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月歌VSダラス

11日に一点、投稿してます。


森を駆ける二つの影がある。

まるで、子供が面白半分に混ぜこねたかのように、ありとあらゆる方向に伸びた木々。

それらの木々を避けながら、二人は走る。


バグでおかしくなったこの森で場所の安全を確認せずに走るのは自殺行為だ。

しかし、逃げる側は、安全なルートを知っており、追う側も逃げる側のルートをなぞるように走っている。


逃げる側は、神経質そうな男、ダラス

追う側は、可憐な装いとした月歌だ。


「ええい、しつこい!!オーダー!『サモン・サラマンダー』」

ダラスの言葉により生み出された火のトカゲが、月歌に向けて飛びかかり……

「オーダー『ダブルスラッシュ』」

月歌の繰り出した技で火の粉をまき散らしながら無へと帰る。


ダラスの職業は恐らく精霊士。

山梨県をベースにするアルカディアオンライン系の召喚士の系統だ。


通常、召喚士の生み出すモンスターは、召喚士より弱いことが多い。

しかし、雑魚の召喚であれば10体近く呼び出せる為、事前準備さえ怠らなければ十分に強職とも言える。

しかし、ダラスはその事前準備を怠っていた。この森が変異したという状況下でだ。


明らかに戦うことに慣れているようではない。

しかも、生み出したモンスターからして、レベルも月歌のほうが数段下だ。


しかし、月歌はダラスに追いつくことが出来ない。

騎士職である月歌は足が遅い。しかし、それは魔法職であるダラスとて同じこと。

ステータス上の|AGI(素早さ)では、月歌のほうが上だが、追いつけないのには理由があった。


定期的に生み出されるモンスタ-。それを刈るのに一端足を止めてること。

そして、ダラス本人の逃げ足が早くて、月歌本人の足が遅いということだ。


「はぁ、はぁ。いい加減。止まってよぉ」

「疲れたなら止まればいいだろう?」

「そういう訳にはっ、いかないんだよっ!」

元々、月歌は引きこもりだ。

複雑な家庭環境のせいで、大崩壊以前は身体を動かす機会など皆無。

大崩壊後、朽野と行動を共にしていたこともあり、それなりに鍛えられたがそれでも、それなりに、だ。

大崩壊後、HPが0にならなければ、その職業のレベルに応じたステータスを得ることが出来る。

月歌は、大崩壊前は廃人ゲーマーだ。

そのアカウントをそのまま使うことの出来た月歌のステータスは、神奈川においてもトップクラスの性能を持っている。

だが、いくらステータスが高くとも、補えない点が存在する。


走る為のフォームや、武器の扱い方、そして、連戦する為のスタミナ。

そういったものは身体を鍛えて会得するしかない。


だから、この場において不利なのは月歌だ。

せめて、置いていかれないよう必死に足を動かし食らいつく。


顎が下を向きそうになったので、無理矢理持ち上げる。

視界の先には、触手で出来た不気味な木。

輪郭だけ見れば、大きな木にしか見えないのに、肉を連想させる生々しいピンクな表層と、時々脈打つ姿がとても気持ち悪い。


ダラスが、その木の根元にたどり着く。

どうやら、ここがゴールのようだ。


「ふん、よくここまでついて来れたな。だが、ここで終わりだ。投降するなら命だけは助けてやってもいいが?」

月歌は、流れる汗を拭う。

肌を、胸元へ伝う汗はとても色っぽくダラスの視線は否応無しに際どい場所に固定される。

「そう言って、投降したら僕にエッチなこと要求するつもりでしょ。君、童貞っぽいから言うけど、女の子を誘うならもっとスマートにしなきゃ」

「な、ち、違う!貴様の様子はずっと監視していた。その上で言っているのだ。この邪樹クリフォトには対抗出来ない。が、殺すには惜しい。元深緑の騎士団ダークグリーン副団長殿?」

「うわっ、もしかしてストーカー。え、えーと君の気持ちはうれしいけど、ストーキングはやめて欲しいかな?」

「ええい!減らず口ばかりたたきおって!これを見よ!」

そう言って、ダラスは邪樹クリフォトに手を伸ばす。

すると、地面が大きく揺れ、地割れと共に巨大な触手が現れる。

一本、二本、三本四本と、月歌を囲むように次々と現れる触手。それを誇るようにダラスが吠える。

「この邪樹クリフォトはこのダンジョンを生成するエネルギーすべてを取り込んでいる。そして、そのエネルギーをもってすれば……」


触手の周りに揺らぎが出来る。

それを見て、月歌の表情が僅かに堅くなる。

「バグ?」

あれが何なのか、このダンジョンに入ってから何度か見ているから解る。

あれはバグ。この世にありとあらゆるものをねじ曲げ、変質させてしまうあってはならないモノ。

「そう、バグだ。我らが帝国が研究し、ついに実戦投入出来るようになった力だ。これを見てもまだ、巫山戯たことを言えるかな?」


その言葉を聞いて、月歌の眼が僅かに細くなる。

「ふーん、それ、さ。君たちの親玉も知っているのかな?」

「ふん、何を言うか。そんなこと貴様に言う意味など」

「あ、いや、あの馬鹿がそんなこと指示するんだったら一発ぶん殴っておかないとって思ってさ」

月歌の空気が変わった。さっきまで緩い雰囲気が急に鋭くなる。

しかし、空気が変わったのは月歌だけではない。

「貴様、我らが王を侮辱するつもりか?」

それはダラスも同じこと。月歌を見る目は欲情の入ったものから敵を見る目に切り替わる。


「いやー、このことを知っていれば、の話だよ?だけど、まぁ……」

月歌はちらり、とダラスを見て、小さく嘆息する。

「君の反応を見る限り、知っているっぽいね。本当、変わったなぁ。光輝君」

「いい加減にしろよ。小娘」

ダラスの僅かな怒りの混じった声に呼応するように、触手がウネウネと動き出す。

「もういい。貴様をつれて帰れば、何かの役に立つと思ったが、貴様の存在は不快だ。消え失せろ」

天を突くかのように伸びたその触手。それが角度を変え月歌目がけて押し寄せる。

四方から押し寄せる触手の群れ。通常であれば、逃げ場がない。

バグを操るその触手は、触れるだけでも致命傷になりかねない。


「触手プレイは好みじゃないなぁ」

しかし、月歌は落ち着いた様子で剣を本に挟む。

「オーダー『異典焚書』」

《オーダー確認。『聖火経典』3ページを消費。『正義は絶対の恵み』発動確認》

システムの音声が鳴り響き、剣に炎がまとわりつく。


「友人の趣味なら、認めてあげたい。けど、その力が先輩を傷つける可能性があるのなら、全力を持って」

剣を振るう。円を描くように身体を回転、触手の群れはその回転に取り込まれ、次の瞬間、触手の切られた箇所から、炎が吹き出す。


「……叩き潰す」


こうして、月歌とダラスの戦いが幕を開けるのだった。


アルカディアオンライン:アルカディアと呼ばれる理想郷を探す冒険者達の物語。

ナイツオブラウンドオンラインに似た中世ヨーロッパ風のVRMMO。

大崩壊前に、召喚士に調整が入り、ちょっとバランスを崩すくらいの強職になってしまう。

ゆえに、現在の埼玉の住民のほとんどが召喚士系の職業についている。

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