エントの助言
やっと20話です!
お待たせいたしました!
「お久しぶりです。王后陛下、アルシェラーサ様はいかがでしたか?」
マルグリットが一人で部屋で趣味のレース編みをしていると、アレクセイが部屋に入ってきて聞いてきた。マルグリットは一瞬アレクセイに視線を向けたがすぐに視線を外す。
「久しぶりね。アレク。」
マルグリットは面白そうに言う。
「はい。陛下。」
「私はあの子を気に入ったわ。あの二面性がね。」
「二面性、ですか。」
「ええ。鏡を通してあの子を見ていたけれど、あの子はひどく子供っぽい時とひどく大人らしく達観している時があるのよ。その正反対さはとても面白いわ。...一体どんな風に成長してくれるのかしらね。ふふふっ。」
マルグリットは愉快そうに微笑み、言う。
「それには私も気づきましたが、あれは本人は無意識なのでしょうね。感情を思いっきり顔に出す時もあれば、ひどく感情が見られない時もある。現に先程のタシェリーク侯との会話はひどく大人びてらっしゃいました。」
「...そういうところは実のお父様にあの子は似たのね。」
マルグリットは昔に思いを馳せて言う。アレクセイは驚いたような表情を浮かべる。
「アルシェラーサ様の父君に会ったことが?」
「ええ。昔ね。本当によく似ている。まだ見極めたいの。だから結論はあの子がこの離宮を出るまで出さないわね?」
マルグリットのその言葉にアレクセイは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「あらあら。そんな顔しない。せっかくの男前が台無しよ。」
マルグリットはそう言う。
「どうしてあの時の記憶を消されたのですか?」
「あの子と貴方のためよ。それにない方が貴方も気楽でしょう。」
「王后陛下がそうおっしゃるならそういうことにしておきます。」
アレクセイはそう言うと部屋を出ようとする。
「王宮に帰るの?」
「はい。仕事もありますから。」
「戻ってくるのかしら。」
「アルシェラーサ様次第ですね。」
そう言い残しアレクセイは本当に部屋から出て王宮に戻ったのだった。
「あれ?アルシェラーサ様。もうお戻りですか?」
部屋で玻優が真面目に勉強をしていると、エントが入ってきて言った。
「うん。」
「アリアスやジークは?」
「部屋にはいなかったよ。」
「まだあれに時間かかっているのか...それで、アルシェラーサ様。タシェリーク侯と会いました?」
エントはいつも通りにこにこと聞く。玻優はため息をついた。
「私とタシェリーク侯が会ったのは貴方が仕組んだの?」
玻優が呆れたように聞くと、エントは誤魔化すように笑う。
「まさか。ただ、タシェリーク侯にアルシェラーサ様は王后陛下とお茶会です、とはお伝えしましたけど。タシェリーク侯が殿下に会いたそうだった様子でしたから。ジークには内緒ですよ?」
エントは茶化すように言う。
「私、貴方のことがわからないわ。」
「奇遇ですね。俺もアルシェラーサ様と同じです。自分で自分のことがわからないんですよ。」
エントはいつものように笑っていたが、その顔はどこか寂しそうだった。玻優はまた呆れたようにため息をつく。
「そんなの当たり前でしょう。わからないのが、当たり前よ。わかってたらこの世の中全てうまくいくに決まってるわ。」
玻優が手に腰をあてて言うと、エントは一瞬きょとん、としてから吹き出した。
「はははっ!いや、アルシェラーサ様の仰る通りですね。うん。きっとそうだ。...俺の目に狂いはなかった。」
エントは目に涙をためるほど笑い、涙を拭って言った。
「馬鹿にしてる?」
「いいえ。尊敬し直したところです。我が君をね。アルシェラーサ様。」
我が君。初めてエントは玻優をそう呼んだ。
「ところで!アルシェラーサ様。副宰相閣下の課題はうまくいきそうですか?」
エントは急に話題を変えた。玻優は眉間にシワを寄せる。
「いや、わかんない。」
「...あの方も意地が悪い。...アルシェラーサ様。副宰相閣下は絶対に味方につけなければなりません。あの方は将来の宰相です。アルシェラーサ様を支えてくれる方なのですから、絶対に味方になってもらわねば、困りますからね。」
エントは絶対に、と二回使って強調してくる。
「そんなに彼は必要不可欠?」
「副宰相閣下は、我が国に必要不可欠なお方です。あの方はすごい方なんですよ。苦戦しているアルシェラーサ様に一つ助言を差し上げましょう。王后陛下はアルシェラーサ様にとって祖母君です。ですから、孫であられるアルシェラーサ様のお願いには弱いはずです!」
エントは玻優にどこが助言なのかわからない助言をしてくれる。玻優は全然あてにならない!と内心がっかりしたのだった。
20話いかがでしたか?
今回はエント回でした。
あとちょっとで離宮編も終了です。
やっと佳境ですよ...
次回こそ早く投稿したいです!




