おっさん
「うわあああ、やっぱり毒キノコだったんだあ」
103号室の大学生がパニくっている。
「しー子ちゃん、どうして、こんな……」
泣き崩れる204号室のお姉さん。
さりげなく肩に手をのせる学者っぽいおっさん。
阿玉岡 椎子の死。
それは、俺たちに、この状況が絶望的であることを、改めて痛感させた。
死は、自分のすぐ傍にいる。その恐怖が、俺たちに否応なくのしかかってくる。
そんな絶望の時間がどれくらいすぎた頃だろうか、学者っぽいおっさんがこう言った。
「100%死ぬとは、限らないのではないか?」
「はい?」
俺が聞き返すと、おっさんは
「しー子君が、キノコアレルギーだった可能性もある。それならば、他のみんなは食べられる。このまま飢えれば100%我々は死亡する。だが、これが可食ならば、死亡率は1/6にすぎない」
「そうね。私たち5人が生き残るには……キノコ以外に食べるものはないし……」
お姉さんが、しー子の死体をちらちら見ながら、おっさんに賛同した。
「見ていたまえ、諸君!まずは100%を50%にしてみせよう!」
おっさんがキノコにかじりついた。
おっさんが死んだ。




