第43話 悪役アビロス、深淵の闇魔法で全てを押しつぶす
「フハ、今更何かをしても遅いわい! さあ~~こちらも片をつけてやる! アイアンゴーレム、そのチビ娘から潰してしまえ! 最大出力じゃ!」
ゴーレムの巨大な拳が、ひときわ輝きを増してララに襲い掛かる。
「フハハハ~~跡形もなくつぶれるがいい!」
ズンと強烈な一撃が炸裂して、地面を激しく揺らした。
地下室全体がミシミシと悲鳴をあげる。
「よ~~しこれでチビ娘は片付いたわい。さて、お次は―――!?」
「―――なにが片付いたんだ?」
ララにゴーレムの一撃は届いていない。
当然だ。
俺が止めているからな――――――
「―――馬鹿なぁあ! 最大出力の打撃だぞ! 人間の手で止められるはずがない! いかなる付与魔法をもってしてもあり得ん!」
止めるに決まってるだろ……ステラとララ、俺の大事な2人に手を出すんじゃねぇええ!
「おい、クソ司教がぁあああ! 覚悟しやがれ――――――
漆黒の闇よ、その禍々しき黒で押しつぶせ、
―――重力増魔法!」
詠唱が【深淵闇魔法】に書き換わる。
「深淵の闇よ! その無限の深みで押しつぶせぇええ!
――――――深淵の終焉重力増魔法!!」
ゴーレムを中心に強力な重力フィールドが広がり、フィールド内のGが急加速をはじめる。
……ミシミシ
「フハ~~、無駄だじゃわい! アイアンゴーレムの防御は無敵! 多少重くしたところでなにもかわらんわい!」
………ミシミシミシ
「フハ? なんだこの音は……まさか!?」
…………ミシミシミシミシミシ
この世にはな―――
ゴーレムの身体に次々と亀裂が走り、破片がバラバラと落ち始めた。
「潰れないものなんてないんだよ!
―――――――――押しつぶせぇええええ!」
黒い重力に耐え切れなくなり、粉々に粉砕されるアイアンゴーレム。
「フハぁあああ!? あ、あり得ん! ライトシールドでコーティングされた鉄のボディを押しつぶすだとぉおおおお! フハッ―――ぷぎゃあぁあああ!!」
アイアンゴレームの粉砕された瓦礫が降り注ぎ、埋まっていく司教。
「おまえはそこで黙って反省してろ」
決着はついた。
そこには瓦礫の山しか残っていない。
「ふぅ……」
相変わらず魔力消費量がけた違いだ。ほとんどの魔力を持っていかれたな。
バフっ!
「ご主人様~~やっぱり凄いです~~!」
「わ~~ん、アビロス君~~怖かったよぉおお~~!」
ララとブレイルが飛びついてきた。
ララはいいとして、ブレイル……おまえはもうちょっと主人公らしいセリフないのか……
なぜヒロイン枠ムーブなんだよ。
「さて……まだ終わってないぞ」
「ハイです! ご主人様!」
「ララ、おまえなら絶対にできる。頼んだぞ!」
「ハイです! お任せあれです!」
ララが素早くステラたちの方へ走っていった。
「アビロス君、ララさんは何をするの?」
何をするって……決まっている。
ここでステラたちを救えるのはララだけだ。
ララが元気よくステラの両肩を掴んで、そのかわいい顔をグイグイ近づける。
「ちょっ……ララ……ちゃん? なに……を……」
むちゅ~~~~~~
「ちょっ……ん、んん……」
ステラの顔から毒気がどんどんなくなっていくと同時に、その綺麗な顔はトマトのように真っ赤に染まっていった。
かわいい顔同志が密着してやがる……
「ぷはぁ~~ステラさまの毒は完全に吸い取ったです~~美味しい~~です!」
ララの毒耐性はここにきてさらに極められたようだ。
ステラの解毒魔法ですら対処できない毒をやすやすと……まあ過程はなんともいえんけど。
「さあ~~~次行くです~~!」
「ふあっ! ララかぁ……な、なにを……ん、んん……」
「最後は~~~第4王女のエリスさまです~~~~」
「ええ……どちらさまですか……わたくしのはじめて……ん、んんんっ……」
しかし……うわぁあ……すごいなこれ。
4人の美少女が……いやいや、やらなきゃ死んでしまうんだ。
「うわ、アビロス君……す、凄いよ! 女の子同士でムチュ~~って、うわうわ」
「ブレイル! 見るんじゃない。これは必要な事なんだ」
顔を真っ赤にして、うわうわ言ってるゲーム主人公の肩を掴んでまわれ右させる。
おい、モジモジするんじゃない! おまえ覚醒してから変だぞ。
そこへ2つの足音が近づいてきた。
「あ、アビロス君……え? え? これ……なに!?」
「うわうわ~~王女さまたちなにやってるの、アビロっち……あんたまさか全員無理やり!?」
「ウルネラ! アビロス君はそんな人じゃないもん! そうだよね! ねえ! ウソだよね!」
ナリサとウルネラだ。
ああ~~このタイミングで登場かよ……完全にドン引きじゃねぇか……
よし、2人にはしっかり説明しよう。
変な誤解は絶対に解かなければならない。