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第41話 悪役アビロス、悪役は諦めない

「アビロス君~~やったね、僕らの()()技!」

「ああ、よく頑張ったブレイル」

()()()()()()って素晴らしいことなんだね!」

「ああ、よく頑張ったブレイル」

「もっと、()()()()()()()()ね、アビロス君~~」

「ああ、よく頑張ったブレイル」


 覚醒したブレイル。

【絶対攻撃】というゲーム主人公のみが使用できるスゴ技で活躍したのだが、なぜかよくわからんキャラも覚醒してしまった。



 身体をくねらせながら意味不明の言動を繰り返すブレイルに、若干の寒気を覚える。


 とりあえず、ブレイルには良く頑張ったとだけ言っておく。

 いや、それ以上の進展などないし、そんな展開を俺は望まない。


 本当に望まないからな!



「フハぁ……おのれぇええ~ガキども……まさかここで使用することになるとはなぁ……我らが太陽教に立てついたこと後悔させてやる!」


 ―――まだ動けるのか! 使用だと?


 司教がフラフラと立ち上がり、なにかを詠唱した。

 すると壁の一部が開いていく。


「ご主人様~~なにか大きな人形さんが出てきたです~~」

「あ、アビロス君~~なにあれ! 魔物? でもなんだか感じが……」


「ララ、ブレイル。落ち着け」


 壁の奥から現れたのはゴーレムだ。しかも鉄製の上位ゴーレムであるアイアンゴーレム。


 だが、俺の知っているアイアンゴーレムではない。


 ブレイルが感じているもの―――


 それはかれが持つ魔力と同じ―――そう、光の魔力だ。



「ゴーレムが光属性だと……!?」



 間違いない、目の前にいるゴーレムが放つ魔力は【光属性】。

 なんだこれ? 本来はブレイルのみがもつ属性を司教に引き続きゴーレムまでもが持っているというのか。


「なんだ、おまえたちは属性を操ることができるのか?」

「フハ、操っているのではない。付与しているのだ」

「付与……? どういう……まさか、勇者の血か!?」

「そうだ、勇者の血には多分の光属性成分が含まれておる。我らは長年の研究によりその抽出と濃縮による光属性の発現技術を確立した。このアイアンゴーレムの核には凝縮された血液結晶が埋め込まれているのだ」


 なるほど、光属性はぶっちゃけ主人公用のチート属性だ。勇者の直系末裔である王族ですら、光属性を持つ者はいない。マリーナは火属性のはず。

 それを本来は持ちえない他者に付与することができれば、強力な力を持たせることができるということか。


「フハ、これが我ら長年の研究成果じゃわい~~さあ、アイアンゴーレム。栄えある初陣じゃわい! 眼前の邪魔者を排除しろ!」


 ゴーレムの巨大な右拳がズーンと振り下ろされると同時に、周辺に光の魔力が飛び散る。


「ライトナックルか―――」


 ブレイルの攻撃レパートリーのひとつだ。ゴーレム本来の強い攻撃力と光属性の強力な打撃の合体攻撃。


「チッ―――ララ! 回避だ!」

「ハイです! ご主人様!」


 俺とララは、瞬時にその場から後方へ跳ぶ。


 瞬間、ゴーレムが打ち付けた光の魔力が四散して周辺の床に穴をあけた。


 さらに、左の拳を振り上げ、力任せに振り下ろすゴーレム。

 ふたたび光の拡散パンチが俺たちを襲う。


「ララ! 回避と同時に攻撃するぞ!」


 俺は【闇魔法】を付与した重力剣を、ララは鞭に魔力を込めて―――



 同時に叩き込む!



 が、2つの攻撃は光輝くゴーレムのボディに弾かれる。


「まさか……この光」


「フハ、その通り! 光のシールドで覆われたアイアンゴーレムだ。ドラゴンの鱗より固いわい!」


 光防御壁(ライトシールド)か―――

 これも光属性に特化したシールドだ。聖女の【結界】が魔物に絶大の力を発揮するのに対して、物理攻撃・魔法攻撃に高い防御力を誇るチートシールド。


 そもそも高い硬度を誇るアイアンゴーレムに、さらにこのチートシールドがうわ乗せされてるってことは、とんでもない防御力になってるってことだ。


 俺は【闇魔法】で黒い炎の弾丸を浴びせてみた。

 が、さきほどの斬撃と同じくすべて弾かれる。


「フハ、無駄じゃ! アイアンゴーレムにはいかなる攻撃も通らんわい!」


「いくら強力だといっても、動力は有限のはずだ! こうなりゃ根競べだ!」

「フハ、それはどうかな。こいつの動力は太陽エネルギーじゃわい! 今日はすこぶる良い天気じゃぞ~~」


 なんだそれ? 太陽を動力に変換しているのか? 

 なるほど、それで地下に大量の日光を取り入れていたのかよ。まったく……原作ストーリーにないことが多すぎるぞ。


「おい! こんなもの作って何がしたいんだ!」

「フハ、知れたこと。この国を我らが太陽神さまにお返しするのだ! 我らが統治することによってなぁ!」

「返す? だと」

「光属性は本来太陽神さまが勇者の小僧に授けた力。だがもはやその勇者もいない。我らの手に返してもらう時がきたのだ。この国は太陽神さまのお力によって創られたも同義。だから本来の持ち主に返すのだわい!」


 何言ってんだ?


「ようはてめえらで支配したいだけだろうが!」

「フハ、別段貴様に理解など求めておらんわい! 絶対無敵の防御力の前にはいかなる攻撃も無効。さっさと諦めて始末されるがいいわ!」


 諦めるだと?


 いかなる攻撃も無効なわけがない。


 何故なら。


 先ほどから放っている斬撃―――手ごたえがあるからな!


 俺の視線がゴーレムを再度捉える。



 ――――――あった!



 アイアンゴーレムの胸部にわずかだが亀裂が見えた。

 絶対無敵の防御だと? 俺たちの攻撃力をなめすぎだ。


 俺にビッとサムズアップするララ。俺と同じく亀裂に気付いている。

 さすが俺の専属メイドだ。


 ならやることはひとつだ!


 俺とララは再び攻撃態勢に入る。



「フハ、無駄な事を! アイアンゴーレムのエネルギーは尽きんぞ! 貴様らの魔力が尽きた時が終わりの時だ!」



「ハハッ―――それはどうかな、悪役アビロスはしぶといぜぇえええ!」


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