EX-01.勇者ジョーのダンジョン攻略
やっと邪魔者がいなくなった。
これから俺、ジョー・ダイエンの率いる勇者パーティの快進撃が始まるのだ。
発動率95%、中クラス火炎魔法を操る勇者、俺。ジョー・ダイエン!
発動率92%、大クラス風魔法使いの我が妹。メグ・ダイエン!
この間、発動率を落とせば極大魔法も使えるようになったらしい。さすがは勇者の妹だ。
発動率97%、極大クラスの水魔法の使い手。聖女ジャスミン!
勇者パーティに相応しい才能と美貌を持つ、聖女と呼ぶにふさわしい女性だ。
それに新入りの発動率90%の挑発使いの戦士、スミス!
あいつは大地魔法も使えるらしいから、アレクとかいう魔法の使えないゴミより遥かに有望だ。
……とはいえ、スミスと組むのは初めてだ。ゴミが有能に変わったからといえ、いきなり高難度に挑むほど俺は愚かではないのだ。
「さて、じゃあ記念すべき俺たちの新パーティ、ここが最初に攻略するダンジョンだ」
「ンだよジョー。こんな湿気た洞窟がか?楽勝すぎだろ」
初級冒険者の登竜門、フロックトンネルだ。ここは魔獣の数が多くて、個の力よりパーティの連携力が試されるダンジョンだ。
だが、初級冒険者の登竜門ということはだ。初級者でも頑張れば攻略出来る程度のダンジョンという意味だ。
だから俺のレベルなら何の問題もない。
以前はあのゴミを連れて攻略したダンジョンもあるしな。
そんなことよりもここは、大量に湧いてくる魔獣を魔法でまとめて焼き払うのがサイコーにたまらんのだ。
「ダンジョン攻略の前に私から一つ、お話があります」
ジャスミンか。いつもは大人しくついてくるのにどうしたんだ?
「今日のダンジョン攻略、私は手を出しません。危なそうならもちろん援護しますが、基本はこちらの彼女にお任せしますので」
「ヴェルデです。えっと、スミスの元パーティメンバーです」
「何だと?そんな話、俺は聞いてないぞ」
そう不審に思っていると、スミスが脇を小突いてきて耳打ちしてきた。
「ジャスミンちゃんと賭けをしてんだよ。俺とヴェルデか、ジャスミンちゃんとあの無能、どっちが優秀かってな」
「そういう話をリーダーを差し置いて勝手にするな!」
「ああ、悪かったよ。今後は先に相談さしてもらうって。だがヴェルデの評判は聞いたことあるだろ?」
「え?あー、もちろん、ある。だが、ジャスミンの代わりが務まるのか?」
「おいおい、あいつは水魔法と風魔法の両方を使えるんだぜ?あの女がどの程度できるかは知らないが水魔法だけなんだろ?キャリアも長えし、問題ねえさ」
「あ☆ヴェルデさんって、もしかしてあの嵐のヴェルデ?」
「はい、一応……。」
「おー☆やっぱり!最近は見ないけど結構有名だったよね?あたしはメグ!よろしくね☆」
「ええ。よろしくお願いします」
ああ、嵐のヴェルデ!それなら聞いたことがあるぞ。たしか上級冒険者じゃないか。それならジャスミンと同格、あるいはそれ以上か。
「よろしく頼む。だが、今後はちゃんと事前にリーダーの俺に相談してくれよ。では、行こうか」
「おい、後衛ども!火力足りてねえぞ!」
「前衛のてめえが足止めしきれてねえからだろ!魔法に集中できねえんだよ!」
フロックトンネル、中盤に差し掛かったあたりで戦闘になった。魔獣の群れがとめどなく突っ込んでくる。このぐらいの数の魔獣、いつもならアレクを盾にして俺たちの魔法でドカン!これで終わってるはずなんだが今日は少しもたついている。
ああ、イライラする。何で俺が中衛みたいな面倒くさいポジションやらされてるんだ。
スミスの野郎、挑発魔法も使ってるくせに取りこぼしが多すぎる。これじゃ魔法を使う暇がねえ。しかも敵の削りも全然できていない。
全く、スミスもあれだけ粋がっていたわりには口だけだな。あの無能のアレクでも魔法無しで足止めくらいは出来ていたぞ?
「ちっ、ハズレパーティかよ。おい、ヴェルデ!手え抜いてんなよ!」
「でも、数が、多すぎて……」
「くそが!じゃあ、メグ!てめえがもっと火力だせ!」
「んー。今日なんか調子悪いみたい☆威力も範囲もいつもより全然出ないぞ☆」
「はあ?どいつもこいつもふざけんな!何のために俺が前で体張ってんだよ!じゃあいったん後退するぞ!」
「なぜお前が命令してるんだ!リーダーは俺だ!」
「じゃあさっさと指示しろよ!」
「うるさい!お前こそ大地魔法も使えるんだろうが!一度ぐらい完璧に抑えてみろよ!」
「人の奥の手をペラペラ喋んじゃねえよ!ちっ、もういい、わかった、やってやるから絶対に一掃しろよ!」
文句を言う余裕もなくなってきたらしい。
そうやって大人しくリーダーに従っていればいいんだ。
そうすればお望み通り、俺の火炎魔法で一掃してやる。
「大地魔法【中】岩壁!」
スミスの周辺の地面がせり上がり、こちらへの進路をふさいだ。
全く、やればできるじゃないか。
「よし!じゃあ見せてやる!火炎魔法【中】炎上!」
俺の放った火炎がスミスの周囲にいる敵を襲い、焼き尽くした。そのはずだった。
「一匹も倒せてねえぞ!何やってる!」
あれ?おかしいな。いつも通りに魔法を使ったんだが。魔獣たちは少しひるんだ程度で、スミスを取り巻く状況は何も変わっていない。
「風魔法【大】烈風☆」
よしメグ!ナイスだ!風の刃が魔獣を切り裂く。
だが、こちらもスミスの近くにいた魔獣を数匹仕留めたに過ぎなかった。兄弟揃って不調とは、今日は厄日だな。
「水魔法【大】、風魔法【大】嵐撃!」
そうだ!ヴェルデが控えていた。よし、これなら何とかなる!しかし、魔獣の勢いは止まらない。
「すみません、不発です……」
こんな時に!そういえば彼女の成功率を聞いていなかった。
この状況ならと思ってジャスミンの方を見たが、彼女はヴェルデの更に後方でじっと静観している。
「くそっ、もう無理だ!後退するぞ!」
スミスがたまらず音を上げた。情けない前衛だな。
まあ俺たち後衛も調子が悪かったし、今回は許してやる。
仕方ない。一度体制を立て直そう。




