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パパは破壊神(デストロイヤー)  作者: 空風林
第一章 北方争乱篇(上)
9/21

◇Two nights carnival その6◇

投稿遅くなり申し訳ありません。

前話に入浴時ガールズトーク等々加筆していたら、寝落ちしてしまいました(汗)

今回、少し短いです。併せて申し訳ありません。

よろしくお願いします。

『ヴィージの森』に入って3日目の夜。

夕飯も終わり、俺たちはティータイムに入っていた。


親父は既に、うたた寝してる。

女性陣は、お茶を受け取ると、お肌の為に湿度の高い、

泉の近くで休息を取ると言って、泉の方に消えて行った。


また、あのビーバーもどき(アーヴァンクと言う名らしい)

が出ないかと心配したが、


『眷属が偵察した時に確認されていなかった事から推測するに、

 あの個体は、地中で冬眠していたモノと思われます。

 温泉化による周囲の急激な温度上昇で覚醒したと考えるのが妥当です。

 アーヴァンクは、単独で冬眠する魔獣なので、心配はないと思われますな。』


というクラースさんの言葉で安心した。

知識欲の塊みたいなセラフィーナの側近だけあって、この人も博学だ。


そうこうしてる内に、親父がいびきをかき始めた。

俺はお茶を飲み干すと、


「ちょっと、外を見廻ってきます。」


後片付けをしているクラースさんに告げ、洞窟を出た。

本音を言えば、少し一人になりたかったのだ。


カトリーナ達がやって来てから色々あった。


何気なく空を見上げると、月が中天に達しようとしていた。

間もなく異世界5日目になる。

明日はどんな日になるのだろうか。

少し不安もあるが、それよりもワクワクが大きい。


事なかれ主義のルーティン生活を貫いてきた俺に、

まさかこんな日がくるなんて思いもしなかった。

想像もつかない毎日。自然と心が弾むのを感じた。


その瞬間までは。


ここは『ヴィージの森』

北界最強の一角、ヴィーザルが隠棲する場所だ。


ヴィーザルは、北界の主神であるオーディンと、

巨人族のグリーズの間に産まれた。


主神を上回るとも言われる、

そのあまりの強さゆえ、

北界を支配するアース神族の中で、

かなりの影響力を持ちながらも、

政治を嫌い、半ば隠居暮らしをしているのだという。


今、俺の眼の前に唐突に現れた、

見るからに頑強なこの壮年こそが、

ヴィーザルその人だった。


「言い訳を聞こう。なぜ、この森に立ち入った?」

「あなたがヴィーザルさんですね?」

「いかにも。」

「俺は、、」

「良い。」

「えっ。」

「興味がない。それよりも我が問いに答えよ。」


事前の打ち合わせで決まっていた事は2つ。


一つ。

ヴィーザルに敵意ないし、害意があった場合、

即座に異世界転移門ゲートを開き、人間界に逃亡。


向こうで二時間も過ごせば、こちらでは4日は経っているので、

多少なりともほとぼりはさませる。

対策は相手の様子次第で立てる。


2つ。

ヴィーザルと話し合いが可能な場合は、

全てを話して助力を仰ぐ。

その際、ヴィーザルの意向は出来うる限り尊重する。


困った。敵意が全くないとは思えない。

少なくとも不愉快そうではある。


とは言え、明確な敵意とまでは言えない。

かといって『話し合い』と呼べる様な会話が期待出来る雰囲気でもない。


「どうした?答えよ。」


ダメだ。いい案が浮かばない。

アクシデントに上手く立ち回れる様な器用さは、

そもそも持ち合わせていないのだ。


相手は圧倒的に格上、嘘やごまかしは効かないだろう。

俺は覚悟を決め、ど真ん中ストレートを投げ込んだ。


「ラグナレクを止める為です。」

「ラグナレクだと!!」


ヴィーザルは声を荒げた。

ただそれだけだったハズだ。


吹き飛ばされるかと思った。


まるで強烈な突風が吹いたかの様な圧倒的なまでに巨大な存在感。

その気迫に世界そのものが震えているんじゃないかと思われるほどの威圧感。

ただ立っているだけで精一杯になる。


全く良く気絶しなかったものだ。

自分を誉めてあげたい。

気絶しなかった事をではない。


それでも、尚、ヴィーザルから目を逸らさなかった事をだ。


「目を逸らさぬか。なるほど。

 あながち根拠のない話でもないという事だな。」

「はい。」

「詳しく聞こう。」

「ありがとうございます!」

「ただし、ラグナレクと言う言葉を出した以上、

 簡単な話になるとは思うでないぞ。

 事と次第によってはその命、今日尽きると心得よ。」

「分かりました。では、仲間がおりますので、話はあちらの洞窟で。」

「いいだろう。」


歩き出そうとする俺。


「だが、その前に。」


立ち止まり、振り返る。


「お前の名を聞いておこう。」

斯波しば象太郎しょうたろうです。」




洞窟に戻ると、クラースさんが両手両膝をつき、

肩で息をしていた。


「クラースさん!」

「よ、よくぞご無事で、、。」


どうやら、先ほどヴィーザルが発した気迫に当てられて、

この有様のようだ。

クラースさんでこの状態という事は、

恐らく、奥の二人は気を失っているだろう。


「そちらのお方は、ヴィーザル様でございますね?」

「いかにも。」

「無様な姿をお見せして申し訳ございません。

 ただいま、お茶をお持ちさせて頂きます。」


ヨロヨロと立ち上がるクラース。


「お茶なら俺が!」


俺の言葉に振り返ると姿勢を正し、

片手を胸に当て礼をするクラース。


「お茶の用意は私の役割でございます。

 象太郎しょうたろう様はこのパーティーのマスター。

 ヴィーザル様のお相手をするのが役割と愚考致します。」


言うと何事も無かったかの様にスタスタと歩き出すクラース。

かなり無理をしているのは間違いない。


それでも彼は自分の役割を果たそうとしている。

ならば、俺も役割を果たさない訳にはいかないだろう。

俺はヴィーザルの正面に座った。


「いい部下を持っているな。」

「部下ではなく、仲間です。」


ここは譲れない。

ヴィーザルは意に介した様子もなく、話題を変えた。


「そうか。お茶を待つ間に一つ聞きたい。」

「なんでしょうか?」

「アレは何者だ?」


ヴィーザルが指をさす先に、

スヤスヤ眠っていたのは、親父だった。


おい!鈍感にもほどがあるだろ!

折角、クラースさんが頑張って、

『出来るパーティー感』出してくれたのに台無しだよ!


「俺の親父です。今、起こしてきます。」


そそくさと親父の元へ向かう俺。

無性に恥ずかしかった。


「おい!親父起きろよ!」

「んぅ〜後5分。」

「お約束はいいから、即起きろ!」

「なんだよぉ。ん?客か?」

「この森のあるじだよ。

 不法侵入者である俺たちの話を聞いて下さるそうだ。」

「そうかぁ。じゃ起きなきゃ失礼だなぁ。」

「当たり前だ!早く挨拶しろよ!」


言うと席に戻る俺。後ろから親父がモタモタついてくる。


「いやぁ。お騒がせしてすいません。わざわざどうもぉ。」


頭をぽりぽり掻きながら、アクビまじりに挨拶する親父。

期待はしてなかったが、なんと間の抜けた挨拶しやがる。

失礼にもほどがあるだろう!


「すいません。親父はド天然なもので、、」


俺はヴィーザルに謝ったのだが、

当のヴィーザルは親父を凝視していて聞こえてない様子だった。

そして、やにわに立ち上がり、親父に向かって歩き出す。

ヤバい!怒らせたか!


「ヴィーザルさん!ちょっと、待って!」


必死に止めようとする俺。


「やはり。シヴァ殿か。」

「ん?俺を知っているのかぁ?」

「知らん訳がなかろう。」

「そうかぁ。良く分からんがよろしくなぁ。」


言うと手を差し出す親父。ヴィーザルは応え、握手する。

そこに、クラースがカトリーナ達を連れて、お茶を運んでくる。

ヴィーザルが視界に入るなり、片膝を付き礼をする二人。


「良い。早く席に着け。」


言うと自らも席に戻るヴィーザル。

クラースがお茶を配り終わると同時に、

俺は話だした。


「まずはヴィーザルさん。

 勝手にこの森に入った事をお詫び致します。

 申し訳ありませんでした。」

「その事はいい。息子殿よ。

 本題ラグナレクについて聞かせてくれまいか?」

「息子じゃなくて象太郎しょうたろうだぞぉ。」

「親父!そんなことはどうでもいいだろ!」

「いや、非礼を詫びよう。

 このパーティーのマスターは象太郎しょうたろう殿だったな。」

「分かればいいぞぉ。」


このやり取りで、俺を除く3人の寿命は大きく縮んだだろう。

表情がヤバい事になっている。

本当にみんなには申し訳ない。


親父はいつもこうだ。

まぁ、そんな親父を嫌いじゃないと感じてしまう俺も同罪だな。


なんかフッきれた俺は、予想以上に上手く話をする事が出来た。

俺たちの現時点で知る情報を漏れなく伝えられたと思う。

ヴィーザルは時たま頷きながら、無言で聞いていた。


そして、俺は最後にこう締めくくった。


「ヴィーザルさん。貴方にも力を貸して頂きたい。」

「・・・」

「どうかお願いします!!」


俺の真剣な目を見つめ、一度ひとたびまなこを閉じ考え込むヴィーザル。

俺たちは無言で返事を待つ。


しばしの、しかし、無限とも感じられる時が流れ、

ヴィーザルは目を開いた。


「ラグナレクは何としても阻止せねばならん。」

「それじゃあ!!」

「しかし!・・やめておこう。」

「理由を聞かせてもらえますか?」

「いいだろう。

 能力ちからはその巨大さゆえに、

 一つの制約があるのだ。」

「制約?」

われ権能けんのうは均衡を保つ事だ。

 即ち、世界が大きく傾いた時のみ真の力を発揮出来る。

 逆もまた然り。われが力を振るえば、その瞬間、

 必ず一度は世界の均衡が崩れる。」


マジか!主神級ハンパねぇ!!


「そ、それはさすがに困りますね。」

「そちらにはシヴァ殿もいる。

 そこに我が加わるというのは、他の宇宙との外交面も含めて考えるに、

 場合によっては、ラグナレク以上の破滅を呼びかねない。」


あららぁ。

なんか、もう、俺が話しに参加していい次元は完全に越えてるなぁ。


ふと、見ると、親父は退屈そうにあくびをしている。

相変わらずイラっとくるな。


反対側に視線を振ると、

クラースさんを筆頭に一斉に目を逸らされた。

何その動き?組み体操?いつ練習したの?


まぁ、誰もこんな話振られたくはないよな。


「分かりました。では、この件は俺達だけでなんとかしてみます。」

「そうして貰えると有り難い。

 我は表向き、この話は聞かなかった事にする。

 そもそもシヴァ殿と会ったという事でさえ、

 ロキ辺りに知れたら、どれほどの波紋を呼ぶかも分からん。」

「そ、そうですか。では、こちらも他言せずにおきます。」

「よろしく頼む。」


そういうと席を立つヴィーザル。

全員でお見送りに出る。


気づけば東の空が少し明るくなり始めていた。

結構な時間話していた様だ。


ヴィーザルは見送りの礼を言うと去ろうとしたが、

思い出したように口を開いた。


「スクルドの館に向かうと言っていたな?」

「はい。」

「では、このまま北を抜けるしか道はないが。」

「えぇ。その予定です。」


北の森を見つめ、少し思案するヴィーザル。


「どうかしましたか?」

「道中気をつけて行くが良い。」

「あっはい。」


なんだろう。ちょっと引っかかる。


「いや。老婆心と言うヤツか。ではサラバだ。」

 

言うと目の前から消えるヴィーザル。


さっきの微妙な間と、老婆心という言葉といい、

当然、気にはなったが、今は正直休みたい。

振り返ると、皆、かなりの疲労感が顔に出ていた。


親父だけは単なる寝不足な感じだが。


「取りあえず、一旦休もう。

 今日は、昼の出発でいいかな?」

「賛成!!」


この三人、息合い過ぎじゃね?なんかのユニット?


「よし!じゃ昼まで解散!」


皆で洞窟へと向かい歩いて行く。


北界の朝は風が冷たい。

一陣の風に背中がゾクっとした俺は、

なんとなく、振り返る。


そこには、夜明け前の暗がりの中、

ウィージの森、最北部の木々が、

不気味に揺れていた。

今回は色々とすいませんでした。

次の投稿は31日夜を予定してます。

よろしくお願いします。

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