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私が騎士団の司令官ってなんですか!? ~聖女じゃなかった私は得意の料理で騎士たちの心を掴んだら食堂の聖女様と呼ばれていたのです~  作者: 堂道廻
第四章【悪夢】

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67 超極秘任務

「まあな、普通の感覚なら多少の損害が出たところで不問とするだろう。生徒を救ったのだからな。ましてや事件を起こしたのは学園の教師だ。責任は学園長にあると言っても過言ではない」


「そうですよ! もっと酷いことになっていたかもしれないのに!」


 思わず力を入れて肯定しようとする私に、団長は微苦笑した。


「残念ながら守銭奴で有名なあの学園長には、そういう理屈は通用しない。それはそれ、これはこれ。壊したのなら金を払えと、すごい剣幕で怒鳴り込んできた」


 一国の騎士団長を怒鳴りつけるなんて、その学園長って一体何者なの? 


「騎士団としても、まったく非がないわけではないから突っぱねることもできず、仮に裁判になれば負けるだろう」


「まさか……わ、私が借金を負うんですか?」


 背筋がひやりとなり、私は口角を引きつらせる。


「そこまで私は鬼畜ではないさ。これは組織としての問題だ」


 その一言に、私はほっと胸を撫で下ろした。


「だが、騎士団の予算も潤沢ではない。学園の修理に回す余裕はない。そこで交換条件を提示して合意を得た」


 予算かぁ。剣と魔法のファンタジー世界なのに、なんとも世知辛い。思い返せば王宮食堂で働いていたときも、毎回予算とにらめっこだったっけ……。なんだかすごく昔のことのように感じる。


「どんな交換条件を出したんですか?」


「うむ、今回呼び出したのは、その件についてだ」


 クリス団長は一口紅茶を飲み、カップを置く。微かに空気がピリついていく。


「立てこもり事件の犯人、ノイック=エイケンズを尋問したところ、強力な魔素兵器『ナイトメア』がシュヴァルニ魔導学園に持ち込まれたことをほのめかしたのだ」


「ナイトメア……ですか?」と私はオウム返しに聞き返す。


「ナイトメアは、大昔に滅びたライノス帝国が開発したとされる古代の魔素兵器だ。だが、その実態は謎に包まれていて、はっきりしたことは分かっていない」


 彼女は足を組んだ。口調こそ穏やかだが、その鋭い視線が事態の深刻さを物語っている。


「一説によれば、強力な催眠作用を持つ伝染性の魔術と言われている。敵国ペルギルス王国がライノス遺跡を調査していたという情報もあり、もし奴らがナイトメアを入手したとなれば、我が国に持ち込まれた可能性は十分考えられる」


 ノイックは自分がベガのメンバーだと語っていた。クスリのせいじゃなくて本当だったってこと? それとも洗脳されているとか? 


「ただのハッタリかもしれないが、騎士団としては無視できない」


「それが使われたら、どうなるんですか?」


「キミの友人リリアを傀儡にした魔術よりも強力で、かつ伝染するナイトメアが権力者の子息令嬢が通う学園に蔓延したらどうなると思う?」


「えっと……。感染した生徒たちから親御さんに伝染して、みんながスパイになっちゃうとか……ですか?」


「その通りだ。さらに感染が拡大すれば、我が国は敵国の思うままだ」


「やばいですね……」


「やばいだろう?」


 軽く肩をすくめてから団長は続けた。


「そこでナイトメアの捜索と回収を条件に、損害賠償を取り下げるという取引をした」


「なるほど……」


 うなずきかけて――ふと、嫌な予感が頭をよぎる。


「え、ちょっと待ってください。まさか私が呼び出された理由って……」


 続くセリフを打ち消すように、クリス団長が私を見据えた。


「戦術騎士隊アルタイルに超極秘任務を命じる。シュヴァルニ魔導学園に教師として潜入し、ナイトメアを見つけ出し回収せよ」


「えええッ!? 潜入!? 教師!? 私がですか!? 超極秘って!」


 思わず立ち上がりかける私に、「今回も期待しているぞ」と団長は穏やかに微笑んだ。しかし彼女の目は笑っていない。本題に入る前に手放しに私を褒めたのはこのためだったのだ。


「そもそもどうやって探せばいいんですか!?」


「それは追って指示する」


「探してナイトメアがなかったらどうするんですか!?」


「無論、ノイックの虚言であることも考慮している。これからフェルナルドによる本格的なごうも――」


「え?」


 団長は言葉を切って「んんっ!」と咳払いをした。


「……尋問をしてもらうことになっている」


 いま「ごうもん」って言いかけたよね? 聞き間違いじゃない気がするけど。


「ナイトメアが持ち込まれたという話が虚言であると確定した時点で任務は解除する」


「はあ……」


 不安と納得が半々の返事になる。


「ということで潜入役はキミとエドガー、ノエルにクラウディオだ。身分証はすでに用意してある。赴任は週明け、それまでに必要な物があれば装備部に申請しておけ」と彼女は淡々と告げた。


 うう……。団長命令に逆らうわけにはいかないし、もう水面下で色々と進んでいるようだし。もう行くしかない! それにしても私が学園の教師に?? 一体どうなっちゃうの!?


「話は以上だ。他になにか質問はあるか?」


「えーと……、こんなこと言っていいのかどうか」


 恐縮しながら私はそう言いかける。


「構わない。言いたまえ」


「エドガーから至急の用と聞いていたので、すぐに対応するような案件なのかとばかり……。でも任務が週明けからなら、わざわざ休日出勤する必要はなかったんじゃないかなー、なんて思ったりして、アハハハ」


 乾いた笑いを漏らすと、クリス団長の眉がぴくりと動いた。 


「そうだったのか? それはおかしい。私はエドガーに『休みが明けたら私の元に来るように、千鳥に会ったら伝えてくれ』と言ったのだが……」


「えー……」


 じゃあエドガーが嘘をついたってこと? なんでわざわざ〝至急〟なんて言ったのかしら……。

 

 つまりそれって、どういうこと?? 




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