小田 九郎
「焼いてもダメなのか」
「うまそうだったけどなあ」
俺たちががっかりしていると、203号室のオタクっぽい人、小田 九郎が質問してきた。
「ところで、君たち、異世界に来て、何か能力に目覚めたりしていないかい」
能力!
なんで、気づかなかったんだろう。
異世界転移と言えば、チートスキルじゃないか。
しかし、どうやって確認するんだろう。
考えていると、オタクが発言を続けた。
「僕さ、どうやら、『鑑定』能力だったらしいんだよね……」
「えっ、じゃあ、このキノコも鑑定できるのかい?」
大学生が尋ねると
「ああ、鑑定した。ただ、まだスキルレベルが低いらしくて、対象を数分間見続けなければいけないらしい。だから、能力に気づいたのも、ついさっきなんだ」
オタクが答える。
「それで、鑑定結果はどうだったんだ。やっぱり、毒キノコか?」
「うーん、一応ね」
「一応?」
「ああ、こいつの名前は『ルーレットダケ』。1/6の確率で食べられない人がいるらしい」
どうやら、しー子たちは運が悪かったらしい。
「まあ、1/6なら、かなり安心だな。きっと僕たちは食べられる人間だよ。よかった、よかった」
オタクがキノコをほおばる。
小田 九郎が死んだ。




