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18 異変

「無理しないでね。いつでも遊びに来てゆっくりしていっていいからね」


そんな怜輔のお母さんの声を背に怜輔の家を出る。

目蓋はまだ少し湿っている。

レイフ君は私の宣言を聞いていただろうか。


レイフ君との会話を終えた後、私はしばらく考え込んだ。

本当に怜輔じゃないのかと。

何回も言われた言葉、口調を反芻した。

どうにもレイフ君の態度が引っかかったのだ。


まるで何かを隠しているような。


後から考えるとそんな風に受け取れたのだ。

最初は嘘はついてないと思って自分の勘違いに落ち込んだが、その後の会話になんとなく違和感を覚えた。

どうにも怜輔の状況を知りたかったというような印象だったと思いなおしたのだ。

私の思い込みじゃないと良いが、やはり確証は無い。

ただ、怜輔じゃないとするとレイフ君は一体何なのだろうか?

私には怜輔そのものにしか見えない。

でも、怜輔がベッドで目を覚ましていないのも事実。

レイフ君を知れば知るほど違和感が増していく。

違和感と言えばAIのレイフ君だってそうだ。


彼はあまりにも人間らしい。


そして直接話して見てわかったが、レイフ君そのものと何も変わらない。

いやレイフ君そのものなんじゃないだろうか?

だとするとまた疑問が湧いてくる。

レイフ君とは一体何者なのか。

もしかしたらAIなのかもしれない。

あれだけ作業量が求められるタスクを同時進行で瞬時に片付けているのはそれでなければ説明がつかない。

レイフ君に似せたAIが配られたというよりレイフ君そのものがAIだったという方がよっぽど分かりやすいのだ。


だが、それがなぜ怜輔とあそこまで似るのか。

分からない。

分からないが、何か知っているということは確かそうだ。


「桜井様、お待たせいたしました」


待機所から名前を呼ばれ、病室へと向かう。

帰る前に怜輔のところに寄ることにしたのだ。

この前行ったばかりだが、今回はまた事情が違う。


「怜輔、今日怜輔の家に行ってきたよ。お母さんに怜輔を絶対に元通りにして見せるって宣言してきた」


少し照れ臭い。

この独り言もレイフ君に聞かれていることだろう。


「私は諦めないよ。今はどうやったら治せるかも分からないけど、手掛かりはあると思う」


レイフ君は怜輔を治せる手がかりを握っているのだろう。

残念ながら今のところそれらはすべて憶測でしかないが、案外外れていないんじゃないかと思う。

だって私の勘は良く当たるから。


レイフ君に見せるようにして怜輔の写真を撮り、病院を後にする。

帰り道、人気の無いところでスマホを取り出すと、察したのかレイフ君から話しかけてきた。


「詩音、実は僕は──」

「桜井さん、探したよ」


遮る声に顔を上げる。そこには今一番会いたくない顔がにやけていた。


「茂木先輩……」

「婚約者のところに行ってたのかな? どうだった?」

「………………」


どうして怜輔のところに行ったって知っているの……。

まさか後をつけられていた?


「その反応だと全然ダメそうだね。どうだい? 彼をあきらめて僕と付き合うっていうのは──」


パンッ──

私の無言を勘違いして戯けたことを言い出した彼の頬に思わず手が出てしまう。

本当に人の感情を逆なでするのがうまい人だ。


「馬鹿なことをいうのも大概にしてください! 何があってもあなたと付き合うなんてことはあり得ません」


なぜ付き合えるなんて思ったのだろう。少しでも話を聞いていたのが悪かったのだろうか。

叩かれたことにショックを受けたのか、俯く目の前の人物に侮蔑の眼差しを向ける。

しかし、上げた顔はまだ笑みを浮かべていた。


「まあいいさ、どうせ君は僕のものになる」

「は……? それはどういう──」

「詩音!」


理解しがたい言葉に首を傾げたとき、レイフ君の叫ぶ声がスマホから響いた。

何かあるのかとスマホを覗いた瞬間、口にハンカチを押し付けられ、私は意識を失った。

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