朽野VS國武 3
本日更新2話目。少し短いです。
たん、と朽野が踏み込み、剣を突き出す。
シンプルな方に填まった動き。しかし、幾千幾万と繰り返したその動きには無駄が一切無く……
「むっ!!」
ゆえに圧倒的な速さとなって、國武の胸にその刃が突き刺さる。
HPがガリガリと削る音に國武は慌てて後ずさる。
そして、続けてくる二撃目。
「しゃらくさい!!」
下から上へ國武が刀を振るう。弾かれる朽野の剣。
朽野は剣こそは手放さなかったが、両手を上げた状態。
それに対し國武も両腕が上がった状態。
二人同時に、互いの獲物を振り下ろす。振り下ろす速度は朽野のほうが早い。
しかし、國武は勝利を確信する。
元々、銃剣士は防御力は紙と言われるまでの低さだ。
國武の刀はそんな防御力で防げる程甘いものではない。
そして、朽野の剣は突剣。基本的に突くことを主体とする武器だ。
イメージと違い切ることも出来る。だが、元々切るのが不得手な武器。
たとえ、朽野が剣をそのまま振り下ろし、切ったとしても國武の命を取る程ではない。
突きであれば、國武にとどめを刺すには十分ではあるが、その為には一度、剣を引かなければならない。
無論、國武がそんな隙を与えるわけがない。
口元が自然とにやける。刀がその肉に食い込む感触を想像し達しそうになる。
だが、その興奮も突然脳裏に過る嫌な予感の前に一瞬で引っ込む。
朽野の手首がスナップを効かせる。
剣身がたわみ、國武の背を目がけて剣先が伸びる。
「くっ」
國武が、身体をひねり剣を直撃を避ける。
直撃を避けたことでダメージを減らすことは出来たが、HPの殆どを失いそれと共に國武の体勢が大きく崩れ、地面に倒れ込む。
競技用に使われるフルーレと、戦いにおいて使われたレイピア。
この二つの武器は似ているようで違う武器とされている。
かつて戦いに使われていたレイピアはフレールと違いしならない。しなるということは突き刺すことに向かないってことだから。
しかし、ここはゲームと融合した世界だ。しなる剣でも十分威力を出すことが出来る。
そのことを國武は失念していた。スキルを封じたことで現実世界と同じような戦いが出来るとそう思い込んでいたのだ。
「認めぬ。認めぬ認めぬ認めぬ!!」
國武は、尻餅をつきながらも、顔を真っ赤にさせながら吠える。
「認めぬ!正々堂々の戦いにおいてこのような戦い方、認めることなど出来ぬわ!」
「認めて貰わなくても結構。つーか、ご老体、あんた、正々堂々戦いたい訳じゃないだろう?」
苦し紛れで|消える一撃(朧)を放つが、左手のマンゴーシュで防がれる。
「正々堂々と謳いながら、相手の得意分野を封じる。そんなの正々堂々でもなんでもないだろ。ご老体、あなたはただ、自分が強いと自信のある奴を自分の得意分野でねじ伏せて優越感に浸りたいだけだ」
「黙れ、貴様のような若造に儂の何が解るっ!」
「そりゃ、解るよ。爺さん、あんたの眼似てるんだよ。剣の道が絶たれた時、可哀想にといいつつ見下し、優越感に浸る奴らの目とさ」
「この小童あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
化けの皮を剥がされた國武が吠える。そのまま前へ出て体当たり。
今までの國武の洗礼された動きからは想像出来ない行動に朽野の反応が一瞬遅れる。
出来た隙を突いて体勢を整えようそう思った直後、バリン、と何かが割れる音と共に胸元に何かが刺さっているのに気づく。
「がはっ」
それは朽野のマンゴーシュ。割れる音はHPがゼロになりシールドが割れた音だと気づく。
國武は驚愕のあまり目を見開く。
剣で刺されたことではない。
國武は、朽野の動きを目で追っていた。なのに、そのマンゴーシュは気がつくと國武の胸を貫いていた。
気づく。國武はそのメイン武器である細剣に意識を集中していた。いや、違う。朽野はさりげない動きで國武の意識を細剣に集中するよう仕向けたのだ。その隙をついて、投げたマンゴーシュが國武のシールドを貫いたのだと。
つまりそれは、國武の使う『|消える刃(朧)』と同じ技を使ったということ。
「き、さま。儂の技を真似をして」
「ああ、いや違う違う。俺のスペシャルスキルは『猫だましの剣』。相手を騙し惑わす我流剣術。弱い俺が生き残る為に身につけた卑怯者の剣。その中でご老体と同じような技があった。それだけのことだよ」
その言葉に、老人の口元が歪む。
「が、はっ。儂が、生涯を賭して身につけた剣が、主からすると猫騙しか。さすが天才、凡、人の思いなど簡単に、踏みにじる。じゃ、が、残念だったな。主の相棒が追った相手、ダラスは、正真正銘の化け、物。人の枠から外れることの出来ぬ貴様らには、勝ち目など、ないぞ」
口から血の泡を吐きながら、國武は笑う。
その言葉に、朽野は視線を上げる。その先には、黒い火柱が天を突かんと燃え上がっている。
あの炎の元で、月歌は戦っているのだろう。
正直、あの炎の主と戦うだけの力は朽野には存在しない。
所詮、朽野に出来るのは猫騙し、人間の枠を超えることなど出来やしない。
しかし、朽野の口元に浮かんでいるのは笑みだ。
「ん?大丈夫だろう?勘違いしていないか?月歌は、俺の部下だったけど、部下が上司より弱いとは限らない。あいつは俺より強いぞ?」
「何故、そう断言出来る。あの炎を見て何故絶望しない」
確かにあの炎は恐ろしい。
理屈ではなく本能に訴えてくる絶対的な力。
あの炎の前には才能があろうが無かろうが関係ない。
人が地べたを這う蟻の個々の差など解らないのと同じ、踏み潰せば等しく潰れるという事実は変えようがない。
それほどの力の差。しかし、朽野の視線の先で燃え上がる火柱が突然、かき消される。
何が起きているか、想像は容易だ。
月歌がかき消した、朽野は一切の疑いもなくそう考える。
「力が強いだけの化け物。そんなの月歌からすればいいカモでしかない。それだけのことさ」
猫だましの剣:朽野がこの世界で生き抜く為に生み出した我流剣術。
正々堂々とは程遠い相手を騙す為の剣術で、相手の死角をついた攻撃や剣のたわみを利用し剣の軌道を曲げたりとトリッキーな動きをする。
パッシブスキル扱いで、クリティカル率・回避・命中率アップを1.5倍にアップさせるというスキル。
スペシャルスキルなので上げ幅が壊れ気味。ちなみにパッシブですがオンオフは意識すれば出来ます。
朽野は普段はオフにし必要な時はオンにする感じです。




