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EX-02.勇者ジョーのダンジョン攻略 その2

「はあっ、はあっ……。ひどい目にあったぜ」


 スミスが呼吸を整えながら毒づいた。中盤まで進んだダンジョン攻略だが、今は入り口付近まで戻ってきている。


「ヴェルデ!治療してくれ」

「はい……」

「どうやら、賭けは私の勝ちのようですね」


 ジャスミンが言った。


「ああ?まだこれからだろうが!」

「この有様でボスまでたどり着いて、あまつさえ倒せるなどと、本気でお考えですか?」

「それ、はっ……、こいつらが弱すぎたからだろうが!騙しやがって!」


「弱すぎるとは俺たちのことか?聞き捨てならんな」

「本当のことだろうが!上級も目前のパーティだっていうから鞍替えしたのによ、実際には中級すら危ういレベルじゃねえか」

「何だと?確かに今日はちょっとばかり調子が悪かったが、いつもは……」


「そうですね。いつもは、アレクがいましたから」

「アレクだと?魔法も使えない無能が何の関係がある?」

「アレクがパーティにいるだけで皆さんの力は底上げされていたんですよ。解散しているとき、魔法の自主練などしていればすぐに気付くはずですが」


 そんなもん、俺もメグもしたことはない。だって俺は選ばれし勇者のはずだろ?これまでのダンジョンも楽勝だった。自主練など必要なかった。


「あいつは魔法が使えないんだ!そんなことできるはずが……」

「使えます。パーティでは使えないだけです。それに、パーティメンバーに対して自動発動するスキルは機能していました」

「スキルだと?魔法とは違うっていうのか?」

「本当に鍛錬も学びもしていないのですね。魔法はスキルの一つでしかありません。もっとも、アレクと違ってあなたには火炎魔法以外のスキルはないようですが」

「そんなこと……!」


 言いかけて、ふと地響きを感じた。それはだんだんと大きくなって、どうやらこちらに近づいてきている。

 中間地点にいるはずの中ボス、フロックゴートだ。すごい勢いで突っ込んでくる。


「何でこんなとこまで中ボスがくるの~?☆」

「知らねえよ!こんな半端な攻略になったことねえからな!」

「おいスミス!早く前に出ろ!」

「まだケガが、ああっ、くそっ!」


 入口の近くだと思って完全に油断していた。迎撃の準備ができていない。

 とりあえずスミスを前に出してフロックゴートの突進を止めさせる。


「ぐわあっ!」


 だが止まらなかった。スミスは吹き飛ばされ、フロックゴートは魔法の準備をしていた俺の眼前まで迫っていた。これは俺、死んだかもしれない。


「水魔法【大】激流」


 ジャスミンの放った強烈な水流が俺の背後からフロックゴートに撃ち込まれた。


「今のうちに早く脱出しなさい!」


 言われるがまま、俺たちはダンジョン脱出することにした。



 攻略は失敗した。

 その後、不本意ながら俺たちはスミスを抱えてギルドに戻ってきた。

 先ほどジャスミンの魔法による治療が終わり、大したケガではなかったと告げられたところだ。


 そしてもう一つ。彼女は今回限りでパーティを抜けるという。

 俺たちの掛けていたテーブルの近くには、それを聞きつけた野次馬達が集まってきている。

 だがそんなもんは無視だ。今回のダンジョン攻略では気に入らないことがある。


「なぜだ?ジャスミン。それに君が攻略に協力していればこんなことにはならなかったんじゃないのか?」

「同じことです。私でも魔法の発動にはクールタイムがありますから連発はできません。このパーティでは前線が維持できなかったでしょう」

「でもあの威力の魔法なら!」

「成功率97%とはいえ、あの前衛では不発になった瞬間に崩壊するでしょうね。スミスはそれほど悪くない前衛でした。ですが、比較対象が強すぎます。これまではアレクがパーティの強化、前線の維持、敵の削り、一人でこれだけの役割を完璧にこなしてきたのですよ?このパーティは、彼におんぶにだっこでここまで来たと言っても大げさではありません。それなのに、そんな彼を無能呼ばわりして追放してしまったのは誰でしょうか?」

「う、うるさいんだよ!け、結局とどめをさすには俺たちの魔法が必要だってことだろうが!」

「アレクは一人なら誰にも負けません。パーティでの彼は足止めと削りという役割に徹していただけで、やろうと思えば魔法無しでも一人でダンジョンを攻略できたでしょうね」


 くそ、こいつ、いつもは大人しいのに、今日はアレクアレクとうるさい奴だ。ちょっと黙らせてやる。


「アレクアレクって、そんなにアレクが好きかよ!?」

「ええ。お慕い申し上げております」

「っ……!」


 こいつは、いきなり何を言ってるんだ?

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