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『その身体は、誰の魂で生きているのか』  作者: 紅玉道


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幕間:招かれざる者

夕暮れの街道を、一台の馬車が急ぎ足で進んでいた。ミスダクとダーチを繋ぐ街道だ。

男は妻を荷台に乗せ、馬を走らせている。

ダーチで一人暮らしの義母が病で倒れたと、六日前に手紙が届いた。病の状態はわからないが、万が一を考え、慌てて荷物をまとめて妻と共にミスダクの街を出た。

「ジュネスまではあと二日くらいか……。何とか間に合えばいいが」

本来の目的地は、その先の街だった。だが今は、どうしてもジュネスへ向かわなければならない理由があった。

「おい、その兄ちゃんの様子はどうだ? 意識はまだあるか?」

男は荷台の妻に声をかける。だが、妻からの返事は良いものではなかった。

「いいえ。今朝から眠ったままです」

「ジュネスは、エルフとの交流があるって聞くから、それに賭けるしかないな……」

男は再び馬に鞭を入れた。


 三日前、男が馬を休ませていた時、一人の青年が倒れているのを見つけた。深い茂みの中だったので、街道からは見えなかっただろう。用を足しに行ったことは幸運だった。

 見慣れない服装をしたその青年は、初めのうちこそ意識があったが、今朝からは目を覚ます時間が短くなってきた。食事と水は何とか摂れているが、明らかに衰弱していっている。


――父さん、母さん。

――ここはどこですか? 帰りたい。


 ぼんやりとした様子で、ただそれだけを呟く青年を、見捨てられなかった。だが、薬剤師をしている男が診ても、症状がまるでわからなかった。


 この青年を見つけた辺りで、男女の二人組とすれ違った。はっきりではないが、女性の方の耳がとがっているように見えた。やはり、この辺りにはエルフがいる。もしかしたら、何かわかるかもしれない。


「おーい。無理させて悪いが、お前さんの脚だけが頼りだ。頑張ってくれ」

 そういうと、男は馬の尻をやさしくなでた。

 妻は、眠ったままの青年を不安そうに見つめていた。

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