↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/47

第45話 再戦


 アップは10分か。

 10点式か。面白いこと考えるよな。頭、胴、足、腕のポイントを足すと10点だから10点式か。

 勝てるかな。

 

 「凪人くん、どう? 準備は?」


 すももちゃんが、準備運動をしている俺の顔をのぞいてきた。

 

 「あ、もう時間か」


 俺は急いで、荷物を持ち上げようとした。 


 「もうちょっとだけ時間あるよ」

 

 「せっかくだから、コツを教えてあげようと思って。真くんは何回もやってるから不公平でしょ」

 

 すももちゃんは、刀を握っていた。


 「コツ?」

 

 「コツっていうか定石かな? 凪人くん、このルールはカウンターが強いって言われているよ」

 

 「だから、真くんは多分、攻め2割、守り8割ぐらいで来ると思うの。凪人くん、そこを突いてもいいし、凪人くんも防御に徹してもいい。後、結構腕を狙う人もいるかな。今回みたいな15点マッチだったら、ラッキーで胴体入ればいいし、確実に一点を取っていく人も多いね。腕を固くするのって難しいからさ」

 

 「そうなんだ。俺勝てるかな?」

 

 「どうだろ。勝てるチャンスはあるよ。だって前の大会でも引き分けだったもん。凪人くんその時より強くなったでしょ」

 

 「ほら、行こ!」

 

 「それもそうだね。やってみるよ」

 

 そうやって、すももちゃんに付いていき、訓練場の近くの試合場へと向かった。

 その道中。

 

 「あ、葛城さん。こんにちは」

 

 葛城九童(かつらぎくどう)さん。白いひげを長くはやしたおじいさん。この人は協会上層部の一人だ。佳紬由さん曰く、案外改革派に近いらしい。

 

 

 「おお、こんにちは。木場もいるのか。なんで学校に?」

 

 「はは、ちょっと用があって」

 

 「今から、凪人くんと真くんが10点式行うの。葛城さんも見に来る?」 

 

 「ちょっと、すもも」

 

 「はっは。わしは仕事があるから、見たいのも山々だが遠慮しておくよ。頑張ってな」

 

 「はい、ありがとうございます。」

 

      ***

 少年少女が二人駆けて行った。

 

 「元気でいいのう」

 

 葛城九童の中にある記憶が思い浮かぶ。

 

 『なあ、俺と闘えよ。なんで、闘わない。決めようぜ、なあ今日どっちが正しいか』

 

 『もう、そんな歳じゃないだろ俺達。もう学生じゃないんだ。気に食わないなら殺しに来いよ。俺は殺されても、おかしくない人間だから』

 

 「おい、葛城何してる。会議に行くぞ」


 吾妻(あづま)の一言で現実に引き戻された。

 

 「ああ、すまないな。あの二人を見ていたら随分と遠い昔のことを思い出してな」

 

 「ああ、佳紬由のところの二人か。珍しいな」

 

     ***

 

 「あ、凪人くん準備はいい? 早速始めようか」

 

 俺と真は試合場の真ん中に立っていた。

 

 「じゃあ、できる限りこのリングから出ないようにね」

 

 「出たらどうなるの?」

 

 「んまあ、10秒も出てたらマイナス2ポイントにしようかな。自分から出た場合ね。これは防戦にならないようにのルールだから、あまり気にしないで」


 「よしじゃあ、始めるよ」

 

 すももちゃんが、審判の体制をとる。

 ふう、真はこの試合場に来てからずっと落ち着いてる。

 波導のよどみもなく、落ち着いている。

 流れもきれいだ。きれいすぎる。

 

 「はじめっ!!」

 

 「じゃあ遠慮なしにね」

 

 真の身体が開始と同時に目の前から消えた。

 あの武道大会の時と同じように。

 真の右腕が俺の顔面に向かってくる。

 右腕と左腕を交差して防御する。

 

 「くっ」

 

 ドカッ!


 「真くん、2点!」

 

 え、なんで。

 

 「2点? なんで」

 

 「凪人くん、右腕と左腕から血出てるよ」

 

 本当だ。

 右手を上にして防御したのに、左手まで傷が。

 波導が間に合わなかった。

 

 「凪人くん、防御甘いよ。前は防いでなかったっけ?」

 

 「さあ、どうだったけな」

 

 まだ2点。あと13点あるんだ。

 てか、真のやつめっちゃ突っ込んできてるな。

 それでも攻め手を忘れるな。

 俺は真より弱いんだ。

 徐々に右腕と左腕が再生していく。

 確実に前より綺麗に早く治っていく。

 次は俺から行くぞ。 


 思いっきり足に波導を溜めて、真の元へ駆け、突っ込む。

 地面が弾ける。

 右腕に、波導を込める。

 真のことだ、波導を見てわかってるだろ。

 防御が大切なこのルール。

 真の目の前でもう一度足に波導を溜め、踏み切る。

 身体が浮いた。

 ジャンプするとは思わないだろう。

 これなら。

 

 ドカンッ!

 

 食らった。

  

 「バレバレだよ。凪人くん」


 まじかよ。真、研ぎ澄まされてる。

 真の右腕に波導が込められた。

 次の瞬間俺の視界は歪み、天井を見上げていた。

 

 「真くん、3点」 

 

 まじか、鼻血まで出てきたよ。

 なんで、ここまで差がついたのか?

 いや元から差はあった。

 あの時は少しノっていただけ、それだけ。

 

 ドサ

  

 すぐに立ち上がった。

 すると目の前には誰もいなかった。

 どこに行ったんだよ。

 

 「沈みゆく鉄拳(メテオッド・パワー)」

 

 上から波導が近づいてきている。

 なんだ、この波導の量は。なんなんだ。

 屋根が突き破られた。

 真が右腕に波導を溜めながら、落ちてきた。

 

 バゴンッ!

 

 ダメだ、防御が間に合わない。

 

 ドゴオオオオオン!!!

 

 「真くん、8点追加。今、13点」

 

 「この技は武道大会の凪人くんから発想した技だよ、落ちる力を加える。あの時、僕の右腕を千切った一撃を、僕の技として吸収した。まだまだ、弱点はいっぱいだけどね」

 

 くそ、真は俺をぼこぼこにしたいからこの戦いに誘ったんじゃない。

 真の期待に応えろ。

 このまま終われるかよ。

 

 構えろ、息を整えろ。

 

 ドゴーンッ!!

 

 は? 痛い。なんだ。

 上から? 気弾が。

 

 「凪人くん、僕の勝ちだ」

 

 「3点。16点で真くんの勝ち」

 

 負けた……。なんで、一点も取れなかった。

 

 「凪人くん、お疲れ。大丈夫? 真くんはやっぱり強かったね」

 

 すももちゃんが、タオルを渡しながら、慰めてくれる。いや慰めてるわけじゃないか。

 

 「勝ちたかったな。もっとやれると思ってた」

 

 「凪人くん、ありがとう戦ってくれて」

 

 「いや、俺のほうこそありがとうな。それに手加減なしでありがとな」

 

 「誘ったんだからハンパはできないよ」

 

 「そうだよな。やっぱあんときはたまたまだったのかな」

 

 「まあ、波導は魂の源。上振れも下振れもあるよ。今日たまたま、凪人くんが不調で僕が好調だっただけだよ」

 

 「そっか。良かったよ、真とまだまだ差があって。今度は強くなるから、またやろうな」

 

 「うん、今度も僕が勝つよ」

 

 「じゃあ、すももちゃん帰るとき連絡して。おれあっちでふらついてくるよ」


 しばらく一人で歩いた。途方もなく、波導協会の周りを。

 

 ウッ……。


 クソッ、なんだよ涙があふれてきた。なんで、悔しいのか。ただの模擬戦なのに。

 俺が初めて本気になれたものだからか。

 俺に役割をくれたのが波導だ。

 それでも俺は負けた。本気でやったのに。

 でも、俺はなんで戦っているんだ?

 もう静香に会えたんだ。

 もう戦う必要ないじゃないか。

 もう普通の生活に戻れる……だろ。


 『凪人くん、波導はこう使うんだよ』

 

 すももちゃんのさわやかな横顔。


 『これは、あんたが勝った証や。正真正銘、あんたの勝利。……だから、謝んな』

 

 ベッドに横たわっている杞憂。

 

 『当たり前だ! 導魔は人間を殺すんだぞ。』

 

 武道会場の上で叫んでいる真。

 

 『今日から、ここがあなたの家よ』

 

 『痛みのない修行と、痛みのある修行じゃ、成長スピードが段違いなのよ』


 『私からしたら、手のかかる大きな息子が一人増えたみたいで、ドタバタな4か月だったわよ』

 

 そして、この数か月。

 俺の一番の理解者であった、佳紬由さん。

 

 『じゃあ、妹にあったら。ごめんねって言っておいて』

 

 『なんで、お姉ちゃんを助けてくれなかったの?』

 

 『我が主人様よ、最後のチャンスじゃ。お前様も人を食え。一度食えば、何も抵抗がなくなる』


 『お前様がわしを選んだことをわしは後悔させてやる。所詮人間と導魔の隔たりじゃぞ』

 

 そうか、もう戻れないよな。

 この4ヶ月俺の人生は変わったんだよ。

 シオンのためにも戦わないといけないんだ。

 俺はもう、戻れない……か。

 今日も空はきれいだな。

 

 「凪人くーん! 佳紬由さん来たよ。帰るよー!」

 

 そこには、佳紬由さんとすももちゃんが手を振りながら立っていた。

 

 「うん! ちょっと待って! じゃあ帰ろうか!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。