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悪役令息だったらしい俺の行く末  作者: ひよっと丸


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第2話 かつての恋人たちとのひと時

「なんでこんなところにあんたがいるのよ」


 城下にある高級ブティックをふらついていたジュリアーノに叫ぶように声をかけてきたのはファビオラだった。多分五番目の恋人だった。学園を卒業した頃だった気がする。


「なんでって?買い物?」


 ジュリアーノはおどけた感じで返事をしたが、ファビオラはその態度も許せなかった。


「あんたねえ、どれだけ恨まれてるかわかってんの?」


 胸倉を掴みそうな勢いでジュリアーノに迫るファビオラだが、それを制する細い腕が現れた。


「およしなさい。怪我でもさせたらお家取り潰しになるわよ」


 割って入ってきたのは十二番目恋人だったと思うクラウディアだ。数を忘れてしまったけれど、つい最近まで付き合っていたから言うなれば最後の恋人だ。


「なによ。邪魔しないで」


 クラウディアの手を振りほどこうとするファビオラだが、どうにもならないままジュリアーノから引き離されてしまった。ブティックの店員は顔をひきつらせたまま微動だにしない。


「なにに怒っているのか知らないけれど、とにかくジュリアーノにけがをさせちゃだめよ」

「なににって、全部に決まってんでしょ。恋人になって捨てられたのよ。おかげで私、行き遅れになったんだから、許せるわけないじゃない。おまけに侯爵にならないのよこの男。冗談じゃないわよ」

「って、なんでそれを知っているのに肝心なことを知らないわけ?」

「肝心なこと?」

「そうよ、ジュリアーノが侯爵にならないわけよ」

「女癖が悪いからで「残念でした、違いまーす」しょ」



 ファビオラがヒステリックに叫ぶと同時にジュリアーノが茶々をいれた。怒りに満ち溢れた目でジュリアーノをみるファビオラの肩を、クラウディアがしっかりと掴み、身動きが取れないようにした。


「よく聞いて、ジュリアーノはね、()()()()殿()()()()()になるのよ」


 耳元ではっきりとした口調で言われても、ファビオラはすぐに理解ができなかった。確かに、次期国王は第二王子殿下で、それに伴いいくつかの貴族が世代交代をするという。そんな話の中、次期オルシーニ侯爵がジュリアーノではなく弟のレオナルドだと知ったのだ。それを聞いてファビオラの中の怒りのマグマが噴出したのだ。侯爵にならない男に遊ばれたのだ。これでは単なる傷物だ。


「……今、なん、て?」


 聞こえた聞こえた、はっきり聞こえた。だがすぐにその意味を理解できるほどファビオラの頭は冷静ではなかった。赤く熱いマグマがどろどろと思考を溶かしていたのだ。それが冷え固まるのには時間がかかる。


「ねえ、ジュリアーノ。私は王族に嫁ぐために分かれた最後の恋人ってことでいいかしら?」


 思考が停止いているファビオラの前で、クラウディアがなにかとんでもないことを口にしていた。先ほどの言葉と今の言葉、そして笑顔で頷くジュリアーノ。ファビオラがようやく冷静になった時、二人はすでに椅子に座って優雅にお茶を飲んでいた。もちろん店員はジュリアーノに色々な生地を見せている。


「え?な、なんなの?私を無視しないでよっ」


 ファビオラは慌てて空いている椅子に腰を下ろした。そこにはちゃんとファビオラの分のカップがあった。


「こちらの生地は薄手ですが肌が透けたりは致しません。メイシスの日差しで肌が焼かれるようなことはないでしょう」

「いいね、この生地で、うーーん、七枚?八枚?」

「汗ばむからお着換えの回数もかさむかと」

「じゃあ、切りよく十二枚だね」

「賜りました」


 店員はほくほく顔でオーダーを受けていく。すでにサイズは測っていたのか、ズボンの生地も色違いでいくつか注文をしていた。


「メイシスに行ってからも服は作れるけどさ、あそこって交易も盛んだからね。でも、嫁入り衣装は多いに越したことはないと思うんだよね。どう思う?」

「いいと思うわ。メイシスは異国の文化も取り入れているから、だからこそ王都の流行の服は必要だと思うわ」


 楽しそうにジュリアーノとクラウディアが話をしている。嫁入り衣装なんて言っているけれど、嫁入り、をするのは……


「ジュリアーノ、なのよね?」

「「は?」」


 突然言葉を発したファビオラに驚いた二人が顔を向けてきた。


「嫁入り、するの……ジュリアーノ、なのよね?メイシス領を治めるの、王族……第一王子殿下の伴侶に、なる」

「そうだよ」

「だから私は最後の恋人」


 きゃっきゃっしながらクラウディアがそんなことを言うから、またファビオラのなかのマグマ熱を発しそうになったが、お茶を一口飲んで冷静さを取り戻した。自分とクラウディアの間に何人恋人がいただろう?最後の恋人何て肩書は、本当に最後だから使える必殺技のようなものだ。ファビオラはぼんやりと二人のやり取りを眺めたのだった。


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