↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が騎士団の司令官ってなんですか!? ~聖女じゃなかった私は得意の料理で騎士たちの心を掴んだら食堂の聖女様と呼ばれていたのです~  作者: 堂道廻
第四章【悪夢】後編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/112

107 彼女について

「た、助かった……」


 ドアチェーンを握る手が震えている。荒れた息を吐く私の隣ではディアナも肩で息をしていた。


「ディアナ……、大丈夫?」


 胸に手を当て、彼女は小さく頷く。


「あいつら、本当に入って来られないのよね?」


 私は玄関の外へ耳を澄ませて、足元にいるくま太に確認した。 


『その小窓から確認してみるッスよ』


 そう言われて、玄関の新聞受けから恐る恐る外を覗き込むと、門扉の外で怪異たちがウロウロしている姿が見えた。こちらへ近づこうとしているのに見えない壁に阻まれている。フェルさんの言う通り、結界のおかげで家の敷地に入って来られないようだ。


 ようやく張り詰めていた息を吐き出して、ほっと胸を撫で下ろす。力が抜けた足どりで、階段を昇ってなんとか自分の部屋に戻ったところで、とうとう腰が抜けた。


「もう……無理……」とベッドに倒れ込む。


 ドアの前でディアナは黙って立っている。俯いたまま私の方を見ようとしない。私はそんな彼女を見つめ、それから床に立っているフェルナンドへ目を向けた。


『はじめまして。自分はフェルナンド、アルゼリオン王国の魔導士ッス』


 フェルナンドが手を伸ばすと、ディアナは動くぬいぐるみを警戒するように見つめている。


「は、はじめまして……」


 無理もない。こんなへんてこりんな存在、向こうの世界でも見たことないのだから。


『単刀直入に聞くッスけど、この世界から脱出するにはどうすればいいッスか?』


「知りません……」


 ディアナは小さく首を振って答えた。


「私には分かりません。この世界は、生まれたら後は消えるだけだから……」

『消えるとはどういう意味ッスか?』

「言葉どおりです……。消えて、最初からなかったことになります」

『あの黒い怪異については、本当に心当たりはないッスか?』


「はい……」


 少し間を置いて、彼女は答えた。


「でも……たまに夢で見たことはあるんです」

「夢?」

「はい。あの黒い人たちが、街の人たちを襲う夢を……。見た気がします」


 夢……。あの黒い怪異がナイトメアの一部であることは間違いない。ディアナの夢と黒い怪異が関係しているのだとしたら、もしかしてディアナが夢を見ているとき、寝ているときに黒い怪異が出現する?


「そういえば……。なっちん、高校生になってからナルコレプシーになったって言ってたよね」


「うん……。たぶんそうなんじゃないかって……お医者さんに言われた」


 ナルコレプシー、通称『居眠り病』と呼ばれる、突然眠気に襲われてしまう病だ。私もなっちんから聞く前は、そんな病気があることすら知らなかった。

 病気だと知ってからは、隣の席で寝そうになる彼女をシャーペンで突っついて起こすようにしていた。


「それと黒い怪異が関係しているんじゃないかな? スポーツ祭に遅れてきたときも車で送ってもらったんだよね? そのとき、車の中で寝たりした?」


「そういえば……」

「やっぱり!」

「でも……、でもそれじゃあ今、あの黒い人たちは一体……」


 ディアナが窓の外に視線を向けた。窓の外ではあいつらがウロウロしているはずだ。


「あ……。そうか……」


『おそらく、ナイトメアの防御機構みたいなものッスね。この世界を脅かす存在を検知して、宿主とは別個に動き出したのかもしれないッス』


「ディアナ、教えて」


 私はベッドから起き上がり、彼女の前に移動する。


「怪異になった人たちは、助けられるの?」

「……この世界に入ったら誰も助けられません」

「そんな……。黒い怪異にこの世界の人たちが呑み込まれたら、こっちの世界も……現実の私たちも消えちゃうの?」


「たぶん……そうなんだと思います」


 彼女の返事には迷いがある。


「この世界が消滅すると、ナイトメアの結界に包まれていた地域や人たちの存在が消えます……」

『ふーむ……』


 フェルナンドが腕を組む。


『矛盾しているッスね』

「矛盾?」


『だって、何も知らないって言っていたクセに、「この世界は生まれて消えるだけ」とか、「結界に包まれた地域や人の存在が消える」とか……なんでそんなことを知っているんスか?』


「それはっ……」


 ディアナの肩が揺れた。


「それは……見てきたから……」


 顔を上げた彼女の瞳には、深い悲しみが滲んでいた。


「何度も……このナイトメアによって消え去った人たちのことを……」

『キミは以前も、ナイトメアとして国を消滅させたことがあるんスか?』


「……」


 ディアナは首を横に振った。


「私は今回が初めて」


 そして、瞳に涙を浮かべた彼女は両手を胸の前で握り締める。


「今回が初めてで……これが最後……」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。