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新魔王がいい人すぎたせいで世界秩序が崩壊しだす  作者: 進藤尚典
〜第6章〜魔五国連合蹂躙
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〜第5話〜魔王対猛牛軍団

 ドドドドドドとたくましい角を携えた猛牛たちが駆けていく。

 猛牛の背中には紺色の甲冑で身を包んだ屈強なオリクサの魔族たちが乗っていた。

 彼らの軍勢は、草木も岩も全てをなぎ倒しながら進軍を続けていく。

 その先頭をいくのが、オリクサの将軍であるロズルだった。

 ロズルは2メートル長ある自らの背丈よりも長い巨大な斧を背中に担ぎ、静かに手綱を握りながら粛々としている。

 けれども彼の軍勢は、猛烈な音を立ててすべてをなぎ倒し進んでいく。


「ロズル様、あまりにあっけないですな」


 ロズルの横を並走する配下が言った。


「とてつもない勢いで勢力を伸ばしたゾゾリマですが……いやはや拍子抜けですな」


「油断をするでない」


 ロズルは鋭い眼光を飛ばして言った。


「まだあちらには、魔王レオンがいる。そして3年前を忘れたか?3年前、我らは魔の六国を統一するべく凄まじい勢いで快進撃をしていた。が、そんな中だ。ドンデ様が急死して事態が180度変わった」


 ロズルは話しながらそれを思い出し、苦虫を噛み潰すような表情に変わった。不快な表情に変わったロズルを見て、配下はロズルを恐れるように身を引いた。


「さぁ、言ったそばからお出ましだ」


 ロズルは前を向き、静かに言った。配下はそちらを見て血の気が引いた。

 ひとりの男がそこに立っていた。

 この世のものとは思えないような凶悪な邪気を纏った男だった。

 魔王レオンっ!?

 オリクサの軍勢の誰もがその男の正体に気づいた。そして彼らの乗る猛牛が、先にその邪気に押され、誰の命令もなく脚を止めてしまった。


「まさか、我が軍の進軍が、たったひとり……立っていただけで止められるとはな」


 ロズルは吐き捨てた。


「すみません。オリクサの方たちですかー?」


 魔王レオンが声を出した。


「そうだ。そして我は将軍のロズルだ」


「やはりそうでしたか。すみません、僕はゾゾリマの王のレオンです。皆さんに頼みがあります。このまま兵を引いて帰っていただくことはできないでしょうか?」


「……」


「僕たちゾゾリマは他国との戦いを望んではいません。僕は魔の六国が平和に共存していくことを願っています」


 オリクサの軍勢はざわつく。「何を白々しい」「自らはインボイを属国にし、ホーハムや人間界にも魔の手を伸ばしているくせに」と陰口が飛ぶ。


「魔王レオンよ。私たちの回答はただひとつだ」


 ロズルは静かに背中の斧の柄を握る。


「戦いは……続行だ」


 斧が引き抜かれ、ロズルの猛牛は前進を再開する。恐れて止まっていたまわりの猛牛も合わせて突進を開始した。

 無数の猛牛がレオンに迫った。



◇◇◇



 ドンッ!!


 レオンの身体から出た暗黒の障壁に迫っていた幾十もの猛牛が宙を舞った。

 そして間も無く彼らは地面や崖に叩きつけられた。


「ごめんなさい。つい……」


 レオンは謝った。彼を中心に半径50メートルのクレーターが出来上がっていた。

 その中で、ただひとり猛牛に乗ったロズルがレオンを睨んでいた。


「流石だな魔王レオンよ」


「……すみません、皆さんにケガをさせてしまって。でも、話を聞いてください。本当に僕たちは」


「問答無用」


 ロズルを乗せた猛牛がレオンに突進する。

 そして巨大な斧がレオンに振り下ろされた。


「死ねええええ!!!!」


 ブンッ!!


「……なっ!?」


 猛牛とロズルは宙を舞っていた。


「力を誇る相手に力で対抗することはない。相手の力を利用しろ。そうですよね先生」


 猛牛とロズルは地面に叩きつけられていた。ロズルはわけがわからないとあっけにとられていた。


「戦いをやめていただけますか?」


 ロズルはこの声にはね起きる。

 斧を握り直しぶるんと振りぬいた。と、再びロズルは宙を舞っていた。


「……何だ、この魔術は?」


 ロズルは言う。


「魔術ではなく、ただあなたの力を上手く利用しているだけですよ。不思議な力などではなくただの修行の成果です」


「くっ」


 ロズルは歯を噛み締めながら斧を振りまわす。その全てをレオンは柳の枝のようにしなやかに避けていく。

 巻き起こる土煙と凄まじく風を切る音。

 しかし、一撃たりとも斧はレオンにあたらない。


「くそおおおおお!!!!」


 ロズルは思い切り斧を振り上げ、レオンの頭に振り下ろした。

 ガキンッ!!

 手応えがあった。

 ロズルは一瞬にやりと笑うが、それは長くは続かなかった。

 ロズルの斧はレオンの人差し指と親指につままれていた。


「もう、やめませんか?」


 レオンのこの言葉にロズルの心は折れかける。

 そのときだった。

 地面の土が突然もこもこと盛り上がり、レオンの手首を掴んだ。


「えっ!?」


 レオンが驚いている隙に、ロズルが立ち退いた。


「来ていただけたのですか、王子」


 ロズルは呟く。

 崖の上には、ブラウンの髪の毛を携えた若い男がひとり地面を見据えていた。

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