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使徒と遊戯のラグナロク  作者: 愚者
一章 混沌とする福山

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6/15

一幕 諸所の正義 その弐

 時間が経つにつれ教室の熱気は冷めていき、放課後になる頃には話題に上がることは無かった。

 今朝の熱気が嘘だったかのように、皆はカバンを持って教室を後にする。教室にはやる気のない掃除当番と雑談を交わすだけの数名が残る。

 しかしながら遊蓮もそのようなもので、友―清十郎を待っている状態だった。

 ただ教室にいるというのも忍びなく、教室の掃除を少し手伝いながら清十郎を待った。かくいう清十郎も教室掃除である。

 そのため、二人で黒板掃除を行った。


「そーえば祭りに行くって言ってたけどさ、アブナイ祭りじゃないよね?」

「ハハ、そう警戒すんな。お前をそんな所に連れて行くわけないだろ」


 遊蓮は清十郎を信用しているつもりでいるのだが、依然危険な目にあわされた事があったし、やっていることがやっていることなだけに危機感を覚えてしまうことがある。

 以前にも七回ほど誘われたことがあった。その殆どが楽し気な祭りだったのだが、そのうち一回は危ない事にも巻き込まれた。


 そんな危ない事に巻き込まれたのならまともな人は縁を切るのだろうが、遊蓮は彼との縁を切ることはしなかった。

 実際、彼といるのが楽しいし、彼が見せるモノは遊蓮にとっては非日常的なことばかりで「オモシロイ」と感じてしまっているからなのだろう。

 結局のところ、正反対に見える彼らは根本の所が同じなのだ。日常に変わった娯楽を欲しがるところが。

 だから遊蓮が彼の誘いを断ることはない。

 

「今日はケ〇タのジュースが一律100円祭りだぞ!!」


 ―うん、今日のは本当に安全そうだ。


 予想とは少し違った祭りだったから呆気にとられたのだが、安全そうだったから心をざわつかせるものが消えた。

 まぁだって、危険なことに合うかもしれないと思っていたら、ただ放課後に友達と買い食いするだけだ。


「まぁ、掃除も終わったし行くか」


 そう言われて振り返ると、後ろに下がっていた机は乱雑に等間隔で並べられていて、帰路に就く人もいた。

 遊蓮は「あぁ」と短く言うと、急いでカバンを背負う。

 窓の外からは運動部が練習をし始めたのだろうか、野太く青い声が響く。

 その声を背に、駐輪場へ自転車を取りに行った。

 遊蓮は黒いクロスバイク、清十郎は青いロードバイクをとって、門を自転車を押して出た所で清十郎に声がかけられた。


「やぁやぁ、待ってたよ。清十郎君」


 学校の校門で待っていたのは、スーツの上にベージュ色のコートを羽織った三十代くらいの男性だった。

 ぼさぼさと纏まりのない長髪と狐のように細い目、貼り付けたような不気味な笑みを浮かべていた。


「どうしたんっすか?朝のニュースの件っすか?」

「まぁ違うとは言い切れないけれど、今日は別件で来たよ」


 遊蓮は二人の会話などから、目の前の男が警察かヤクザだと判断した。何かやらかした時に来るのは、そのどちらだろうから。

 そして、この学校または近隣で何かがあったのだろうと、自分は関係ないと言わんばかりに話が終わるまで空を眺めておこうと、上を見上げた。

 空は青く透き通って、差し込む太陽の光が雲を照らしていた。

 その傍ら、男はにこやかな表情で馴れ馴れしく話を続けていた。


「この福山について色々知っている君に聞きたいことがあってね」

「へぇ、何かの事件すか?警察ってのも大変っすね」

 

 確かに清十郎にこの福山のことについて聞くのは良い事だろう。彼は街の情報を集めることを趣味としていて、情報の売買もしている。

 彼の情報は、噂好きの主婦や不良集団から警察やヤクザまで色々な層の人が買っている。

 情報は力とはよく言ったものだ。

 けれども力を持つということは、それだけ狙われる可能性も大きくなるということだ。

 けれど、どこも彼には何もしない。

 もし、死後自分たちの情報がばらまかれるようになっていたら?もし、巨大な暴力団が彼を愛用していたら?そう思うと、彼といい関係を続けることがこの福山で広島でうまくやる最善の策だ。

 男は正義の警察と自称しており、清十郎を悪と認識していないため手を出すことはない。しかし、もし目の前の男が清十郎を悪と認識したならば、男は先ほど述べたことは関係なく捕まえるだろう。


「まぁ、多少見逃してもらってるんで俺が答えられる限界までは教えるっすよ」

「あぁ、ありがとう。それじゃあまず聞きたいんだけどさ、君って神を信じる?」


 神。心なしか圧が込められていたその言葉に遊蓮の肩はビクンッと跳ねる。


 ―まさか、この男は《プレイヤー》か⁉


 《プレイヤー》に権能持ちということがバレてはまずい。願いをかなえる槍を探す者にとって、ライバルは少ない方がいい。狙う気がない奴も自分の権能について知られるのはデメリットでしかない。

 だから最悪の場合、殺されるとも遊蓮は考えていた。


「神ねぇ...俺は宇宙人の事をそう呼んでると思ってるっすよ」

「その考えはその考えで気になるけど...まぁ、俗にいう神と呼ばれる存在は信じてないってことでいいかい?」

「まぁ、そうっすね」


 急に神の話へと飛躍して、何の話かと清十郎は戸惑っていたが、案外すっきりと応えていた。

 その答えに「ふむ」と男は頷いて、雰囲気を緩める。


「権能や槍についてなんか聞いたら教えてくれ」

「権能?槍?何のことです?」


 その二つの単語を聞くと、いよいよ彼が《プレイヤー》なのだと感じさせる。

 遊蓮は動揺を隠しているつもりなのだが、冷や汗を垂らし、空を眺めていた目が男を睨みつけていた。心臓もバクバクと波打っていた。

 そんな遊蓮の心境も知らないように、男は気味の悪い笑顔を張り付けて言葉を続ける。


「君は気にしなくていい。あぁ、このことは他言無用でお願いするよ。命にかかわることだから」

「そんなやばい話持ちかけてこないでくださいよ...俺に情報を止めろってんなら、ね?」


 清十郎はニヤニヤとしながら男に向けて手を突き出した。

 男はポケットから財布を出して、その中から万札数枚を清十郎の掌に乗せる。

 ニタリと笑いながら目だけをギョロリと遊蓮へと向ける。


「君も黙っといてね。このお金で夕飯でも食べて帰るといいよ。じゃあね」


 ひらひらと手を振って、学校の隣にある展望台の方へと向かう。多分、そこに車を停めて来たのだろう。

 一瞬の出来事だったのだが、遊蓮の体感では一時間程度にも感じられた。

 冷や汗でシャツが濡れてヒンヤリと締め付け、未だに胸のドキドキは止まらない。


「変わった人だったろ?あの人」

「え、あ、うん」

「あの人は風間 宗一郎っていってさ、刑事なんだよ。けど、あんま関わらないほうがいいよ。あの人、頭が狂ってるから」


 拳を強く握りしめながら忌々しそう話す。彼の瞳の奥には禍々しい何かが蠢いていた。

 何かあの刑事とあったのだろうかと思ったのだが、聞いてはいけないことなのだろうと、遊はただ静かに清十郎を見つめていた。

 その視線に気づいたのか清十郎はパッと無理にでも表情を明るめて、遊蓮の方を向いて言葉をかける。


「じゃあ、ケ〇タ食いにくぞ!!」

「あぁ!」


 こうして猛スピードで坂を下った。

読んでいただきありがとうございます。

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