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ドラゴン級マギカ



『集合。生き残った者達はベースキャンプに集合。繰り返す、生き残った者達はベースキャンプに集合』


声がする。

神経質そうな甲高い男の声。

それが、遠くに生えた『大樹』のようなものから響きわたっている。

それは異様な木だ。

ピンク色の肉のような触手。それらが絡み合い一本の木となっている。


恐らく、あそこが彼らの拠点だ。

あの大樹の元をめざし、奥へと足を進める。

奥へ奥へ行くにつれて次第にバグの影響が少なくなっていく。

モンスターの影は一切無い。


そして、その大樹の姿が近づいた時、それが目に入った。


大穴だ。


元々、開けた場所だったのだろう。

大穴の周りには、幾つか木箱が置かれている。

まるでドーナツ状になった空間。しかし、歩ける場所はほとんどなく、人にすれば数人並んで歩ける程度、ワイバーン級のマギカであれば何とか一体歩ける程度だ。


ここが彼らのベースキャンプだ。穴の底は見えないが、穴の縁に、マギカの腕が引っかかっている。木箱はなにが入っているか解らないが、少なくともこの森に元々あるものだとは思えない。

恐らくそこそこの規模の兵士が集まっていたのが裏目に出たのだろう。


「バグで地面の強度が落ちて、その重さに耐えきれなくなり地面の底へと落ちていった、か」


その穴の先にはまた一本の道。しかし、その道を塞ぐように一体のマギカが立っている。

触手が体中に巻き付かれており、左手はもげ落ちている。

特に、両足と胴体回りはその姿が解らないくらいにぐるぐる巻きになっており、この状態だと身動きが取れる状態ではない。

恐らく、この触手は生き絶えているのだろう。しかし、リーザーカスタムもこの触手から抜け出すだけの力は残っていないようだ。


満身創痍ではあるが、ドラゴン級の10mクラスの機体。生身である月歌達からすればかなりの驚異だ。


「リーザーカスタム」

巨漢の意味を持つ帝国の主力機体だ。

デウスエクスマギナオンライン上の三大勢力、『オルディス帝国』。

強力ではあるが、独特な機体が多い帝国のマギカを改造した機体だ。


元々、接近専用のハルバートと背中に背負った迫撃砲の二種の武器を持つ遠近両用と言われる機体。丸みを帯びた機体で、その姿は太った人間のよう。頭には二つの光学センサーと角のように伸びたレーダーセンサーが搭載されている。

ワイバーン級に比べると燃費が悪いドラゴン級の中では燃費がいいとされる機体だ。


通常品を更に改造しており、色を黒色に染め上げ、そしてセンサーである角を延ばし、背中に背負った迫撃砲もより遠くに飛ばせるように改造してある。


このカスタム内容は見覚えある。東京の指揮官クラスのマギカ使いが乗ることの多い。

特にこの機体はプレイヤーに会わせて更に改造しているようだ。白兵用に備えてあるハルバードの代わりに、右腕の先は人の手の形ではなく、ガドリンク砲が填められている。

まるで、ガ○タ○クのような機体だ。


「あれ、邪魔ですね」

まだ、プレイヤーは生きている。

光学センサーが、キョロキョロと周囲を観察しており、スピーカーからはブツブツとなにやら呟いているのが解る。

コックピットはたまたま直撃を避けているが、よく機体が生きていたものだ。素直に感心する。


そして、恐らくだが正気も恐らく失っている。

月歌より40m程先。穴の手前には、そこには焦げた地面と、東京軍らしき人物の燃えカスが残っている。

そして、そこを通り、迂回しないとあの機体の側まで行くことは出来ない。


リーザーカスタムの背負っている迫撃砲の射程距離はもっと長い。

センサー関係も異常をきたしているのだろう。

恐らく、あそこがリーザーカスタムが認識出来る範囲と思われる。


レベルにもよるが、通常、正面からマギカと戦えば、月歌のような生身の人間が勝つことはほとんどない。

しかし・・・・・

「じゃ、私が囮になるから、先に進んで」

「ちょ、なに言ってんの?マギカ相手に囮になるなんて死ぬ気かよ?」


月歌の気軽な言葉に、阿部があわてて止めようとする。

確かに普通に考えれば自殺行為だ。

特に相手はドラゴン級。同レベル立った場合、ワイバーン級一体に対し歩兵4に相当すると言われ、ドラゴン級だと歩兵8に相当する。


しかし、月歌は廃人レベルのプレイヤーだ。倒すのは骨が折れるが囮程度なら幾らでも出来る。

「死ぬ気?僕が?面白いこというね。先輩とイチャイチャするまで死ぬ気は一切無いよ」

そう笑って、リーザーカスタムを指さす。

「リーザーカスタムは良い機体だけど、あれじゃ出来る行動は限られているからね。霧崎、僕が攻撃されたら、二人を連れてあっちに向かって走って」


月歌が指さすのは左のほうを指さす。

「はい、了解です。左側のルートで駆け抜ければいいのですね」

「そうそう。僕も、迫撃砲を避けたら、後を追うから」

「了解です」

「え?ちょ?どういうこと?」

「そうだ。説明を求める。月歌殿を見殺しにはしたくないぞ」

「始まれば解るから、ほら、準備して」

「それじゃ行くよ」

騒ぐ阿部と岩島を無視して、月歌は軽い足取りで、マギカの射程距離に入り込む。


「・・・・・・」

風に乗ってかすかな声が聞こえてくるが、距離が開いている為、読み解くことは出来ない。

ただ、リーザーの巨体が僅かに傾く。そして、ボン、という破裂音と共に砲弾が打ち出されたのが解る。

曲線を描いて飛んでくる砲弾。

爆発の範囲がどれくらいかは、地面の焦げ目を見れば解る。

後は、タイミングさえ解れば、直撃を避けるのは用意だ。


「オーダー《ディフェンススタイル》」

『オーダー確認。《ディフェンススタイル》発動します』

ディフェンススタイル。一定時間、攻撃力が半分になる代わりに防御力が大幅にあがるスキルだ。

これを使ったのは、爆発を避けられてもその破片を避けるのは難しいと判断したからだ。


回避行動と共に爆発音。視界が真っ白に染まり衝撃が走る。

《パッシブスキル『オートガード』発動します》

やはり、破片が当たったらしい。

朽野では、大ダメージになるような状況。しかし、防御に優れた騎士系統ならばこの程度ではびくともしない。


「ほら!走って!」

「はい!」

土煙で周囲は見れないが三人分の足音が月歌の後ろを通り過ぎるのが聞こえる。

その後を追うように、月歌も足音の方向へ走る。

土煙を抜けると、その先には三人の後ろ姿が目に入る。

道は狭い、足を踏み外せば、恐らく命は無いだろう。

しかし、リーザーはこれ以上攻撃は出来ない。なら、後気にすべきは足下だけだ。


相手のリーザーカスタム。歩兵からするとかなり厄介な使用だ。

迫撃砲の射程距離は広く、迫撃砲を掻い潜ったところで、手に填められたガドリング砲で蜂の巣にされるだろう。

しかし、この状況だとその性能を生かすことは殆どない。

理由の一つとして、迫撃砲は一度打つと次の攻撃まで僅かながら時間差があること。そして、体の正面に向けてしか攻撃が出来ないということだ。

触手で体が縛られているリーザーでは真横に向かって走った三人を攻撃することが出来ない。


「・・・・・・!!っ!」

リーザーカスタムが何か叫んでいる。

杖をこちらに向けるが正直、怖くはない。


左手のガドリングが回転を開始し、銃弾が吐き出される。

しかし、それは無視。どうやってもここに届く訳がない。


「ははっ、あのバカ。この距離じゃ届くはずないだろ!」

「しかし、どうする?このまま走っていれば、相手の射程距離に足を踏み入れるぞ」

「大丈夫だ! 月歌殿が何故、左側のルートを行くように行ったかわからんのか?」

「え?なんでって?」

「解らないならいいよ!いいから、全力で走って!」

ぐるっと円を書くように走り、リーザーカスタムの側面が見えてくる。


「くそくそくそ!来るな!来るな来るな来るな来るな来るな!来るな

ぁぁぁぁぁぁぁぁ」


ようやく相手の声が聞こえる距離まで近づく。それはつまり相手のガドリングの射程距離に入ったということ。

リーザーカスタムが、左手をこちらに向けようとする。

しかし、その銃身をこちらに向けることは出来ない。

「上半身、下半身が固定されているんだ。加えてあの太り具合だとガドリング砲をこちらに向けることは出来ない」


予想の通り腹部が引っかかる。

これが人の手の形をしていれば、手首を曲げて銃身をこちらに向けることが出来ただろう。

しかし、手首がなくその先がガドリングになっている機体、手首がない以上、こちらに向けることが出来ない。

その隙に、足下を潜ろう、そう考えたその瞬間、リーザーカスタムが予想外の行動を取った。

「な、な、舐めるなぁぁぁぁぁぁ!!!」


リーザーカスタムが、体を前へ倒す。

僅かに触手の拘束が緩む。

ほんの少し、少しばかりだが余裕が生まれる。

僅かに足が、腰が曲がる。そして銃身がこちらに向く。

「あ・・・・・」

誰かの声がした。

三人のうちの誰かの、もしかしたら月歌自身の声かもしれない。


ガドリングが回り始め、そして・・・・・・

「任せろ」

同時に、背後から誰かの声がした。

「・・・・・・先輩?」

月歌がそう呟くと共に、一つの影が月歌の頭上を飛び越えた。


デウスエクスマギナオンライン

マギカと呼ばれる魔法で動く機体を乗り魔物やマギカと戦うゲーム。


ゲーム内には大きく三つの勢力がありそれぞれ機体の傾向が違います。


帝国:ゲーム内ではマギカの燃料であるエーテルを多く産出する国。魔導技術の開発に力を入れており、ロットを使った魔法攻撃を得意とする機体や、魔法を使う為の杖と剣が融合した機構剣タクティカルソードを持つ遠近両用の機体を多く揃えている。革新的な機体が多いがその分癖の強い機体も多く存在する。

東京軍によく使われており、帝国では珍しい実弾兵器を積んでいるリーザーは遠距離用の迫撃砲と中・近距離用の機構剣タクティカルソードをこなせるということで、隊長クラスに割り当てられることが多い。

性能的には三大勢力中トップだが、コストが高いのと燃費が悪いのが玉に瑕。


王国:歴史と伝統の国。バランスの良い機体が揃っている。

マギカの素材である鉱物や魔物の素材を多く産出する。重装備の機体が多く、剣と盾を持った近接戦闘を得意とする機体を多く有している。また、魔導技術、実弾兵器の技術もそこそこある。

そこまで多くはないが神奈川軍にいるマギカ使いが好んで使っている。


北方連合:ゲーム内では不毛な土地が多く三大勢力ではあるが王国や帝国に翻弄されていることが多いとされている。低コストで、全体的に性能が低いマギカが多い。魔導技術が他国に比べ遅れている為、実弾兵器(銃や大砲)を装備している機体が多い。

全体的に燃費もいいことから、現実と融合したこの世界において冒険者に人気がある。


ちなみに、機体のサイズは大体三種類。

ワイバーン級:4~8m

ドラゴン級;10~12m

ベヒモス級:12m以上


今回、相手をしているリーザーカスタムは、乗り手に合わせて魔改造されている機体。

両手には、北方連合製のガドリング砲が付けられている。乗り手が初代ガ○ダムのガンタ○クが大好きだった模様。さすがに足はキャタピラにはできなかった。




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