蒼穹
※こちらは、一般人による完全オリジナルシリーズです。
文脈がおかしい部分もあるかと思います。ご了承いただける方のみ、この世界をお楽しみください。
それでは、行こう、観測者。
蒼穹の空を、ともに見届けて欲しい。
空は、際限なく人をあたたかく包み込む。
空は、時に刃を向ける敵になる。
空は、時に心を映し出す鏡となる。
空は、青い。…筈なんだ。
「はぁ…はぁ…!」
激しく降る雨。ザアア…と叩き付けるように降りしきる。バシャバシャと水溜まりなんて関係なく、走る。
「はぁ!…はぁ!…はぁっ!」
口から鉄の味がする。そろそろ、限界が近い。あの地獄から抜け出して、どれ程経ったのだろうか。
「はやく…離れないと…ぅぐ!」
ザザ…ザ…ノイズのような音が頭の中に響く。
-本当に鈍いよね君-
「ぁあぁあ…!」
-ここにいさせて貰えるだけでも感謝して欲しいんだけど-
「ああぁあぁあああぁあ!!!」
-それでも君、"人核者"なんだよね?-
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
空が、歪む。鈍く、禍々しい空に。
憎い人間達が、ずっとずっと、頭の中にいるんだ。
やめてくれ。もうやめてくれ。
助けて…助けて…誰か…
?「おー、こりゃ派手にノイズ化が進んでんな。」
声がした。荒んだ廃墟の上。
フードを被った、謎の青年。顔は見えず、赤いグローブを付けた手から、フォン…とホログラムウィンドウが開く。
そして、もう片方の手が、頭の少し上の部分に触れ、ピッー…と通信を開始する。
-通信開始
?「ノエ、聞こえるか。ノイズ化進行中の人核者を発見した。旧・蒼穹市街地跡、座標は266,ー417,0。」
「あ"あ"ぁあ"…ぅぐぁあぁあああ…」
ノエ『了解しました。指揮官と共に、早急に合流します。リトさん、無理はしないでくださいね。』
リト「はいよ。」-通信終了。
彼の姿は、禍々しく変わっていた。その姿はまるで、化け物だった。
「あ"あ"あ"…!俺はぁ…!!!」
-君、本当に、人核者?-
-有用性の何一つも見せられない-
-生まれながらの敗北者-
-人類に仇なすだけの…化け物だ-
「ぁぁぁあああ"あ"あ"!!!!!」
暗い。暗い。黒い雨が全身を覆う。
捻じ曲がって暗く歪んだ空が、恐ろしくて堪らない。
水溜まりに映る、己の姿。醜い、化け物。頭に響く、罵詈雑言。
-嗚呼…ほら、この通り、醜い種族-
-人核者-
-…人間から居場所を奪う不届きな奴ら-
-害悪、化け物だ…!-
「あぁぁ…!!!ぐぅう…ゔぁぁぁあ"あ"あ"!!!」
リト「…声すらも届かなくなっちまってる。急がねぇと。」
ガァン!!!
化け物が青年に目掛けて攻撃を仕掛ける。しかし、そこに青年の姿はない。
リト「…たく、少しは大人しくしてろ。ノイズになりたくなけりゃ、な。もうすぐうちの指揮官が…って、おわっ!」
ダン!ダン!ダン!ドガガガ!!!
ギリギリで次の攻撃を避ける。
「ぐぅぅ…!!!あ"あ"ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
リト「おいおい…これじゃ間に合わねぇぞ。…仕方ねぇな。」
腰から取り出し、クルクル…と器用に回す。
ガチャン!コンパクトに折り畳まれたそれが、短剣へと変貌し、構えられる。
リト「──行動、開始。」
ダンッ!と1歩を踏み出す。その速さはまるで、人間を逸脱した速さ。
刹那、化け物の目の前に瞬時に現れ、次の瞬間、
ドガガガガガガ…ダンッ!ガシャアアアン!!
四方八方から素早い攻撃、その後正面から蹴り出され、化け物の身体はそのまま市街地跡の廃墟へ飛ばされた。
リト「…少しは落ち着け。俺はお前を、助けに来てんだよ。」
綺麗なフォームの蹴りの構えを直り、砂埃で汚れた部分をぽんぽんと払う。
ドォン…!
化け物が吹き飛ばされた位置、音がした瞬間、リトに向けて素早い速度で襲いかかった。
リトは回避の行動に取る。が、このままだと間に合わない。
?「バフエリア、展開!」
シュゥウ…!
という音と共に、青い空間が辺りを覆った。
スローモーションのように、辺り一面が瞬時にその空間に包まれる。
リトはそのまま、ダッ!と力強く蹴り上げた。
異常なスピード。回避不可能な状況の中、攻撃を避けたのだ。
リト「…へっ、遅せぇよ、指揮官様。」
宙に浮いた体を器用に捻り、着地する。
その目線の先には、白銀に光り、青く影が落ちる髪。黒く光の無い瞳には、青いリング状の模様が浮かび上がっている。グレーとスカイブルーが織り成すサイバーコートに身を包む姿。
指揮官「あぁ、すまない。リト、まだ動けるか?」
リト「当然だろ?」
余裕のある声に、指揮官はくすっと笑った。
指揮官「頼りにしている。…来るぞ!」
ガァン!!
リトに向けられる攻撃。先程よりも身軽に避ける。
リト「うおお、マジでバフエリアって動きやすいのなんのぉ!」
ヒュンヒュンと飛び回り、攻撃を軽々と避ける。
ノエ「…ノイズ進行度、フェーズ3。早急に止めなければ、彼を助ける事は難しいですよ。指揮官。」
冷静に指揮官に状況を伝える声。
緑色のオーバーオールに身を包み、綺麗な緑髪を綺麗に結わえた少年。
指揮官「まずは動きを止めなければ。ノエ、フラッシュバン展開。視界を奪った後、帯電射撃で鈍化させてくれ。」
ノエ「…了解しました。行きますよ。」
2、3機のドローンがリトの元へ向かう。
ノエ「フラッシュバン、装填完了。いつでも行けますよ。」
指揮官「リト、カウント以内にその場を離れろ!」
リト「はいよー!」
指揮官「3.2.1、ハイヤ!」
カチ、とボタンを押した途端、ドローンからフラッシュバンが投下された。
キィィィィィン!!!!その場が白く光る。
「ぐ…ぁあああああああああ!!!!」
化け物は目を抑えて呻いていた。
ノエ「効いてます。次、帯電射撃に移行。…装填完了。開始します。」
そう言った途端、配置されたドローンから射撃口が出現、と射撃が開始された。
ダダダダ!───バリバリバリィ!!
着弾するや否や、電撃が走る。
「がぁぁぁあああああ!!!!!」
周りの水溜まりが更に電撃を活性化させ、全身に走る。
ーー -君、本当に人核者?-
-有用性の何一つも見せられない-
そんな事、自分が一番知っている。
人間の暮らす場所に人核者として産まれ、人並み外れた能力の何一つも持っていない。
ただ、核の暴走を恐れて過ごすだけ。
この世界の人間は、受け入れてくれる者とそうでない者の差は、あまりにも激しかった。
-醜い人核者が。その汚ぇ面を見せんな!-
一方的に罵倒を浴びせる者。
-人核者の癖に、人間以下の能力なんだ。なんの為に産まれてきたの?君-
人核者としての能力を引き出せない事を罵り、存在意義を否定する者。
そんな人達ばかりだった。しかし、
-君が人核者だから、なんて、そんなの関係ないよ-
そうして受け入れてくれる人間が居た。
その一言で、心が暖かくて、救われた。
どんなに辛く罵られても、大丈夫。
生きていける。そんな気にさせてくれた。
ある日…突然現れた、見た事のない、抜け殻のような見た目をした化け物。
たった1人の友人は俺を庇い、それに襲われ、意識不明の重体。
止まらない流血。
必死に抑えながら、助けを呼んだ。声を聞いてやって来たのは、人間。
助かったと思った。
-…お前だろ、人核者…!お前がやったんだろう!-
…は?
-そうだろう!何か言ったらどうだ!その返り血で汚れた身体で!どう言い訳する!-
違う…違う!俺じゃないんだ…!突然、化け物が現れて、!
-やはり化け物だったか…!醜い種族が!!-
違う!俺じゃないんだって!!
-こんな事になるなら、早めに始末するべきだったんだ!-
え…?なにを、言って…?
-人核者め!その罪を償え!-
殺せ。殺せ。
そんな言葉が周りからこだまする。
そこで俺は察したんだ。
ここは、この世界は、───地獄だと。
だから逃げ出した。
すべてを捨て去って。
たった一人の、友人でさえも。
そんな、くだらなくて、情けない、化け物の話。ーー
ぐらりと身体が傾き、その場にバタン…と倒れる。
ノエ「…沈静化を確認。」
リト「目標、拘束完了だ。」
指揮官「行動、終了。皆、よくやった。」
雨はやみ、薄暗い雲の間から光が差し始める。
そうして、今回の任務は幕を閉じた。
『作戦任務内容:旧・蒼穹市街地跡にて、高異常の核反応データを検知。ノイズ化進行中の人核者の可能性大。身柄を拘束し、救助にあたる。』
救助隊が到着した。暴走核を沈静化させる薬を投与後、担架にて運ばれて行った。
ノエ「…ギリギリでしたね。あと少し到着が遅れていたら、彼はノイズ化して、助からなかった。」
リト「雨のせいで視界も悪かったからな。捜索に手間取っちまった。すまねぇ。」
指揮官「何はともあれ、間に合って良かった。蒼穹の空も、また1層、美しい青を取り戻すだろう。」
そうして上を見上げる。
その空は、先程の暗雲で暗かった空とはうってかわり、青々とした空へと変わっていた。
指揮官「…さぁ、帰投しよう。」
そうして、彼は歩き出した。
設置された移動用ポータルを抜けると、先程の市街地跡から、巨大な建造物の前に移動する。ここは、蒼穹国家直属、蒼穹軍本拠地。ここで彼らは、作戦に関する業務の他、戦闘訓練、指揮や支援の教育などを行っている。
警備兵士「指揮官、作戦任務、お疲れ様でした。」
キリッと敬礼をする兵士。
指揮官「ああ。君も警備、お疲れ様。」
にこっと微笑んでみせる。
兵士は少し、顔が緩んだが、すぐに表情を戻す。
警備兵士「戦翼、リトさんと、支援部隊、ノエさんも、お疲れ様でした。」
リト「おう。ありがとさん、警備、頑張ってな。」
目元は見えないが、にかっと歯を見せて笑ってみせる。犬歯がきらん、と光っているように見えた。
ノエ「お疲れ様です。」
ぺこりと一礼して歩いていった。
ぷしゅー…と音がして、軍基地の扉が開く。
リト「はー着いたぁ。今日も五体満足!核も安定してんな!」
ノエ「リトの馬鹿さもご健在ですね。」
リト「はぁ!?なんで俺ディスられんの!?」
そんな言い争いをしているいつもの光景。
(…仲良いなぁ。)
指揮官は暖かな目で眺めていた。
ーーピッー…ピッー…無機質な機械音。
「……ぐ…ぅ……?」
ゆっくりと目を開ける。呼吸器が宛てがわれ、腕には数本の管。……ここは?
プシュー…と音がする。機械的なドアの開く音。そこに入ってきたのは、銀髪の男だった。
指揮官「…具合はどうだろうか。」
優しい声で語りかけてくる。
誰だ…?
指揮官「…あぁ、自己紹介が遅れたね。僕は、蒼穹軍、Command(指揮部門)所属の指揮官だ。そしてここは、軍の医療施設。君は地上の市街地跡でノイズ化を引き起こして、僕たちに救助されてきたんだ。」
…そう…きゅう…ぐん?…蒼穹ってたしか…、人核者だけが…集まる…国…か?
人核国家、蒼穹。それは、人核者が集うとされていた国。過去に栄えていたとされる市街地跡のみがその存在を語っているのみで、既になくなっていると考えられてきた。
「そう…きゅうは…滅亡…して…ない、のか…?」
指揮官「ああ、そうだ。僕たち蒼穹は、まだ滅亡していない。ただ、国の所在を隠したんだ。」
現在、蒼穹が所在している場所。そこは、
「…雲より…上空…!?」
指揮官「そうだ。そして今も移動し続けて、所在を曖昧にしている。我々の持つ技術全てを持って、ね。」
もちろん、ただ空に浮いているだけではない。そんなデカいものが空にぷかぷか浮いていたら隠れるどころかモロ目立ちだ。
しかし、この蒼穹の技術面はかなり発達している。
蒼穹と地上を行き来出来るポータル。
手をかざせばどこでも展開出来るホログラムウィンドウ。そして…
指揮官「国全体を視覚から遮断する技術。」
それは、そこに国があったとしても、視覚的情報を遮断する事で、そこに何も無いように透過するのだ。
「そんな事が…出来るのか…!?」
目を丸くして驚く声。
指揮官「…元気になったら、見て回るといい。」
ふっと笑って答えた。
指揮官「もう少し休むといい。回復を祈るよ。」
ぷしゅー…
ドアが開き、指揮官が去っていった。
まるで夢を見ているかのような…そんな感覚。
存在しないとされていた国に、居る。
…どうなってんだよ。情報が頭をパンクさせる。ゆっくりと目を閉じた。




