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事の顛末(裏)2

長くなりすぎました。

本日、2回目更新



「そう、あなたの先輩であり国王である私、朝倉涼葉様である。頭が高いよっ!朽野君!!」


嫌味をスル―して、無い胸を張る涼葉。その姿に朽野は変わってないなぁ、と苦笑すると共にこんなのが国王で大丈夫か?と心配になる。

百合に視線を向けると小さく苦笑している。

(まぁ、あの動乱でガタガタになった神奈川を日本有数の国家にしたんだから王としての資質は問題ないんだろうけど……)


「へいへい、国王閣下。ばんざーい」

ともあれ、棒読みではあるが、敬意を表してみる。

「そう!私は偉いの!なのに、他の円卓のみんなは私を馬鹿にして。紫藤なんて明らかに王位狙ってるわよ。寝首かく気満々。それに賛同する馬鹿もいるしさぁ」

微妙に目の前の王様は酒臭い。

どうやら、朽野が目覚めるまでに飲んでいたらしい。

なんというか、その姿は仕事の愚痴をいう居酒屋のOLのようである。

まぁ、その愚痴の内容が、部下がその首を狙っているとか、不穏極まりないが……


(しかし、紫藤、か)


懐かしい名前だ。神奈川において彼の名前を知らない有名人ではあるが、朽野にとっては共に戦った仲間であり、同時に油断ならない人物だった。

神奈川西部において力を持つ『辺境伯』。元々、『円卓』とは別組織を率いており、途中で『円卓』と合流を果たした男。

転生者であり、前世では人を率いていただけあってカリスマ性のある男であり、それと同時に野心家という側面を持っている。


「昔からの仲間の円卓のメンバーも、リーダーと認めてくれてるけどさっ。なんか気安いのよね。王よ!私はっ、もっと敬ってくれても……」

「じゃあ、他人行儀のほうがいいのか?」

「それも、困るけどさ」

「どっちなんだよ。で?わざわざ、国王自らこんな田舎に何の用だ?まさか、こんな愚痴を言いに来た訳じゃないだろう?」

「ん、君に会いに来たに決まっているじゃない」

「はぁ?今の俺は一介の冒険者だぞ?そんなのに……」

「そう、かつて運営を暗殺した関東動乱最大の功績者。神奈川の中枢、円卓の|空白の席(ミッシング13)に座る権利を持つ程度の冒険者さん、ですよねー?」


その言葉に、息が詰まる。


そうかつて、朽野は世界をこのように書き換えた大崩壊カタストロフィを起こし、そして救世軍を率いて民を弾圧したとされる運営を暗殺している。


その事実を知る者は彼を英雄視することが多い。そのことに物凄く吐き気を覚える。

それ自体が朽野伸也最大の過ち他ならないというのに


「他にも、神奈川の最大の謎ともいえる緑の騎士でもあり、神奈川と東京の裏の同盟関係を構築した立役者の一人。うん、朽野君、君、上手くやれば王にもなれたんじゃないかな?」

「いや、王様ってモテそうだけど、女の子と遊ぶ暇なさそうじゃん」


確かに当時の情勢を考えれば王様になろうと思えばなれたとは思う。


神奈川と東京。表向きは敵対しているが裏では違う。

東京と神奈川をつなげたのが朽野と朝倉、そして、東京のトップである水城、彼らの人間関係が裏の同盟を作るのに一役買っている。


神奈川は元の世界の帰還を望み、東京はこの世界での繁栄を望んでいる。

主張の違いからいがみ合っているが、実際のところ、水城と朽野、朝倉、そして月歌。この4人は同じパーティーのメンバーだったのだ。

4人の当初の目的は、救世軍を打倒し、関東圏を安定させる、ということだった。


朝倉は、神奈川を統一し、水城は東京を統一。そして、それぞれの国は、わざと違う主張を掲げそれぞれの主張の受け皿になった。


神奈川と東京が表面上、いがみ合っているのも意味がある。

神奈川、東京共に大崩壊後、いち早く立ち直った大国である。

この2か国が同盟関係にあるとなれば、各国の緊張を生み出すことになる。

関東圏だけならいい。

しかし、東北には旧日本政府が支配する宮城県や、関西地方のみならず全国に経済的な面で影響力を持つ大阪を中心とした連合国。そして、食料面で全国を支える北海道など、大国と呼ばれる国を無駄に刺激することとなる。


だから、多少の緊張があっても軍事的な行動に出ることは無かった。

しかし……


「そう、その同盟関係だ。なんで東京が神奈川でテロを起こそうとする?小競り合いならまだわかる。だけど……」

「ええ、今回はそんなレベルを超えている。朽野君が止めてくれたから良かったけど、あのままテロが成功してたら神奈川は致命的なダメージを追うことになっていた」


今回の事件は、帰らずの森の消失。その程度の事件ではない。

もし、バグの発生する範囲がもっと広く、厚木そのものを巻き込んだ場合、事態は最悪のものとなる。


神奈川は西と東を結ぶ要所の一つであり、それと共に、西側のモンスターを東側に侵入させない為の結界の要でもある。

ここが崩されると定期的に起きるモンスターの暴走はそのまま東側に雪崩れ込んでくる。

そうなれば、神奈川はどれだけのダメージを追うか、考えるだけで恐ろしくなる。


「無論、東京には連絡いれたわ。けど、反応無し。東京の中枢と連絡が取れないどころか東京に身を潜める連絡員とさえ連絡が取れなくなっている。完全に神奈川と東京を繋ぐネットワークは壊滅したわ」

事の重大さに、朽野はごくり、と唾を飲む。

緊張した面持ちで話を聞いている朽野とは対照的に、その横で話を聞いている月歌はつまらなそうに聞いている。その顔はどこか苛立っているようにも見える。

どうしたのか、と疑問が浮かぶがそれよりも、目の前の話のほうが優先度が高いと判断し顔を朝倉に向ける。


「水城は一体何を考えている?」

水城の性格は朽野が一番理解している。

同じパーティーで唯一の同性で、東京で一緒に反乱軍を率いて戦った。その後、朽野は神奈川に戦いの場を移したが、それでも、朽野が水城の性格をはき違えることはまずない。

朽野の中の水城光輝は、態度こそでかいが結構周りの眼を気にしすぎる傾向にある。その癖いざという時は誰よりも勇敢に戦うそんな男だ。

野心のある男でもあったが、それ以上に無駄に血が流れることを嫌う男でもあった。


「少し前までネットワークは普通に稼働していたわ。最後の連絡には、休む暇がないとか愚痴が書かれてた。情勢が変わったにしても、変化が急すぎる。そう考えるとなると……」

「水城の身に何かあった、か」

心がざわつく。かつての仲間、殺しても死なないような奴ではあったが、それでもこの状況はどうしても不安になる。

「解らない。本当に東京からの情報は入ってこないの。裏の事情を知る東京幹部の消息も解らなくなっている。何かが起きているのは確かなのだけど」


裏の事情を知る幹部と言えば、反乱軍時代の朽野の仲間達だ。

奥歯をきりっと噛みしめる。

「ただ、一つだけ、かつての仲間からもたらされた情報があるの。ねぇ、『たばこ屋』のこと覚えている?彼がある東京の幹部と接触したらしいよ。なんでも東京の中央に近い人物が神奈川に亡命しようとしているって」

『たばこ屋』、元・深緑の騎士団所属のマキナ乗り。

東京に侵入している神奈川の密偵ではあるが危険を察知する能力がずば抜けておりその彼が接触した人物となれば、東京側のスパイという可能性は低い。

「で、ここまで俺に話をするってことはどーせ、面倒ごとを依頼する気なんだろ?」

「ご名答~」

ため息交じりの朽野の言葉に、朝倉がにこりと笑みを浮かべ答える。

「大方、その東京のお偉いさんに接触。タバコ屋と共に神奈川に帰還、といったところかな?」

「うん、理解が速い後輩がいて助かった~。詳しい内容は百合が……」

そう朝倉が笑顔で話を進めようとするが……

「あー、先輩。その依頼、受けなくてよくないですか?」

そう月歌が横やりを入れたのだった。

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