返す。


「そうだ。つまり、出回っていない奴があるんだよ。それも、とびきりのがな。陛下がお持ちなったのはそれだ」

(あ……)


 イージャンも、ここまで言われて、それがどういった物なのか気付く。


 レアルカルナシフォン。自ら光り輝く女王の御髪。それは、一緒に商館へ行ったレイセインが見当をつけた物と同じ宝石だった。


「陛下が持って来られたのは、色が三種類に変化するとか、そんなもんじゃねえ」


 ソティシャがごくりと喉を鳴らす。そして、ガドリクがその正体を明かした。


「あれはな――。色が六種類に変化する、王家の秘宝って奴だった」

『六種類っ!!?』


 三人の驚いた声が重なった。イージャンとレイセインは、自分たちが思っていた物と違う。意表を突かれた分、その驚きは大きい。だが、二人は間違ってなどいなかった。


「しかも、それだけじゃねえ。その宝石はな――、光ってやがったんだよ……」

『っ!?』


 自ら光り輝く女王の御髪――! やはり合っていたのかと二人は得心する。だが、その事実は霞む。それ以上に戦慄していた。


 レアルカルナシフォンは、光るだけでなく色の変化が六種類にもなるのだ。三種類で一万枚。四種類があったとしたら、三万枚以上。何故、値段がつけられないのか、その理由が分かった。


 しかし、理由はこれだけでは止まらない。二人はさらに戦慄する事になる。


「えええ、嘘!? 宝石って光るの、父さん!? れいろー石みたいに!?」

「そうだ。宝石自体が光るのもある」


 宝石は知らなかったが、玲瓏石は実際に光っている所を、ソティシャは見た事がある。


「それから、ソティシャ」

「え?」

「ただ光っているってだけでも、その値段は普通のと比べて、桁違いだからな? さっきの親父の剣が光るなら、それが十本は買える。覚えとけ」

「えええええ!?」


 光るから、その宝石の値段は上がる。それは先程の商館で分かった。だが、その差がどの程度あるか。それを知らないのはイージャンも同じ。


(そ、そんなに高くなるのか!?) 


 さらに追い打ちを掛かけられ、愕然とする。そして、


(有り得ないわ! 何なのよ、その宝石は! どこまでいけば気が済むの!?) 

 

 この事実を知らなかったレイセインもまた、同様に愕然としていた。


「これが、陛下のお持ちになった女王の御髪だ」


 ガドリクは、前のめりだった姿勢を戻す。それから胸の前で腕を組んだ。


「六種類に色が変化し、その色が光を放ち輝く。その輝きは、どんな宝石よりも綺麗だと、絶対の確信が持てちまう。どの色でもな。そんな宝石だったぜ……」


 感服、感嘆、感銘、そして諦観。そんな思いを込め、唸るように断言する。


「もお~! 凄すぎだよおお~! 頭痛い~!」


 ソティシャは力尽き、こてんと卓の上に頭を乗せた。四種類に変化するものは、もしかしたら鷲金貨三万枚もする。なら、六種類となるとどこまで値が上がるのか。


 加えて、宝石自体が光っていると更に高くなると言うのだ。この宝石は、もう彼女の想像を超えて遥か彼方にあった。


「と、とんでもないわ……」

 

 レイセインは、背もたれに体を預けて、仰け反っていく。


(やれやれ、ホントにとんでもない。ホントにとんでもない宝石だわ……)


「ふーー……」


 そして、イージャンは項垂れていった。それを止める様に、卓へ肘を突き眉間に手を当て、深い溜息を吐く。


「まあ……。そうなっちまうか……」


 ガドリクは、三人の有様を眺めてそう呟く。それから、イージャンたちが立ち直るまで、しばしの時間を要したのであった。

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