妹ならよかったのに!
彼女が蒸発。散々ヒモをしていたツケが遂に回って来た。最後まで俺に愚痴も吐かずに笑顔で謝って消えやがった。正直悪いと思っている。
「お兄さん?朝ですよー」
彼女の声そっくりな『弟』っていう置き土産は考えて無かったな__
「本当にゴメン!私が居なくなるとこの子の行き場無くって!」
「じゃあ一緒に行けばいいだろ!!」
「世間も知らない男の子にそんな酷いこと出来ないよ!!」
「男!?コイツ男なの!?」
指を指した先には、色んなアクセサリーを付けた小さい少女の様な……男が居た。
「…!」
「ちょっと…可愛がりすぎたかも」
「にしても格好がもう女装だろ…」
俗に言う地雷系の様なファッション。まるでワンピースの様に長い服。そんな格好で姉の後ろに隠れた。
「でもちゃんと下履いてるよほら」
ワンピースをたくし上げ中身を見せつけようとする姉。慌てて抑える弟に、目を逸らす俺。
「あと一応成人済みだから一緒にお酒飲めるよ!お酒好きでしょ!」
「20超えてんの!?」
泣きそうな顔で頷く弟。
「時間無いからとりあえずお願い!帰ってきたらまた謝るから!!」
「ちょっと……!」
バタバタと大量の荷物を持って行ってしまうコイツの姉。取り残された弟と気まずい時間が流れる。
「……とりあえず入るか?」
泣きながら頷く弟。
「…猫みたいに起こすな」
「ねこですよろしくお願いします」
昨日の事から一転。泣いてた少女はただのガキとなった。
「お前そういう服しか持ってねぇの?」
猫耳フードのパジャマ。完全に女性用だ。
「お姉さんがメンズ買うのに抵抗あったみたいで…」
「気持ちはわかる」
俺も逆の事は出来ない。長年付き合っていた彼女だ、そういう性格なのも何となく分かってる。
「いえーい!お兄さんの彼女だニャン!」
「二度と言うなよ」
「ごめんニャさい……」
そして持っている知識はネットから仕入れた物のみ。会話が…むずい。
「成り行きでこうなったけど あまり外には出るなよ」
「慣れてます!やったぜ」
「何なら中にも居ない方が良い」
「どゆこと?」
「このアパートな…めっちゃ治安悪いんだ」
金欠の為の格安物件。まともな住人は数少ない。こんな朝でも耳を澄ませば、人とは思えない奇声が聴こえる。
「ボク生きていけるかなぁ……」
「預かった以上は守る」
「カッコいい…!」
「だからせめて声のトーン落とせない?」
ずっと女の様な声で喋られていると何か落ち着かない。
「もっと信頼度を上げたら 安心してトーンが落ちるかもです」
「ゲームかよ… 上げたら落ちるって何……」
ソイツは笑顔で説明してくれた。その純粋な笑顔にイタズラがしたくて、近くの窓に誘う。勢いよくカーテンを開けると
「あ……えっ…?」
「……!」
恰幅の良い、メガネの角刈り青年がこちらを覗いていた。堂々と。




