悪夢の始まり
それは、一つの呼び鈴から始まった。
出なければよかった。
そうしたら、あんなことにならなかったのに。
ずっとこのまま、何も変わらなかったのに・・・
◆
「はーい、どちら様ですか?」
玄関のドアを開けると、兄と同じ制服を着た女の子がたっていた。
「・・・桜」
「え、えっと・・・」
(どうしよう、お兄ちゃんのお友達かな・・・?)
「あ、あの、私・・・」
(・・・双子なんですけど・・・どうしよう・・・)
「え、えっと・・・っ!?」
その女の子は強引に入ってきて、靴を脱ぐと私の腕を思いっきり掴んで、そのまま部屋に引きずりこんだ。
「ちょっ・・・!?」
リビングのソファに無理やり座らされる。
全然状況が分からないまま、一つ分かったことは、この女の子は私を兄だと勘違いしていること。
私と兄が入れ替わっているのを知っているのは瑞希だけ。
どうしたらいいのか何も分からず、頭が真っ白になってきた。
次にとるべき正しい行動が分からない。
「・・・き」
「・・・え・・・?」
少し聞き取りにくかったけど、たしかに『好き』と聞こえた。
その後のことはよく覚えていない。
私は抱かれた。
服を脱がされ、キスをされ、そして意識を失った。
目を覚ますと、兄がいた。
◆
「瑞稀、ありがと」
「どういたしまして。これ桜ちゃんにあげて?」
そう言って、くれたのはウサギのストラップだった。
「可愛いでしょ?」
「ありがと。あいつウサギすきだから喜ぶよ」
「また、遊びに行ってもいい?」
「瑞稀ならいつでも大歓迎だよ」
瑞稀と別れたあと、俺は近くのスーパーによってプリンを買った。
その途中、知っている人とすれ違ったような気がした。