新たな出来事
遅くなってすみません。
また、ロゼリアに視点?というか三者視点に戻ります。
晴れた昼過ぎロゼリアは窓際で午後のティータイムを楽しんでいた。
王宮に出向いてから一週間が経った。
ロゼリアはあの日から毎日王宮に出向きシルベルトに会いに行っているが以前シルベルトの考えは変わらずロゼリアを拒絶していた。
本来なら王宮に出向いている時間だが今日は少し間をおいて出向いた方が良いと考えロゼリアは家にいることにした。
侍女に注がれた紅茶を堪能しながら読書をしていたロゼリアの耳に部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
ガチャ
「失礼いたします。読書中申し訳ございません。ロゼリアお嬢様」
「構いません。それよりどうかなさったのですか?」
「はい。それが第2王子様がお嬢様へお会いになりたいと仰りご訪問されました」
「まあ!シルベルト殿下が?」
「はい。今すぐ出てこいと仰っております」
執事がシルベルトの訪問を告げている中、部屋の外がざわつき始めた。
「殿下!?困ります。許可もなく淑女の部屋に立ち入るのはお止めください」
「うるさい!!邪魔だ!退けっ!!俺の言うことが聞けないのか!」
ドア越しにシルベルトの怒鳴り声が響いたと同時にドアが勢いよく開かれ、シルベルトとマリアンを含めたミアを除く生徒会のメンバー3名がロゼリアの部屋へ入ってきた。
「殿下。申し訳ございませんがたとえ婚約者の部屋だとしても淑女の部屋に許可もなく立ち入られては困ります」
「うるさい!!執事は黙っていろ。それにこの女とは婚約者ではない!!」
苦言を定す執事の言葉に怒鳴り、ロゼリアの前までづかづかと歩いていった。
ロゼリアはそのようなシルベルトの態度を気にすることなく優雅な態度でシルベルトに話しかけた。
「まあ、殿下ごきげんよう。急に来られたので驚きましたわ。ですが私とても嬉しいですわ。殿下がわざわざ私に会うために訪れてくるなんて」
「誰がお前のために訪れるものかっ!それよりミアをどうした!?」
「ミア?それはあの平民の小娘のことですか?」
「平民の小娘とはミアに失礼ではないか!ミアは俺の恋人だぞ!!」
「シル。今はそれどころじゃないんだよ。本題に入らなきゃ」
「っ!すまない、マリアン。この女があまりに頭にくることを言うものだから忘れてしまっていた。」
「お話のところ申し訳ございませんが殿下は私に用があっていらしたのではないのですか?」
「ああ、そうだ。お前、ミアをどこへやった!?」
「・・・おっしゃっている意味がよく分からないのですが」
「とぼけるな!お前がミアを誘拐したんだろ!」
「詳しくは存じ上げませんが私はそのようなことはしていません」
「嘘も大概にしろ!ロゼリア・ハーヴェスト!!」
「嘘も何もしていないのですから嘘のつきようがありませんわ。それに誰かに誘拐されたのではなく、ミアさん本人が自分で出ていかれたのではないのですか?」
「黙れ!ミアが自分から出ていく訳がないだろう!ミアと俺は愛し合っているんだぞ!!」
「そうだよ。でたらめなこと言わないでよ」
「それにドアの前や部屋の周辺に配置していた兵たちも倒されていたんだ。とてもじゃないけどミアちゃんには無理じゃないかな」
「今罪を認めないと後でより苦しむことになるぞ」
ミアが自身で出ていくという考えを伝えたところシルベルト、ヒューリ、マリアン、カインの順にその言を否定した。
「まあ、確かにロゼリア嬢がやったという確証もないけどね。シル取り合えず今日は引き換えそう」
「なっ!?ふざけるなっ!マリアン。この女がやったに決まっている」
「ロゼリア嬢がやったかやってないかはミアちゃんを見つけてからでも分かることだ。それよりもミアちゃんを探す方が大切だろう?」
「・・・ああ、そうだな」
「よし、じゃあさっそくミアちゃんを探さないとね。そういうことだからロゼリア嬢急にお邪魔してしまって申し訳なかった。帰らせてもらうよ」
「マリアン様そんなにお気になさらなくても大丈夫ですわ。お帰りということでしたら今執事を呼びますわ。誰か」
「お呼びでしょうか、お嬢様。殿下方がお帰りになられます」
「畏まりました」
「それでは私もお見送りさせていただきます」
「お前の見送りなど必要ない。ロゼリア・ハーヴェスト、必ずお前が行ったという証拠を掴んでやる」
マリアンの言により一先ずはシルベルト達は帰ることとなった。
しかしシルベルト達からの疑いの目は晴れることなくロゼリアに「覚悟していろ」と吐き捨て去っていった。
シルベルトが去り再び部屋に一人となったロゼリアは手を軽く叩いた。すると一人の執事表れた。
その胸元には金色に光るバッチが着いていた。
「御用でしょうか、お嬢様」
「先程殿下がミア・ダノンが殿下のもとから行方をくらましたとのことを聞きましたが何か情報はありますか?」
「はい。ミア・ダノンは確かに王宮にいたようです。しかし、それは王自らの指示という訳ではなくシルベルト殿下の単独での少数で行われていたことのようです。また、ミア・ダノンはその後家へ帰った様子はなかったです。また、兵士数名が倒れていたということから何者かによって部屋から出たと考えられます。ミア・ダノンが隔離されていた部屋を調べたところ何者かによって連れ去られる際に暴れた形跡がないことからミア・ダノン本人が了承し部屋を出たもしくは抵抗する暇もなく、連れ去られたのどちらかかと考えられます。因みに今回の件はマリアン・ブリューゲンにより内々に処理されているようです」
「そうですか。誰が彼女を連れ去ったのかは少し気掛かりですわね。そちらの方はどうですか?」
「はい。そちらの方も主の命により一応調査中です」
「分かりました。しかし、彼女がいない今殿下との障害は消えたと思っていいのかしらね」
「はい。そのことですが主から言伝てを預かっております」
「何ですか?」
「『今が好機。殿下をたぶらかし、お前の地位を盤石なものにしろ』との仰せです。また、殿下だけではなく、外堀から埋めろとのことも仰せつかっております」
「それは国王陛下やお妃様などのことでしょうか?」
「殿下の周囲全体のことだそうです」
「分かりました。お祖父様にもそう伝えて下さい」
「畏まりました。では私はこれで」
「ええ、もう下がって結構です」
ミア・ダノンの失踪という新たな出来事により、歯車はまた動き出す。
復讐を望むもの、大切な人を取り戻そうとするもの、様々な思惑を持った人々がそれぞれに動き出し始めた中ロゼリアは依然として輝きのない瞳のまま、己に課せられた使命を真っ当すべく動き出す。
今回はいつもより更新が遅れてすみません。
近々もう1話ぐらいを更新する予定です(汗)。
お読みいただきありがとうございます。